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霞沙羅の講義 -4-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 最初の虚をつかれたビームで町に被害は出たけれど、それ以降は吉祥院がしっかりとガードをしたので、被害は抑えられた。


 接近戦を仕掛けた騎士達も、ガーディアンの殴打を喰らったりはしたけれど、死者はでなかった。そして怪我人は神官が治療中だ。


「どなたかは知らないが、助かりました」


 現場指揮を執っていた騎士団の隊長も、終わってみれば味方になってくれた霞沙羅と吉祥院に御礼を言った。


「今日は我ら魔法学院の客人として来て貰った、遠い異国の魔術師じゃ」

「大賢者殿のお知り合いでしたか。大変失礼しました」

「しかし、ダンジョンを探索するというのも危険があるんだな」

「大規模であったり、それなりに名のある魔術師の残したダンジョンは、大なり小なり何かトラブルがあるものじゃ。それでギルド経由で冒険者達を雇っておったのだが…、これは現場を見に行かねばならんな」

「私が行ってきますよ。確認してきましょう」


 出てきていた賢者の一人が早速ダンジョンへ向かって転移していった。


「大賢者殿、ガーディアンのパーツを貰えたりすると、嬉しかったりしちゃうでござる」

「お、おおそうか、異世界の魔術師でも気になるところがあるか?」

「知らない技術というのは、文明がどうであれ、学者の心をくすぐるものでありんす」

「ボクもちょっと欲しいですねー」


 霞沙羅の手で、5体分のガーディアンが研究するには丁度いい具合にバラバラにされているけれど、学院としてもそんなにはいらない。


「私の興味は装甲と内部フレームとビーム発射部分だな」

「ボクは命令中枢ですかねー」

「ワタシはセンサーと飛行機能部分と動力部で候」

「見事にバラバラだな。今日の礼でもある。該当部分を持って行って研究するといい。ただ、複製でいいのでレポートは提出して貰いたい。我らも同じモノを研究することにはなるが、其方達の視点でどう見ているのが興味があるからのう」

「そのくらいのお返しはするだっちゃ」

「さすがに残骸を日本に持って行く気はないが、どこか保管出来るところは…、あるな」


 アリシアの研究室がモートレルにあるので、そこに保管しておくことにした。あそこならやどりぎ館から行きやすい。


「ほ、本校に置いておかないカ? 研究するなら資料も多いゾ」


 そこでルビィから異議が上がった。


「ボクの部屋が無いから置くとこないし、ルーちゃんの部屋は余裕もないし」

「そ、それはそうだガ…」


 ああしまったー、とルビィは思う。さすがアリシアだけあってちゃんと見ている。


「何だお前、私ら3人だけでやるとでも思ってるのか? 当然、お前の知恵も借りないと進まないのは目に見えてるだろ」

「置いておくだけだよ。やる時は声をかけるよ」

「そ、そうカ」


 なんだか仲間外れにされそうだったので、ルビィはホッと胸をなで下ろした。この3人が揃ったら何でも出来てしまいそうだから。


「ルーちゃんも見たい所があったら、早く奪った方がいいよ」

「そうか、そうだナ」

「よし、じゃあ大賢者殿、有り難く貰っていくでありんす」


4人はそれぞれ興味のある部位を残骸の中から引っこ抜くと、それぞれの場所に持って帰った。


  * * *


「じゃあヒーちゃん、小型にした探知機を3つ持ってきたよ」


 昨日は図らずも性能テストが出来たのでもう大丈夫だ。重力波を増幅して立体物の形状をスキャンする機能はしばらく伏せておく。


 その機能については、昨日のあの後やどりぎ館に帰ってから霞沙羅と吉祥院に追求されてしまった。


 残念ながら地球向けには作られていないので、二人の方でコンバートして貰うしかないけれど、すぐにやってのけるだろう。


「もふれきたったのね」


 ついでに持ってきたホットケーキを頬張りながら、ヒルダは随分と見た目が洗練されて持ち運びがし易くなった感知器に感心している。


上から見た面積はそこまで変わっていないけれど、探知範囲が狭くなったのと技術力が上がったのもあって、薄くなって軽くなった。


「説明書もつけておくからね」


 重力波の件は追加説明書だけど。


「ええ、助かるわ」


今回は元冒険者仲間の知り合いとはいえ、パスカール領の領主からの正式な発注なので、商品として代金は貰った。


「これで楽になるわ」


 勿論、通常のパトロールで持ち歩けば警戒の足しになるし、領地内の魔物トラブルにも持って行けるし、野外演習にも持っていっていい。


「ウチの領地ばっかり設備が豊富になっちゃって。王様に悪いわね」

「地方領地の領主に直接話が出来るからだとも思うけど。王宮内だと、学院案件以外の用事でボクが直接王様に会うのははばかられるし、大臣さんとか他の貴族もいるから、メンツとかあるじゃん?」


 英雄で子爵とはいえ、なったばかりで、元平民で、いくら有能であってもそんなのが間をすっ飛ばして王に直接指示をされまくっていたら、生み出される結果が良いとしても、上下関係にうるさい人間が運営している王宮という組織が崩壊しかねない。


 地方領主という小さな組織の長だから、こうやって直接話をすることも許されるというもの。


 だから王都では料理という突破口を使って、貴族達に平和的にアプローチをして、魔術学院の魔術師として、貴族的な出世にはそれほど興味はありません、というポーズを取るのは正解だ。


