年末進行に向けて -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
聖誕祭には純凪さん達が泊まりに来るし、皆家にいるので、伽里奈はどんな料理を作ろうか準備中。
実際はパーティー的な大皿料理になるわけだけれど、子供もいれば酒飲みもいるので、お皿は二つに分けたほうがいいかもしれない。
ケーキは前日の夜にでも作っておくつもり。そうしないと料理にオーブンが使えなくなってしまう。
フィーネは食べたいモノがあるそうで、当日それを買ってくるというので、類似品は選択から外す。
「骨付き鳥とか頼まれちゃったし」
皆で食べるので、骨の無い胸肉を買ってきて、同じ味付けと料理方法で対応する予定。
スープ、フライもの、ピザ、なんかの麵類、刺身、おにぎりとかパンとか、あとケーキ、くらいか。
エナホ君向けにウィンナーだったり、一口サイズのミートボールでも作った方がいいだろうか。
ソファーでタブレットPC片手に悩んでいたら、外からシャーロットとアンナマリーが帰ってきた。
「やっぱり家の中があったかーい」
「今度やる時はなんか暖かい飲み物でも持って行こうぜ」
15分程度だったけれど、ひとまずかまくらを堪能した2人は、寒い寒いと言いながらソファーに座った。
「あれ、ネコちゃんは?」
「霞沙羅さんが連れて帰ったよ」
霞沙羅はやることがあると言って、温泉から出るとさっさと自宅に帰っていった。
「お前は何をしているんだ?」
「聖誕祭用のメニューを決めてる所なんだよ。そろそろ材料も買いに行かないとダメだしねー」
「何を作る予定なんだよ」
「まあこんな感じかなー」
伽里奈はタブレットPCをシャーロットの方に渡した。アンナマリーは精密機械を触ろうとしないからだ。
「私も手伝うわよ」
「シャーロットが心強いことを言ってくれるようになったねー」
「ケーキは何だ。ブッシュドノエル?」
「ウチのお隣の国の、聖誕祭に食べられルチョコケーキよ。こう、ロールケーキっていうか、丸太をイメージしたケーキなの」
「丸太って…、チョコケーキだってのにあんまり美味しそうじゃないな」
「そんな事無いわよ」
シャーロットが画像検索をしてケーキの姿を見せると、アンナマリーが感激した。
「こ、こんな姿のケーキがあるのか」
シャーロットが言ったとおり、丸太みたいな姿の美味しそうなチョコケーキだ。
ロールケーキみたいにも見えるけれど、年輪だけじゃなくて、枝を切った跡も再現されているのもあって、可愛らしくて面白そうで美味しそうだ。
「フラム王国の英雄様はこんなの作れるのか?」
「こっちに来てから、季節は違うけど何回か作ってるよ」
それなら安心だ。
「て、手伝いたいけど、手伝えそうにないわ」
形を知ってはいたけれど、シャーロットにはどうしようも無い姿をしている。これをちゃんと形にするには自分は邪魔そうだ。
「クリーム作りくらいはお願いしたいなー」
「それくらいならやるわよ」
折角料理へのやる気が出ているので、このイベントに不参加で意気消沈させてしまうと可哀想なので、伽里奈としても出来そうな作業を頼むことにした。
あと出来そうなのは野菜の皮むきと揚げ物の管理くらいか。
でも一つ気になることがある。一日のこととはいえ、もう年末だ。シャーロットにはやることがある。そんなに時間の余裕はあるのだろうか。
「シャーロットのレポートは大丈夫?」
年末から1月の中旬までには提出を終えると言っていた。
これから附属高校は、日本の高校ではちょっと長めの冬休みに入るから、シャーロットにもレポート作成の時間は出来る。
「この間見て貰ったでしょ。それで直しを入れて幾つかは提出済みよ。教育論は冬季休暇中に完成させる予定」
「それなら大丈夫だね」
レポートを提出して、それについての解説とディスカッションが1月末から行われると言っていた。
「霞沙羅さんが作ってるっていう杖はどうなってるんだ?」
「ちょっと遅れてるけど、作業は進んでるわよ」
これについては伽里奈は無関係だけれど、霞沙羅が作業をする時はシャーロットが付き添っているので、その目で進捗もちゃんと見ている。
