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その後のアシルステラでは -4-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 冒険者ギルドから出ると騎士団に戻るイリーナと別れて、アリシアと霞沙羅はギランドルに移動した。


 事件が解決したので、鎮魂の儀についての打ち合わせがしたいというのと、エルナークから回収した魔工具を見せて貰えることになったので、霞沙羅が休みの今日、ザクスン訪問のスケジュールを入れて貰っていた。


「辛い麻婆豆腐が食べたくなってきたな。どっかで食った記憶のある四川風のやたら辛いエビチリもいい」

「どこかの献立を変えましょう」


 町の食堂から辛い匂いがして来たので、2人とも感覚が変わってしまった。でも今日はもうエスカロップの準備をしてきたので変更出来ない。


「アリシア殿、カサラ殿、お待ちしておりました」


大神殿に着くと、まずは大聖堂ではなく、会議室に案内された。出迎えてくれた若い女性の神官は、カサラの姿を見るなり、ちょっと頬を赤らめていたけれど、どういう事だろうか。


 いつもの旧戦闘服がいけないのだろうか。格好いいし。


 とにかく、会議室には教皇以下、10名ほどの教団幹部と、王国からはアーガス第一王子とプリシラ王女が来ていた。


「正式に演奏者の依頼を受けて頂きまして、教団を代表して御礼を申し上げます」


 教皇が霞沙羅に頭を下げたので、みんなちょっとビックリしてしまった。


 異世界人という事もある。全く関係の無い人間に来て貰うという事への、最高の礼といえる。


「先日は王都サイアンで奇跡のような演奏を聴かせてくれたとか」


 この部屋にいる人間であの現象を実際に体験したのはアーガスとプリシラだけ。それでも当日サイアンにいて、神殿で直接目にした神官から話は聞いている。


「あ、ああ、まあ昔自分の世界でも何回かやってますからね。あの魔法が成立するには条件はあるんですが」


 ギャバン教内では、あんな方法で神聖魔法を使えるとは思ってもいなかった。


 確かに、音楽が人の心に与える影響には気が付いているけれど、それが神から奇跡の力を借りるきっかけになるとは他の教団を含めて誰も知らない話だ。


「一度その曲を聴いてみたいものですね」


 あの時戦った人間の側には確かにギャバンが寄り添ってくれたという現象。避難した市民達でさえ恐怖をはねのけて、騎士達の勝利を祈ったというそんな奇跡は聞いたことがない。


 音が町全体に広がったのは女神の力ではあるけれど、それは内緒。


「教皇様、まずは鎮魂の儀の話をしましょう」

「そうでしたね。モートレルの神官に訊いたのですが、鎮魂の曲を間違うことなく弾けるという話ですが」

「そうですね、その辺りは大丈夫かと思います」


 前回は一度弾いて,その時はちょっと間違えたけれど、シンセサイザーではあるけれど家で何度か練習はしたので、もう間違えない程度にはなっている。


「家の、オルガン…、はまあ鍵盤が少ないので、本番用のオルガンの状態を確かめたいところではありますが」


 霞沙羅の言葉に、教皇は幹部の数名にその申し出はどうかと訊くと、いいのではないでしょうか、という話になった。


 こちらの大神殿でもオルガン演奏はイベント的なモノなので、普段はあまり聴くことは出来ない。巡礼者にとってもいいだろうし、オルガンはいつでも稼働させることが出来る。


「それでは、お願い出来ますでしょうか」


 霞沙羅の申し出を了承して、皆で礼拝堂に向かって移動する事になった。


 大聖堂に移動中に、プリシラはアリシアの所に近寄ってきた。


「あの方はすごい技術をお持ちなんですね」

「自分の世界だけでなくて他の世界の聖法器の修理とか製作とかも出来る人なので、ボクとエリアスがこっちの事情とか神聖魔法を教えて、それで今回、こっちの曲じゃないんだけどギャバン神に祈りの言葉を届けられる事を思いついたんだよ」

「ちょっと口が悪い感じですけど」

「軍人ですからね。組織では結構上の方にいるんだよ」

「それでお姉様、モートレルの神官から訊いたのですが、ギャバン教の食事を作って頂いているとか」

「そうですね、赤い見た目の、辛い麺料理です。事件も落ち着いたし、プリシラ王女も頑張ったみたいなので、そろそろ教えに来たいと思います」

「カレーですか?」

「スープカレーという、オリエンス教向けのカレーとはちょっと違う料理ですけどね」

「それでもいいです。早く作りましょう」

「今日は時間的にさすがに無理なので、後でメモを渡すので、材料を用意しておいて貰えます?」

「はい」


 この子は王女だというのに、いつまでも直してくれない「お姉様」呼ばわりはともかく、良い子だなと思う。事件も終わって、他国民であっても料理くらい渡す理由も出来たので、もういいかと思う。


「ところでアリシア君、後で見て貰いたいものが、この大神殿の裏手でちょっと気になる異変が見つかったのだが」


 アーガス第一王子が口を開いた。


「ボクですか?」

「ここの裏手が山になっているのは知っていると思うが、少し前からそこのある岩場から赤みがかかった水が出るようになったのだ」

「そうなんですか? ボクで解りますかね?」

「色々な者にも調べさせたのだが…、異世界の知識があるキミならどうかと思うのだ」

「ま、まあ解らなかったらすみませんけど」


 ならという事で、オルガンの件が終わったら見に行くことになった。


 そんなに距離も離れていないから時間的にも大丈夫だろう。


 大聖堂について、霞沙羅は早速オルガンの状態を確かめるために、適当な曲を弾き始めた。鍵盤の数やサイズはセネルムントのオルガンとほぼ同じ。


「鎮魂の曲って、今弾く曲なのかなあ」


と思ったら、別の神官が楽譜を持って来た。さすがに一つの戦いが終わったばかりのこの国で、一般の礼拝希望者がいる中でそれはない。


 それでも霞沙羅はまた十分程度で楽譜を暗記して、あっさりとギャバン教の曲を一つ弾いてしまって、教皇達もその見事な演奏に拍手を送っていた。


 これなら任せられると。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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