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とりあえずの処分 -3-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「あいつを連れてきて良かったな」


 まあ実際の所、あの捕まった2人が箱を奪おうとしても、この3人なら止められたかもしれないが、もう少し人を使ってきたかもしれないのだから、伽里奈(アリシア)をこの場に置いておいてよかった。


「前に立つばかりがリーダーじゃないんだな」


 伽里奈(アリシア)は前へ出ることも出来るけれど、ああやってバックアップ役に徹することも出来る。大学襲撃の時も、霞沙羅のちょっとした失敗を見抜いて、しっかりフォローしてくれた。


「アリシア君はオールラウンダーで、前も後ろも任せられる仲間がいたから、色んな事が出来たんだよ」

「生きて帰る、を一番意識してた奴だから警戒心が強いんだよな。じゃあ私らもさっさとやって帰ろうぜ」


 霞沙羅は仲間達を引っ張るリーダーなんだから、これはこれでいいのだ。


 箱を手渡されて、3人の周囲に大きな結界が形成される。そして箱を地面に放り投げる事で蓋が外れ、中に封印されていた2つのパーツが1つになり、完成態の幻想獣が中途半端に復活をした。


 姿自体はこれが正しいのかは見たことはないけれど、ほぼほぼ完全な姿とは変わらないのだろう。下半身が虎で、頭部があるはずの先には山羊の頭をつけた男の上半身が生えている。大きさは全高で十メートルはないくらいで、全長は尻尾まで入れれば二十メートルくらい。手には体格に見合った大きな棍棒を持っている。


 全身獣という感じだ。


「完全体にしてこれの二倍半の能力だとすると、まあ確かに弱体化を狙うわな」

「足りん、我が体を返せっ!」


 幻想獣は中途半端に開放されたのがお気に召さないようだ。


「これは完全体でも私らにゃ勝てんぜ」

「残りはボチボチ潰していくでありんす」

「…さっさと斬るか」


 寺院庁が対処した時は消滅させられなかったのだろう。それでなんとかバラバラにして封印したことについては間違っていない。


 だがその後に協力を要請してくれれば無駄に人が死ぬことも無かっただろうに。


「さっさと消してやろう」


 霞沙羅の長刀が巨大な光りの刃を発生させる。


「焼却だねえ」


 吉祥院が詠唱を始める。


「久しぶりにこれで切り刻むか」


 榊が抜刀する。


「お前達をころしてやるううううううっ!」


 幻想獣は棍棒を振り回して、その巨体を揺らして突進してきた。


 まずは榊が前に出て、振り下ろしてきた棍棒を刀で軽々と受け止めて、はね返した。


「ふっ!」


 そこに目にも止まらない何十か何百とも解らない、一瞬で出来上がった網のような面の斬撃が幻想獣に飛んでくる。


「ぐうっ!」


 巨体故に飛んできた斬撃を避けることも出来ず全身で受け、表面にびっしりと出来た切り傷によってバラバラになるところを、何とか繋ぎ止めた。


「休んでる時間はねえぞ」


 次に霞沙羅からの、長刀による連続突きが放たれて、巨体に大量の穴が穿たれた。


「うごあっ!」

「ちょっとオーバーキルかな」


 榊と霞沙羅が急いで吉祥院の後ろに移動した。


「{紅焔燦爛(こうえんさんらん)}」


 幻想獣の足下から湧き上がった幾重ものプロミネンスがその巨体を絡め取り、まばゆい光りに包まれて無慈悲に焼かれていく。


 絶叫すらあげることも出来ず、光りが収まる頃には幻想獣は跡形も無く焼き尽くされてしまった。


「お前も轟雷の杖のような欠点があるからな」

「これでも範囲を集中させた魔術なんだけどねえ」

「近くで撃たれると暑くてたまらないな」


 榊にとっては熱いではなく暑いでしかない。


 幻想獣がいた場所は深いクレーター状にえぐられていて、中は火山の火口のようにグツグツな状態だ。


 こんなものを町中で使うわけにはいかないけれど、ここなら思いっきりぶっ放せる。


 そして幻想獣の消滅が確認されて結界が解除された。


 周りにいる兵隊達はあの大きな幻想獣があっさりと処分されたことに驚いていたが、じきに歓声をあげた。


見ていた人達は改めでこの3人が英雄と呼ばれることを理解することになった。


  * * *


 捕らえたバングルのメンバー2人は軍でまず先に取り調べをしてから、専門家揃いの警察に引き渡し、以後は共同で壊滅に向けた調査を続ける方針になった。


軍の本部には作戦の終了を報告し、そこから寺院庁には連絡を入れるという。


「まずはどうやってパーツの場所を探し出しているかだよな。4人も捕まえれば、と言いたいがあまり期待しない方がいいかもな。ならまあどこかにスパイが紛れ込んでいるかどうかだ」


 半人半幻想獣となった稲葉清美のように、正式な魔術師になった後にマリネイラに傾倒するようになる事例はある。だから先程捕縛された2人のように軍に中にバングルのような金星の虜が紛れ込んでいる可能性はある。


桜音(おういん)君にも一応は忠告してあるんだけどね。情報漏れてないかって」

「間違いなくいるだろ」


 しかしかなり空地家に近い側近クラスでないと幻想獣の封印場所は知らされていないハズだ。ただ、バングル関係者かどうかは解らないけれど、いる事には間違いはなさそうだ。


 それに今回のようなこともある。こうなったら軍も調べないとダメだ。


「また妙な連中もいやがるし、バングルとやらも滅んでねえから、警戒は続行だな」


 何せ、伽里奈(アリシア)が返してしまった一つもまたどこかに封印するだろうし、しばらくは油断出来ない。幻想獣の能力はこれで5分の3に弱体化したので、残りが揃っても浄化が進んでいる事も加味すると、封印前の全盛期から比べると半分以下の能力くらいにはなっていそうだが、残りを開放すれば大きな被害は出る。


 このまま封印するのか、どこかで処分するのか、はやいところ後者で結論を出してくれると有り難い。


「解析もまだ残ってるし、早く帰ろうぜ」


 作戦も無事に終了し、霞沙羅達は一路横須賀に戻ることとなった。


読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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