ここの所、軍関係の事件で霞沙羅が巻き込まれているからちょっと遅れているみたいだけれど、そもそもシャーロットの滞在期間も長いので、まだまだ全然余裕がある。
「霞沙羅も事件が一段落したみたいだし、大丈夫じゃない?」
そもそもただの事件なら霞沙羅が表立って出ていく必要も、鑑定もする必要は無かった。
事件の規模自体はそれほど大きくは無いけれど、裏に控えている人間の特異性が問題だ。
そろそろ諦めて、ヤマノワタイに帰ってくれるといいのだけれど。
* * *
シャーロットとアンナマリーの希望を聞きつつ、システィーとすりあわせをして聖誕祭当日の料理は決まったから、明日には買い物をして、食材を揃えておかないといけない。
「年末って事もあってちょっとソワソワした感じ」
今日もいつも通りエリアスが伽里奈のベッドに来ている。中間試験も終わって、こっちも今年の登校は残すところあと数日。
「番組の中はそんな感じじゃないけど」
モデル事務所の先輩2人が参加することになった「ウキウキ常務」は2回目の企画に移ったところ。ただ、聖誕祭が近いからといってそれの特集をしているわけではなく、町ゆく道民に聞いた道内のラッキースポットを訪れる旅が始まった。
「画面が華やかになったって、評判みたいよ」
確かに元々の、それなりに社歴のある女性局アナ1人がアシスタントだった頃に比べると、若くてお綺麗なモデル2人が画面に映るようになってウキウキ感も増した。
さすがに汚れ役というか毎度苦労するのはMCのバンドマンなのは変わっていない。
「そう、2月にある『札幌モード』っていうファッションショーに3人で出ることが決まったのよ」
「エリアスも? それは良かったじゃん」
「だから歩き方とか見せ方とか、色々と勉強しないとダメね」
写真の被写体という動きの無い仕事は慣れてきたけれど、ショーで服のアピールをするための動きのある仕事は始めて。
以前から吾妻社長や先輩2人に勉強に良い資料は無いかとか相談して、自主的に勉強をしていたけれど、ようやくその苦労の成果を披露する時が来るのだ。
「だったらこの番組で特集されるのかな、ショーかモデルの裏側とか?」
「どうかしらね。もしそうなって、先輩のおこぼれでちらっとでも映ったら良いわね」
道内企業のPRの番組だし、新アシスタントの2人の仕事を紹介するいい機会だと思うし、局もショーに協賛しているようだから、そういう展開もちょっと期待してしまう。
先日、やどりぎ館の2階で収録した「オフィスN→S」HP用の特集も、元旦から4回にわたって掲載されるし、最近は大小色々な仕事を貰って事務所の露出も多い。
何だかんだでエリアスも順調に経験を積んでいっている。
自分が載った雑誌記事やブランドの商品ページなどを嬉しそうに見せてくれるけれど、伽里奈としては最近なんとなくモヤモヤしながら、やる気を出しているエリアスを見て嬉しくはある。
「もうすぐ冬季休暇だもの、アシルステラの件でも手を貸すわよ。立場的にちょっと複雑だけど鎮魂の儀は成功して貰いたいし」
「昔からずっとやってる儀式だしね、なにも魔女戦争の事だけが対象じゃないよ。一番大きいのは対帝国じゃないかな。なにせ100年分だしね」
「うん」
たった一年だけの、神様との戦いの戦没者が鎮魂のメインなわけがない。
「ボクも久しぶりだしね」
「あなたの妹分が頑張ってるんでしょ?」
「本物の妹がいるのに、妹分って言うのが変だけどね。あ、エリアスに会わせろって家の人がうるさいんだー」
「私はいつでもいいわよ」
伽里奈の言葉にエリアスが身を預けてくる。
「そんな遠慮しなくたっていいのよ」
「じゃあ今度パスタ系を教えに行くから、ちょっとついてきてね」
「それはもう」
そういえば下の兄と妹にはまだ会えてないなと思い出した。下の兄はラスタルの外にある牧場に住んでいるので、牛乳や乳製品の納品でもなければ、わざわざプライベートで町に来ないだろう。
妹はラスタルにある仕立屋さんに嫁いでいったので、よっぽど忙しくなければ呼びに行くか、会いに行けばいい。
「じゃあよろしくね」
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