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まずは新しい年の始まり -4-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 1月2日の午前中は、霞沙羅が参加する新年イベントにモデルの先輩2人を連れて行くために、待ち合わせ場所にした札幌の小さな公園に集まった。転移魔法はあんまり人がいないところがいい。


「伽里奈たんて空間転移魔法まで出来るとか驚き」

「結構な魔術師なのね」

「色々霞沙羅さんに教えて貰ったりしてますから」


 女神であるエリアスは空間転移魔法に巻き込めないので、タイミングをあわせて貰うとして、伽里奈は先輩2人を連れて、横浜はみなとみらい地区にある大神殿の近くに転移した。


「うわー、一瞬で横浜」


 神殿と言うよりもちょっと小さめなコンベンションセンターのような建物の周りには、高倍率の抽選をくぐり抜けた一般参加者達が列を成していた。


 今はもう開場時間になっているので、ゆっくりと列は進んでいる。でもエリアス達は列に並ぶ必要は無い。


「ゲストの入り口はあっちみたいですねー。じゃあイベントが終わったら連絡を下さいね」


 伽里奈は中華街まで香辛料や調味料を買いに行ってしまった。


 霞沙羅がこのイベントに参加し始めたのは厄災戦が終わってから。元々戦時中も国民に対してピアノやオルガンを弾いていたので、戦いを終わらせた英雄として、軍のアイドルとして、幻想獣との戦いが終わった事を皆で喜ぶために参加させられたのが始まり。


 当時はまだ動画配信は無かったけれど、テレビで放送された番組を見て、この先輩2人は目が釘付けになったものだ。


 ずっと札幌住まいで横浜は遠いし、抽選も倍率が高いわで、ここに来る事なんか夢のまた夢だった。それがまさか霞沙羅から席を貰えるとは思ってもみなかった。しかもタレントや芸術家などの文化人も来る招待客の座席なので、一般席よりもシートが良いときた。


 裏口から会場というか礼拝堂に入り、指定されたゲスト席に三人は座った。


「す、すごいわね」


 礼拝堂というよりもまるでコンサート会場。数百人入れるその礼拝堂には続々と一般参加者で席が埋まっていく。


 来賓席と招待席にはどこかで見たような政治家や大会社の社長、各国の駐在大使、有名タレントの姿がある。


 しがない地方のモデル事務所の所属タレントの3人は、すぐ近くに座った有名な映画監督に挨拶をされて恐縮してしまった。


 吾妻社長の事務所の人間ですと説明すると何度か仕事をした仲だそうで、驚かれた。札幌の片隅で事務所を開いたあの社長が、業界では結構影響力のある人だったのだと、改めて解った。


 業界人同士の挨拶を済ませて、これから行われるのは新年を祝う、若干長めの僧正様による有り難いお説教というかスピーチ。その後に6人の演奏。霞沙羅はその最後。


 自分が一番上手いわけじゃないのにと、いつもぼやいているけれど、一番の拍手を貰うのはやっぱり霞沙羅という状況。


 別に下手なのをあと5人集めているわけではない。寺院でも演奏を本職としている神官もいるけれど、みんなその道のプロ。でも霞沙羅の役回りとしてはいつもトリ。


 そして時間となり、礼拝堂の照明が薄暗くなり、ステージに登場した僧正様がスポットライトに照らされる。


 僧正様は62歳の男性。


 ちなみに、空地家の大僧正は寺院庁として日本にある各宗派のまとめ役の地位。この僧正様はこの宗派のトップである。


 またこの人は、功績はあまり知られていないけれど、厄災戦では多くの神官を率いて関東を転々と戦った猛者だ。それもあって霞沙羅との共同戦線を組んだこともある結構すごい人。


 これは宗教イベント。それでも僧正様は解っている人。スピーチは15分程度で終わり、続いて僧正様の紹介で、6人の演者がステージに上がってきた。


 男女それぞれ3人ずつの6人。


 霞沙羅はあまり飾りの無いスッキリとしたな赤いドレスを着て現れた。いつものがさつな雰囲気と違って、落ち着き払った大人な態度を貫いている。やっぱりこういう大勢の観客がいる場所にも慣れているのが解る。


 こんな何百人もいるだけでなく、テレビも動画も配信されている国内でも屈指の大イベントで堂々としている霞沙羅からエリアス達は目が離せなかった。


「やっぱり大佐はすごいわ」


 6人の紹介が終わって、一人目以外は全員ステージから下がっていった。


 1人目と2人目はピアノ、3人目はバイオリン、4人目から神官が出てきてパイプオルガンの演奏。勿論全員が拍手喝采されるほど上手い。


 そして最後に霞沙羅が出てきて、神々に喜びを伝える曲を弾き始めた。


「いつも見てるけど、大佐ってずっと目を閉じてるのよね」

「何であれで間違えないんだろ」


 三段にもなる鍵盤だけで無く、足下の鍵盤もあるのに、一つも音を間違えない。

 先輩二人は知らないけれどもっとすごいのが、数分で楽譜を覚えるところだろう。さすがに一回目は数カ所間違えるけれど、その後何回か練習すれば後はもう完璧に演奏出来る。


 目を閉じている間は、その曲に合うようなビジョンを瞼の下に展開して、気持ちを作っているとか言われた。


 勿論演奏も相変わらず上手い。喜びが伝わってくる。


 10分程の演奏の後、トリらしい拍手喝采が起きた。


 最後にもう一度全員が集まって、それぞれが今年の抱負を言ってイベントは終わった。


「初めて生で見た。やっぱ新城大佐すごいわー」


 会場の外に出て、伽里奈が来るのを待っている間、3人はイベントの感想を言い合っていた。


 さすが日本の誇る軍人アイドル。そろそろ4年くらい近くに住んでいるエリアスは最近まで霞沙羅の芸能業務ぶりを生で見ることは無かったから、とても良かった。


「いい、2月のショーは必ず成功させましょう」


 そう、自分達も札幌開催ではあるけれど大きな仕事がある。今日感じた興奮を、迫る大きな仕事に活かさなければならない。


「えー、何か気合い入っちゃってるけど」


 そこに買い物を終えた伽里奈がやって来た。


「伽里奈たんがすごい魔術師で良かったー」

「チケットをくれた新城大佐にも感謝だけど、普通は札幌からこんな所まで来られないものね」


 東京に一瞬で来られる手段があるから、霞沙羅がチケットを回してくれた訳だ。


 先輩2人はすぐ近くで霞沙羅の仕事を見ることが出来てとても満足しているし、エリアスもなんだかやる気な表情になっている。


「年明けから良かったですね。ボクはファッションショーには何もお手伝い出来ないですけど、頑張って下さいね」


 満足した先輩二人を連れて、四人は札幌に帰っていった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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