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地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「あれ、ハルキスがいるじゃん」
騎士団にはハルキスの姿があった。そしてなぜかライアもいる。
「マスター、私が運んだんですけど」
先日「私が運びます」と言ったので、システィーはハルキスの所に行ったついでにライアも回収してきたようだ。
「魔女戦争の時はシスティーに乗って天空魔城に突撃したけど、普通に転移出来るのね」
「あの時は転移では入れませんでしたから」
分厚い雲と障壁に囲まれた、魔女ソフィーティアことエリアスが待ち構えていた天空魔城は、それを突き破る為に全員で剣のシスティーの刀身に乗って飛んだものだ。そもそも当時は青い剣の姿をしていたし、空間転移が出来る人間が二人もいたので誰も気にしていなかった。
「マスターが忙しくても呼んでもらえれば行きますよ」
最近出番が欲しいシスティーであった。
「それでアーちゃんは何しに来たの?」
「霞沙羅さんが練習用の武器を改良したから持ってきたんだけど」
「何でお前がハルバードを持ってるのかと思ったら、そういう事か」
「これなら霞沙羅さんの刀ともやり合えるよ」
これから先は榊が練習する用の刀だけれど。
ヒルダとハルキスがそれぞれを受け取るとちょっと驚いていた。
「これが練習用か?」
「これは…、この前サカキさんにバラバラにされてもおかしくはないわね」
作ってくれたモートレルの鍛冶だって決して悪い腕前じゃ無いけれど、さすがに英雄と呼ばれるヒルダやハルキスが練習で本気を出して使うような武器を作るのは難しい。
こんな頑丈なものを作れるのは同レベルの超人である霞沙羅ならではだろう。
「ところでライアは練気の練習ってしてるの?」
「あれいいわね、体が軽くなるわ」
「あ、そうなんだ」
なんだ、みんなちゃんとやってるじゃんとアリシアは思った。ルビィはさすがに無理だけれど、全員揃って何だかんだで強くなることに貪欲だ。
「おう、同等の道具を手に入れたとなれば、そのサカキってヤツといつでもやり合えるな」
「榊さんはしばらく、引越で荷物を持ってちょくちょく館に来るから、ハルキスに時間がありそうなら呼ぶよ」
「おう、まあ冬で農作業があるわけでもなく、オレはそんな忙しくはないがな。じゃあこのハルバードは一旦持って帰って慣れるとするか」
「私も近いウチにリベンジしたいわね」
練習用とはいえ、全力で打ち合えるものを手に入れたので、2人ともやる気満々だ。
「そのサカキって人はそんなに強いの?」
元前衛の二人は榊に興味津々だけれど、会ったことも無いし見たこともないので、なぜそこまでこだわるのかよく解らない。
「練気を差し引いても、私とハルキスとは互角以上よ」
互角以上はどうかなーとは思うけれど。ヒルダとハルキスは自身の補助用とはいえ、自前で魔法が使えるように教えたり、簡単な傷の治療も出来る。多少は魔術の知識もあるので、ある程度相手が何をしてくるのか予想することも出来る。
でも榊は魔法が一切使えないので、その辺の差はある。
なので、総合能力ではほぼ変わらないと思う。
「へー、面白そうね。私もやってみようかしら」
「多分、ライアは榊さんが苦手とするタイプだから、場所によってはいい勝負になると思うよ」
「え、私よ?」
ライアの剣の腕はヒルダとハルキスからは劣る。条件付きとはいえ、2人と互角という人間といい勝負になると言われるとは思わなかった。
でも榊を良く知っているアリシアが言うのだから、冗談でも社交辞令でも無いだろう。
「ライアは立体的に動くから、町中とか家の中とか森の中とか、地面以外に足場があるところでやると対応出来ないかも」
「ああ、わかるな」
「私達はライアに慣れてるけれどそうかもね。単純な剣の腕なら間違いなくサカキさんが上だろうけど、あなたは戦い方がちょっと独特なのよね」
「とりあえずどっちでもいいけど、やってるところを見てみたいわね」
「おう、楽しみにしておけ」
次はハルキスの番だ。
「ところで、ずっと前にボクら7人だけで食事しようよって話があったと思うけど、家の人達が、アンナマリーも含めてお店に食べに行くぞって気を使ってくれてて、その日なら出来るよ」
「遠方在住者の運搬は私がやりますからね」
「料理は何でもいいよね? 材料費は悪いからボクが全部出すよ」
「肉だぜ、肉」
「アイス、これは絶対ね」
「アイス、なにそれ?」
「アイスは持ってくるけど、もし良かったら作る箱を買ってもらえる? あれはさすがにあげられないから」
「私は買うわよ」
「だからアイスって何よ」
アイスクリームの説明をしたら、とりあえずライアは食べてから決めると言ってきた。
「早く売って!」
「俺も買えるのか?」
「欲しいなら売るけど」
「まあライアと同じで食べてからだな」
館の皆が食べに行くのは、フィーネが以前に占いをしたという札幌のジンギスカンのお店だ。場所と内装のアドバイスを受けて、開業からずっとネットでも評判がいいとかで行列のお店。
そういう事ならアリシアも行きたいけれど、それはまた今度。
またアンナマリーがやどりぎ館を出て、札幌の繁華街にあるお店に行くことになるけれど、その辺はシャーロットとかエリアスがフォローしてくれるというので、好意に甘えることにした。
当日はシスティーと2人だけで料理を作らないといけないけれど、3年間も黙っていたお詫びでもあるので、色々と作る事にしよう。
アリシアはいつも冷蔵箱の中身を頼んでいる工房に幾つか発注してからやどりぎ館に帰った。
* * *
シャーロットの弟妹は、日本時間で午前の8時に、ロンドン時間の午後11時に迎えに行く。
あんまり遅くなるとロンドンは深夜になってしまい、家族に迷惑になるので、この時間にした。
逆に帰る時も朝ご飯を食べさせてから返すことになる。
朝起きてすぐにロンドンでまた寝るという感じになってしまうけれど。
「ううー、どこに連れて行ってあげればいいのかしら」
さすがというか、シャーロットはまた一つのレポートを終えて弟妹を迎えることになる。その後もまだ提出するレポートはあるけれど、一泊とはいえ何も気にせずに弟妹の相手をしてあげられるように準備はしている。
「良い姉よな」
多分フィーネは今回もシャーロットのことを名前で呼んでくれるのだろう。
「やっぱり日本のコンビニは見せたいわ」
「え、なんで?」
観光スポットとしてどこに連れて行こうかという話だったのに、急にコンビニの話になった。コンビニは観光名所では無いと思う。
「ロンドンのとは違うのよ」
「では近くにある成功マートでよかろう。あれぞ日本のコンビニであろう?」
そのお店はほぼ北海道にしか無い、日本で一番古いコンビニチェーン店だ。
独自の食べ物もお酒も色々あるし、コンビニ好きなら全国的に有名なお店。
確かに日本の食を楽しむならコンビニスイーツもいいかもしれない。
「朝ご飯食べてこないんでしょ?」
「そうね、ちょっと歩いて買ってくるわ」
「カツ丼は買うでないぞ」
成功マートは店内調理のカツ丼が有名。
「朝からは買いませんよ。スナック系とかおにぎりとか、軽い物にします」
シャーロットは家族へのお土産は何がいいのか考えながら、夜は更けていった。
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