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大晦日の過ごし方 -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「いやー、何だこれは」


 先日のバングル事件で回収した魔工具の解析のために、今日も霞沙羅は横浜の軍研究所にやって来ている。


 色々と、伽里奈(アリシア)が捕まえた数名と、実験場にまで乗り込んできた数名分も合わせて、持っていた細々した物も回収したので、全部あの水瀬カナタとかいう人物の制作物では無いけれど、該当の魔工具は、同業者といってもいい事をしている霞沙羅から見ても、相変わらず素晴らしい出来だった。


 今は伽里奈(アリシア)が奇跡的に研究に間に合うくらいまで維持してくれたシールを見ている。


 実物に刻まれた魔術基盤はもうとっくに消えてしまったけれど、それまでに解析に必要なデータは確保出来た。


 残念ながら魔術基盤が消えるギミック部分はダメだったけれど、これがどういう効果を出す物か理解するのが今の優先事項だ。


 基本の術式は解った。相変わらずヤマノワタイの術式だ。


 しかしこの術式にくっついている別の術式が今の所解らない。


 基本の術式はこの付属の術式の通りに、人の精神に影響を及ぼすようだ。でもその中身が何を意味しているのか解らない。


「まあ最初から全部解っては面白くはないしな」


 同じような術式は函館所属の少尉が持って来た刀と、大夫前の横浜で起きた辻斬り騒動で回収した刀にあった。


 人を操る、という魔術は当然のように霞沙羅も習得しているけれど、これは難易度が高い。


 それこそこれは水瀬カナタが独自に開発した術式だろう。そうなるとこれまでとは別の話。まさかこんなシールみたいな小さな魔工具が複雑な作りになっているとは思っていなかった。


 王者の錫杖の方が、作られた時代も古いこともあって難易度は低かった。それだけに子孫に技術が伝わって代々で発展しているが解る。


「純凪さんにでも相談して、向こうの魔術レポートでも漁ってみるか」


 水瀬カナタは十代の頃に結構な数の魔術的な論文を出していたというし、その中にはなにかヒントになるような論文があるかもしれない。


 そもそもヤマノワタイの技術になると霞沙羅と吉祥院と伽里奈(アリシア)の範囲内でしか研究が出来ない。これまでは良かったが、今回は毛色が違うので詰まってしまった。


「仕方ねえな」


 ヤマノワタイの年明けはまだ少し先だから、純凪夫婦はまだまだ普通に仕事をしているだろう。


 2人の再就職先はそれぞれ得意の分野での指導役だというから、色々と資料に、特に魔術師のアリサさんは色々な魔法書に触ることも出来るだろうから、解るかもしれない。


 一旦やどりぎ館に帰って、早めに繋ぎを付けておくとしよう。向こうも予定があるだろうから、いつ会えるかも解らない。


 霞沙羅はやどりぎ館に帰る前に隣の部屋で腕輪の研究をしている吉祥院に声をかけてからと考えた。


「おう、そっちはどうだ?」

「こっちで足りなかった部分の術式を、アシルステラから持ってこれたから、もうすぐ解決しそうでござるよ」


 日本の方はアシルステラの術式、アシルステラのは地球の術式だったので、それぞれを補完しあえば、基本部分は同じであるとわかり、お互いに取り込む対象が違うので、その辺の調整をしてしまえば、魔術基盤自体は完成する。


 そうなれば対策を考えていける。


 分離するのは無理でも、ある意味変身としての道具であるのであれば、妨害することも可能になる。


 いやはや、ちょっと遠回りしてしまった。


「そろそろワタシもアリシア君に魔術の調整方法を学ぶべきでありんすな」

「お前の魔術は威力が大きいからな。ただ倒すことを考えれば問題無いが、道具の回収やら何か別の目的が混ざってくると問題有りだな」


 かといって霞沙羅も、以前に大学でちょっと失敗しているから、伽里奈から調整方法を学び始めた所だ。


「こっちは純凪さんに相談するよ。シールの基本部分は解ったが、付属の術式がわからん」

「同じ世界の専門家に聞いた方が良さそうでありんすな」

「ちゅうことで、一旦小樽に帰るぜ。まずはアポを入れてくる」

「おっと、電話でやんすな」


 吉祥院の携帯に電話が着信した。


 この人物は何かあれば吉祥院の方に連絡をしてくるのだが、何か意味があるのだろうかと勘ぐってしまう。


桜音(おういん)の野郎、お前に気があるのか?」

「それは無いでありましょうよ。知人としては良くても、ワタシもあれは無いざんす」

「私の所には間違っても個人スマホに直接電話は来ないぞ」

「霞沙羅が怖いのでござそうろう」


 いやいや、怖いという点では家の影響力でこいつだろう。この前も空地(そらち)家のヘマに対して吉祥院家から結構厳しめの意見を吐いている。


 もしくはお互いに大きな家の一員という近い立場にあるから、姉のような頼りがいがあると考えているのか。


 確かに、厄災戦時に無理矢理軍の作戦に引っ張り回しては、ことあるごとに「バカ息子」呼ばわりしていた霞沙羅は怖い相手だろう。


それはともかく、吉祥院が電話に出たので、霞沙羅はやどりぎ館に転移した。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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