ルビィVS吉祥院 -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
ルビィと吉祥院の魔力対決が終わって、アリシアは一旦やどりぎ館に帰って、夕飯の下準備を終えたところで、今度はエリアスを連れて実家に戻ってきた。
「もー、皆が会わせろって言うから」
「親も心配するでしょ。あなたがどんな奥さんを連れているのかって」
パスタ系の料理を2つ教えるついでに、カリーナの宿にエリアスを連れて来た。
「ここがあなたの生まれた家なのね」
「宿の格としてはビジネスホテルレベルだけどねー」
下を探せばもっとあるけれど、カリーナの宿は卑下するほど悪い宿ではない。一部屋の宿泊人数は1人から4人くらいと幅はあっても、全部屋壁と扉でしっかり仕切られた個室なのだから、そんなに安い宿ではない。
世の中には床しか提供されない雑魚寝の宿も、大部屋に二段ベッドが沢山置かれたもう少しマシな宿など、とりあえず屋根があって雨風をしのいで休めればいいというような施設もある。
「そういうのはいいのよ。あなたがやどりぎ館の管理人になる基礎を作ったところでしょう?」
「そうだけどねー」
三男だからどういう人生を歩もうか、ずっと考えていた。一番上の兄は物心がついた頃から家を継ぐ気があって、真面目に宿の手伝いをしていたから家に留まることは無理だった。
何でも無い平民の一族生まれにしては、たまたま剣と魔術の才能があったから、その後の人生で自由に生きることが出来ているけれど。
悩んだ末にまさか女神様を人生のパートナーにするとは想像すらしていなかった。
とにかく、エリアスは腕を組んできて、家に入る事を促してきた。
「あれ、アー兄じゃん」
声をかけてきたのは妹。近所の仕立屋に嫁いでいった妹。
「その隣の人って、ひょっとして奥さん?」
「そうだよー。父さん達が紹介しろってうるさいからさー」
「そりゃあたしだって気になってたんだよ。あのアー兄がホントに奥さんなんか貰えたのかって」
「妹さん?」
「そうだよー」
「どうも。アリシアの妻のエリアスです」
「ひえー、すごい美人。背も高いし。ぜったいアー兄に合わない。だってこんなだよ、子供の頃はお姉ちゃんだと思ってたアー兄だよ」
「もー、酷いなー。向こうの世界に行ってからずっと一緒にいるんだよー」
ともかく妹と一緒に宿の中に入っていく。
今日も当然、まだ夕食時には余裕のある時間帯である。この後始まる夜の営業に向けた準備時間中にやってきた。
「ほらー、エリアスを連れてきたよー」
「うわ、こいつホントに奥さん連れてきた」
スープの準備をしていた兄が、エリアスを連れてやって来たアリシアを見て、家族を呼びに裏に入っていった。
しばらくすると、いそいそと、兄の奥さんと両親と祖父母が出てきた。
「うおー、お前よくそんなの見つけてきたな」
「あのー、眠ったままだった昔の国の巫女さんで、神様がそろそろ起こそうって、預かる感じだったんだけど」
「それでもよ。アリシアなのに、あのアリシアなのよ」
「母さんがそこまで言う?」
こうなったのも娘欲しさに三男のアリシアを女として育てようとしたからおかしな性格と外見になったのだが、親というのは勝手なモノである。
「おお、エリアスさん、アリシアは良くしてくれているかい? 文句があるならこのジジイのワシに言ってくれるといい」
「いえいえ、とても頼りにしています」
「ホント背が高くて」
エリアスはここに集まった誰よりも背が高い。そしてスタイルもいい。銀髪がミステリアスだ。本当にこの息子が連れている嫁なのかと不思議でならない。
「エリアスさん、ここは女同士でアー兄の事を話そうよ。そっちの家でのさ、何年か分の話しを聞かせてくれたら、家を出て行くまでの話しをしてあげるよ」
妹たちがエリアスをテーブル席に引っ張っていく。
「ええー、ちょっと」
「お前はこっちだ。今日は麵料理を教えてくれるんだろ」
「ま、まあそうなんだけど」
しょうがないなと、アリシアは厨房の中に引っ張り込まれた。女の話、余計なことをエリアスに訊かなければいいけれど。
今日はまた騎士団にも教えているペペロンチーノとミートソースのパスタ。
ペペロンチーノは、シンプルが故に腕前の差が出るけれど、料理的にはシンプルだ。ミートソースは茹でた麵にソースをかけるだけでいいし、あとで別の料理に繋げることが出来る。
「話に聞いたんだが、なんかホテルミラーニカの方でもお前の料理が出てるらしいな」
「ルーちゃんの家の子がミラーニカの子だからねー」
「おいおい、お前はこの家の人間なんだから、あっちよりこっちにもっともってこいよ」
「はーい」
ミラーニカとは客単価と客層が違うので、いくら何でもカリーナの宿で出来ることと出来ないことがある。
それにお店の特性も。ミラーニカの料理は宿泊者向けに食事しかないけれど、こっちは平民向けの居酒屋の用途もあるから、おつまみとしての一品料理も重要になってくる。
厨房の料理スペースも限られているし、ここはここの常連がいるから、変に新しいメニューばかりを出してお店を大きく変えてしまうわけにはいかない。
じゃあ次は何にしようかと考えてしまう。
「ペペロンチーノは、今日はベーコンを入れたけど、時々ソーセージとか鶏肉とか、別のにしてもいいと思うよ。でも基本は具無しだから、無理に入れなくてもいいよ。入れるにしてもちょっとでいいかなー」
「ミートソースは毎日やっても良さそうだな」
「作っておいて茹でた麵にかけるだけだしな」
今回もメモを置いていく。
「もう一人のお兄さんは?」
エリアスは一つ疑問に思った。家族仲が悪いという話は聞いていないので、まさかお婿にいったままロクに顔を出していないわけではないだろう
「あのコのいる牧場から色々と食材を仕入れてはいるんだけど、この町の外だから。来るのも朝だけで、家の事もあるから個人的に遊びに来るっていうことはないのよ」
牧場の仕事もあるから、アリシアが来ると言われて午後に来るとかいうのもなかなか難しい。
ラスタルからはそんなに離れていないけれど、会うためだけにここに来るには、歩きだと遠いし、荷馬車用の馬に乗ってくるくらいしか手がない。
「こっちから行かないとねー」
アリシアも館の仕事があるので、冬季休暇中に一度会いに行こう。牧場でどういうモノを作っているのか見てみたい。そうしたらこの食堂のメニューに使ってもいい。
「じゃあまた来るよ」
この休み中にもう一回くらい来ようかなと思い、やどりぎ館に帰った。
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