休み前のお楽しみ
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
期末テストもその結果報告も終わったところで、今年最後の野外演習の日がやってきた。
今回の野外演習の目玉は、教師によるゴーレムの試験運用にある。
演習中にずっとやっているわけではなくて、一時限分だけ、何人かの教師が、伽里奈がデザインしたゴーレムを使っての演習も行われる。
期末試験も終わって、結果も出ちゃっているので、成績が良かった生徒も思いの外成績が振るわなかった生徒も、ストレス発散の場にしてやろうと息巻いている。
ゴーレムをターゲットに使った授業は、来期以降の授業に採用されるであろう事案なので、教師達の運用実験の場でもある。
昨日は放課後に伽里奈も駆り出されて、何度も予行練習を行っていたくらい念入りに準備をした。
そして料理班の方も、今年最後の、一応聖誕祭の要素も入っている、今日の料理作りに気合いが入っている。
納品された食材の確認、それぞれの班の行程確認をしっかりと行い、料理開始の時間になったので、全員が一斉に動き始めた。
本日作られるのは、オードブルセット、骨付き鶏、焼きおにぎり、コーンスープ、チョコレートケーキ。
普通は小樽名物半身揚げの所を、なぜか香川名物骨付き鶏のひな鳥になっているのは、教師が以前食べて美味しかったからだそうだ。
伽里奈も個人的に気になってお取り寄せしてみたら、酒飲み2名に好評だったので、やどりぎ館で作る際は発祥であるお店の味に寄せている最中だ。
ただオーブンを使用する料理が被ってしまい、数が足りなくなってしまったので、今回は野外用の調理機械も引っ張り出してきている。
ケーキ班はまずはスポンジ組が動き出して、早々に焼き作業に入った。当然生徒の数が多いので、一回では全員分を焼くことは出来ず、何度も焼くことになる。
そしてチョコクリーム組の方も、大量に必要となるので早めに動き出した。チョコクリーム自体は中と外では同じ物だけれど、中に使うクリームは砕いたクルミを混ぜるので、最終的には二つに分けた状態で準備をする。
シャーロットもやどりぎ館で何回か練習したハンドミキサーを駆使して、ちゃんと一員としての仕事をこなしている。
「余裕はあるはずなんだけど、なんか焦っちゃうなー」
まだスポンジの一回目は焼き上がっていない。時間的にはまだ二時限目が始まった程度なので、全然余裕。
揚げ物がメインなオードブルは四限目に入るまで貯めておくつもりなので、今はただただ作り続けている。
焼き物メインのオードブル班は揚げ物班よりはちょっと早めに始めるようだ。
焼きおにぎりはご飯が炊き上がり始めているので、白飯のおにぎりを作り始めていて、焼きの方も準備が始まっている。出す前に冷めている物はレンジで温めるそうだ。
コーンスープは後でまた温めればいいので、もう作ってしまっている。
骨付き鶏は下処理の後、塩・胡椒・ガーリックパウダーをまぶして、今は寝かせている最中。もうしばらくしたらオーブンでの調理が始まる。
焼き上がりには一個につき20~30分がかかるので、ここが一番大変そうだ。
ケーキが焼き終えたら、オーブンを貸す予定にもなっている。
「雪も降ってきちゃって大変ね」
伽里奈は実習が行われているグラウンドを見ていると、シャーロットもやって来た
チョコクリーム組も終わったので、そろそろ第一回目のスポンジが焼き上がるはずだ。
「来年はもっとちゃんと料理が出来るようになりたいわ」
「魔術以外にやりたいことが見つかって良かったね。ボクとかシスティーがサポートはするけど、一度シャーロットだけで作ったおかずを一品、実家にもって行ったら? 朝ご飯は無理でもお昼くらい向けに」
「それいいわね」
年末年始は、一回しかチャンスの無い日本の年越しを楽しみたいから、ロンドンには帰りたくないなと言っていた。でも挨拶くらいには行くようだから、その際に何かを持っていけばいいと思う。
「お、そろそろスポンジが焼き上がりそうだねー」
スポンジが焼き終わったら冷まして三段に切って、間にチョコクーリームを挟んで、くっつけて周りにクリームを塗る。
これを後数回繰り返す。
「じゃあ一回目を始めようか」
* * *
「おー寒い寒い」
外は朝方からずっと雪が降っているから寒い。勿論ずっと外にいるわけではないけれど。
四時限にわたる演習が終わり、生徒達が体育館に入ってきた。体育館内はストーブが焚かれているので温かい。
やっぱりいつもの料理実習とは違って、並んでいる料理は豪華だ。それに今日は全員で同じ食べ物を食べるので、大皿料理が多くてテーブルの上は壮観だ。焼きおにぎりなんか、一体どれだけ作ったのだろうかという量が置かれている。
そして今日は、飲料としてはいつもは無いジュースも置かれている。
聖誕祭前ではあるけれどやっぱり特別感はある。ちょっとしたご褒美。
鶏料理は小樽らしく半身揚げかと思っていたら、見たことがあるようで無い鶏料理が一人一本置かれている。添えられている、割と雑に切られたサイズのキャベツは何なのだろうかと、多くの生徒が首をかしげている。
生徒が自分の席に着席していく中を、ケーキやスープが運ばれてくる。
ケーキは特にデコレーションもフルーツ的なおまけも無く地味な感じだが、分厚く塗られたチョコクリームが美味しそうだ。
そして全員が集まって、料理も出そろった所で食事が始まった。
「この肉すげー」
骨付き鶏はニンニクと塩胡椒だけのシンプルな味付けながら、パンチがあって男子には特に好評だった。焼きおにぎりにも合う。
ここで料理全体が「塩辛い」ということに気がつき、お皿に貯まっている旨味をたっぷり含んだ油をキャベツにつければ、ちょっとした口直しにいいという事に気が付いた。
オードブルも串カツやエビフライやハンバーグやポテトなど皆好きそうな料理が盛られている。
そして地味な見た目のケーキは、皆最後に回して、食事を終えた生徒から食べ始めた。
「んー、チョコクリームが濃厚」
外も中も同じクリームなので、ショートケーキに似たリッチな感じがある。ただ、中のクリームに混ぜ込んだクルミがいい食感を生む。
「これは家で作れって言われそうね」
料理班は魔法術科の生徒とは少し離れた所で食べているけれど、藤井は相方の一ノ瀬を気にしながら食べている。
「伽里奈君、ちょっとこのケーキは私は絡んでないから、作り方教えてくれる?」
「うんいいよー」
伽里奈も一ノ瀬の背中しか見えないけれど、ツインテールの髪が大きく揺れているので、満足して食べているのが解る。
「あの状況じゃねー」
「私達は秋田に帰っちゃうから、それは来年の話だけどね。よろしくー」
今年の授業もあと一週間程度で終わる。
ここ数ヶ月で本当に色んな事があった。
アンナマリーが来て、アシルステラに復帰して、変な事件は起きて、変な人が現れて、海外からシャーロットが来て、鎌倉から榊までが入居する。フィーネの世界にも行ったりした。
学校での最後の大イベントも終わり、冬休みの開始まであと少し。
霞沙羅も言っていたように、気持ちの問題かもしれないけれど、何も無い年越しを迎えたい。
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