「次は冷凍の箱ね」

「今日は頼んでいた中の箱を受け取って持って帰るから、もうちょっと待ってねー」

「冷蔵用の箱も欲しいわ」

「あれは次の改良版を作ったら、古いのをあげるよ」


次のはもっと大きくする予定。個人用途の希望も聞くけれど、あれは港町と王都間の運搬をするのが最優先だから、今は小さいのを作っている場合じゃない。


「ところで、以前から話をしてた弱いゴーレムを試したいんだけど」

「話は聞いたけど、鍛錬に使えるの? いつもやって貰ってる大きなゴーレムは好評なのよ?」

「大きい敵ばかりが出るわけじゃないし、ボクらの基準で話をしても、レイナードでもついてこれないじゃん」


 隊長をやっているレイナードも一般的な騎士の基準でいえば強い部類なのだけれど、やはりヒルダにはこの「一般的な」という基準がかなり高い位置にある。


「ボクがやりたいゴーレムは一般人向けの対個人用のだから」


 霞沙羅との付き合いで、色々なレベルの軍人を見てきたから、その感覚でもってアンナマリーのサポートをしてあげたいのが一番の理由だ。


 もちろん出来上がったデータは霞沙羅に返してもいい。


「基礎が出来ればここの分校の魔術師でも作り出せるだろうから、鍛錬用だけじゃなくていざとなった時のデコイくらいにも使えるし」

「そこまで言うならオリビアの隊でやりましょう」


  * * *


「相変わらず相手がボクじゃ無くて悪いんですけど」


 剣士としては確かに興味はあるけれど、アリシアと剣を合わせるとか普通に考えたら恐ろしい。いくら領主のヒルダには劣るとはいっても、一度騒ぎになっているし、時々やって来ては腕試しをしていく霞沙羅と同等と言われているのだ。あの様子を見るとヒルダとそんなに変わらないようにも見える。


 霞沙羅については、同じ女性の身から見て、ヒルダに次いであんなに強くなれるのかと思いはするけれど、実際にやりあえと言われたら遠慮したい。


「弱いゴーレムというのが引っかかるが」

「強さ的にはゴブリンとか、その辺の盗賊とかを想定してるんだけど。いつものだと強くて大きすぎでしょ?」


 早速修練エリアの土を使って、騎士の姿をした、人間サイズのゴーレムを生み出した。


「まあこれなら」


 ゴーレムというと人型ではあってももうすこし解像度が低いというか、カクカクしたデザインを思い浮かべるけれど、アリシアのは造形がかなり洗練されている。


 といってもまんま人の姿をしているわけでは無く、無機質でキャラクター性もなく、人形のようにも見えるので、斬りまくっても罪悪感は湧かない。


「なんかすごい出来がいいですよね」

「アーちゃんは冒険中に、威嚇のために兵隊の水増しとかで人を作ってたから,その時の賜物よ」

「では小隊長である私から」


 まずはオリビアからゴーレムの具合を確かめるべく対峙した。


 オリビアはこの騎士団でもそこそこの実力者ではあるので、アリシアがやるのは、各パラメーターの調整と行動パターンの構築だ。


 弱いといってもある程度は強くしておかないと鍛錬用の意味が無いので、小隊長であるオリビアが苦戦するくらいが丁度いいと思う。


 攻撃も防御もするので高校用とは全然違う。


 最初はアリシアが直接操り、オリビアとの様子を見ることにする。


 それで少しずつアリシアの操縦から離していきながら行動パターンを構築していこう。


「はあっ!」


 攻撃を受け止める剣と盾は硬くしておく。でも切れないように日本の十手のように丸くしておく。


「くうっ!」


 ちゃんと攻撃はしよう。タイミングも考えよう。ある程度癖をつけて緩急もつけよう。


「…弱いわね」

「ヒーちゃんを倒せるゴーレムは作れないからね」


とりあえず5分くらいやって、オリビアには勝てないくらいの行動パターンとパラメーターは決まった。


「じゃあ次は副小隊長のナターシャさん」


今日の女性小隊は4人が勤務しているので、全員にやって貰おう。


「はい」


 ナターシャはどちらかというと弓が得意な支援タイプで、近接戦闘ではオリビアに劣る。


「弓矢用のターゲットも作りたいねー」


 騎士団なので弓矢担当もいるわけだけれど、まあそれはまた今度で。


 そんなナターシャに大怪我を負わせない程度に、ある程度のランダム要素、つまり揺らぎを導入した。


「じゃあサーヤさん」

「はーい」


 サーヤは剣の腕ではナターシャとほぼ同じくらいなので、今の設定の確認に丁度いい。


 なので大苦戦した上で負けた。


「私にはちょっと強いなー」

「じゃあアンナマリーで」

「は、はい」


 アンナマリーは最近は霞沙羅も相手をしてくれているので、やどりぎ館に来た頃よりも大夫剣筋が良くなった。


 でもまだ経験が足りなくて、自動運転で手加減してくれないゴーレムにはどうにもならない。


「強さ的にはこんなものじゃない?」


 ヒルダから見るとアクビが出てしまうが、団員が苦戦しているのならこんなモノなのだろう。


「うーん、もうちょっと付き合って貰えない?」


ではこの方向性でブラッシュアップしていこう。


「私はそれで構わない」


 オリビアがそう言うので、小隊員であるアンナマリー達も付き合う事になった。相手はゴーレムではあっても、まあ鍛錬には悪くは無い。


 散々弱い、と言われたけれど実際は結構強い。この辺はまあ作っているのがアリシアだし…。


ゴーレムは壊れることはあっても死ぬことは無いので、何も気にせず思いっきりぶつかっていけるので相手をする方も気楽だ。


 アリシアも自分達のことを考えてこんな事をしているので、協力してあげるのも悪くない。


 この後、数名の男性団員も合流して、色々と術式の調整を続ける事が出来た。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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