聖誕祭とお客様 -3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
昼寝から目が覚めたエナホが皆に見守られて、ラッキー君と一緒に庭で雪遊びをしていると、スキーを満喫してご機嫌なモガミとアリサが帰ってきた。親子3人で久しぶりの温泉に入りにいったり、ラッキー君を家に帰したり、アリサも助っ人に入って夕飯の準備をしていると、夕方になったのでシャーロットはロンドンの実家にケーキを届けに行った。
それと前後するようにアンナマリーも今日のお勤めを終えて帰ってきたので、仕事の汗を流す為にお風呂に行き、しばらくしてから実家の反応を見て満足したシャーロットも帰ってきた。
「実物を見てびっくりしてたわ」
前回持って行ったショートケーキよりも明らかに手が込んだケーキだったので、弟妹達も本当に画像通りのモノが箱の中から出てきて驚いていたそうだ。
向こうの夕飯まではまだ時間があるけれど、今日の聖誕祭を楽しんで欲しい。
そしてやどりぎ館の方は、食卓に料理がボチボチ並び始めた。
霞沙羅の方も大体予定通りに駐屯地を出たそうなので、帰宅時間に合うように料理を作っている。
「エナホ君のご飯はどうするの?」
「お子様ランチスタイルにするよ」
ちゃんとお子様ランチが作れるような、子供向けのお皿を買ってきてある。そこに材料はあまり変わらないように、特別に小さめに作った料理を色々と積んでいく。こういう雑多に積まれていくような料理は屋敷では見たことがない。
「こ、これはエリックの前に出しても喜びそうだな」
上流貴族の子供だけれど、こんなにいっぱいの料理が一つの皿に勢揃いをしていたらはしゃいでしまうだろう。今度屋敷で作って貰おう。
「アリシア君は本当に料理が好きなんだな」
「二人には色々と教えて貰いましたからね」
「最後の方はアリシア君に教わることもあったわよ」
「システィーが一番の奇跡かな。まさか剣であるキミがねえ」
「相変わらずスープカレーの研究を続けてますよ」
引継ぎが終わるまでの3年間。アリシアにとってモガミとアリサはいいお師匠だった。
純凪夫妻は元々日本と似たような文化を持っている世界から来たので、料理の方もすぐに日本の文化に会わせられたけれど、地球で言えばヨーロッパ系な上に文明が遅れたアシルステラから来た伽里奈はさすがに時間がかかった。
その間、手伝いをさせて貰ったり、いいお店を紹介して貰ったりで、色々とお世話になった。
「ごはんだ」
「エナホ、もうちょっと待ってね」
いい匂いがしているので、いっぱい遊んだエナホ君はお腹が空いてきたみたいだ。
「にゃーん」
「ほらアマツが遊んで欲しそうにしているわよ」
「ねこたん」
仕方が無いので、夫婦であまり料理の匂いがしないロビーの片隅まで連れていって、ネコ用の玩具で、アマツと思う存分遊んで貰った。
じきに霞沙羅も帰ってきて、食事を前にしてフィーネが大人用にお酒を食卓に並べ始めた。
「スキーはどうだったんです?」
霞沙羅はさっとシャワーだけ浴びてきて、普通の話しを始めた。
「正直まだ雪も本番ってワケではなかったが、数日前に結構降ったんだろ? なかなか楽しめたよ」
「もう一回くらい遊びに来てもいいわね」
その頃には榊も引っ越してきているから、霞沙羅がどういう事になっているのか見たいのがアリサの本音ではある。
願わくば堂々としている伽里奈とエリアスからいい影響を受けて欲しいと思っている。年上なんだから。
「一泊くらい気軽にいいんじゃないですかね」
料理が並び終えそうなので、全員が食卓についた。
お酒を飲む飲まないがあるので、座る場所は大人と子供で別れた。ただ、子供の面倒をみないとダメなのでエナホとアリサは隣同士。
「お、エナホだけ料理が特別だぞ」
新幹線を模したお皿の上には子供が好きそうなチキンライスやスパゲティーミートソース、ミートボール、クリームコロッケ、エビフライ、ソーセージ、フライドポテト、ミックスベジタブルにコーンスープが添えられていて、賑やかだ。
「よかったわね」
「たべるー」
倉庫から出してきた子供用の椅子に座ったエナホ君がもう待ちきれないので、何となく食事が始まった。
「味付けは単純じゃが、この鶏肉がよいぞ」
骨のついていない骨付き鶏だ。ビールによく合う。これはヤマノワタイでも作る事が出来そうだ。
「まま、おいちい」
「そうねー、アリシアお兄ちゃんが更に腕を上げたみたいね」
「さすがにこの食卓は、実家に写真を送れないわね」
でも一応スマホに残した。
人数が多いので、机の上の料理も多めで、シャーロットも初めての経験だ。
ただ、料理の数も多くてパーティーになっていて、この9時間後に予定されている厳かな実家の食卓と比べてはいけない。今日は写真を送るのはやめよう。また今度、どこかに機会に…。
「シャロの住んでいる地域が、この聖誕祭の中心地なのに、そんなに違うのか?」
「聖人様達がこの世界に生まれたことを祈る日なのよ。本来は騒ぐ日じゃ無いの」
まあそればかりでは無く、大勢でパーティーをする事もあるし、恋人同士だとレストランで夜景を見ながらのロマンチックなディナーもある。ただ普通の家庭は、いつも通りの食卓とは言わないけれど、こんなにいろいろ料理が出る事は無い。
例年から考えると、ローストチキンとパンとサラダとスープくらいだろう。
「いやまあ、この館がやり過ぎな気もするぞ」
今日は世間的にはフライドチキンのチェーン店とピザ屋が年末のかき入れ時になるくらいだし、スーパーの惣菜売り場もオードブルセットが売れているだろう。
「ネコちゃんもちょっといい夕飯なのね」
今日はちょっとお高いネコ缶を霞沙羅が買ってきていて、今黙々と食べている。
「まあ良いではないか、年末じゃよ、年末。良くも悪くも今年はもう終わりじゃ」
大人は酒を楽しみ、子供は純粋に料理を楽しみ、そしてケーキが出てきた。
「すごいな、木の切り株みたいだ」
中身はロールケーキなので、断面は年輪のようになっていて、表面のクリームにも木のうろのような筋が刻まれ、落ち葉の形のチョコが置いてある。
お嬢様なアンナマリーもどんなケーキだよと驚いている。それとチョコレートは好きだ。
英雄様にはこういうのも屋敷で作って欲しいと、アンナマリーは早速食べた。
まだ子供のエナホ君はそんなに食べられないからさすがに薄く切られてはいるけれど、美味しそうに食べた。
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