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とりあえずの処分 -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 厄災戦後に新しく作られた、丹沢山地にある兵器や魔法の実験場で幻想獣の処分が行われる。


 周辺には住民もおらず、キャンプ場などのレジャー施設もない山の中なので、何が起きても問題は無い。


 軍専用の林道を通って、軍用車が実験場に集まっていく。


「周りは山で囲まれてますね」

 車から降りた伽里奈(アリシア)はすぐに周辺の確認を行った。


 丹沢山中の山と山の間に整備されたここは周囲には森と山しか無い。そんな迷惑のかからない場所を造成して作られた平地がこの実験場だ。


「ここは安全でいいだろ」

「でも富士山の所に広いのがありませんでした?」

「あそこは周りから見えるだろ」

「今回は見えてはいけない作戦だから、人の目がないここが具合がいいよ」

「早いところやってしまうでありんすよ」


 霞沙羅と榊と吉祥院の3人はそれぞれの専用武器を持って準備運動を始めた。霞沙羅は長刀、榊は日本刀、吉祥院は長い杖。


 衣装については3人は自由なので、吉祥院と榊は愛用の袴姿。ただし足下はブーツ。


 霞沙羅はアシルステラに着ていく戦闘服の改良版で、上半身はあまり変わらないけれど、下は白いレギンスのような、ピッチリしたパンツにブーツだ。


 よく見ると上着の裾が長くなっていて、コートのようになっている。


 周囲にいる軍人達には、霞沙羅達には到底敵わないとしても、魔術師も神官も混ざっているので、万全の体制で臨んでいる。


 それでも伽里奈(アリシア)は愛用の魔剣を持ってきた。


 広場の中央部では、3人が幻想獣を処分するその周辺を、幻想獣が逃げ出さないように結界を張る準備が始まった。


「3人でやるのも久しぶりだな。この6年は大きい事件も少なかったし、私も北海道に行ったからな」


 3人が揃っての作戦だというのに、周囲にいる軍人達はちょっとソワソワしている。


 この危険な作戦への緊張感かと思ったら


「大佐と中佐の戦闘がこんな間近で見れるとは」

「やっぱ立ってるだけでも違うよなー」


 3人の英雄が揃っているので、その戦闘を見る事が出来ると興奮しているだけだった。


「気楽だなー」


 それほどまでにこの3人に安心感があるのかもしれない。実際厄災戦が終わってからもそれぞれが能力を磨いているというから、6年前よりも腕も力も上がっている。


 大きな事件でも発生しないとこの3人の実力を見ることは出来無いから、現場に立ち会えた期待も高いのだろう。


 それはそれとして伽里奈(アリシア)は独自に警戒を続ける。


 ここに来る道は一本しか無い。今の所はここに向かっている車両は無いし、林道をつけてきている人もいない。


 後は、登山道は無いけれど、山を歩いて近づいてくるようなのもいないし、元々潜んでいる人間もいない。


 空中にも飛行物体はいないし、妙な反応のある鳥もいないし、虫もいない。


 地面には何か仕掛けられているような事も無い。


「今の所安全かなー」


 結界の準備も完了して、頑丈そうな箱から、厳重に保管されていた、伽里奈には見覚えのある箱が2つ、取り出された。


 周囲にいる兵隊達からも緊張感が増した。これから戦いが始まる事が目に見えるからだ。


 箱は戦場となる結界の真ん中に運ばれていく。


「やっぱりここだよねー」


 伽里奈が待った瞬間がやってきた。


2人の兵隊が箱に向かって走り出したところを


「{地昇撃(ちしょうげき)・乱}」


 土がむき出しの地面が柱のように伸び、2人の顔面を打ち、そのまま五、六発全身に当てて、空中に浮かび上がったところを、伽里奈(アリシア)の魔剣の黒い刃を鞭のように伸ばして、2人の体を拘束した。


「それは手に取らないで」


 地面からの打撃を受けて2人が取り落としたダガーを拾い上げようとした兵士がいたけれど、伽里奈(アリシア)がそれを静止させた。


 すすきので今林三人兄弟が手にしていた杖、それと駐屯地で出会った少尉のサーベル、以前の横浜での事件にモートレルでの偽アリシアの剣、恐らく全てが繋がっている武器と同じ物。


 持っている人間にこの魔装具に登録されている人間の人格や戦闘能力を上書きする能力がある。


 伽里奈(アリシア)は地面に落ちたダガー2本を結界で封印すると、魔剣で拘束した2人を見に行く。


「どうしてこういう人達って律儀に持ってるんだろうねー」

「この2人がどうしたんだ?」


 突然のことに動きを止めていたけれど、2人の上官らしき人間がようやく動いた。


「バングルって集団がいるじゃないですか。彼らは普段は普通に市民に紛れて生活をしているそうなんですけど、互いに仲間だって事を伝える時用にバングル、つまり腕輪をつけてるんですよね?」


 伽里奈(アリシア)は先日の横浜で警察から始めて教えて貰ったのだけれど、「金星の虜」の一派の特徴だという。


 日常生活ではしていないようだけれど、会合や作戦の際にはつけていると聞いた。


 袖に隠して見えないようにしていたけれど、伽里奈は見ていた。


 ダガーの方は魔力を隠す鞘に収められていて術式は解らなかったけれど、この中で何人かは高い階級で自分でオーダーした魔装具を持っていたので、ずっと気にしていたのだ。


 対幻想獣担当の隊員ではない、応援でやって来た一般的な部署の隊員が動き出したのには驚いた。


 2人のダガーは階級的には支給品のはずだが、どこかで細工をしたのだろう。でも支給品を持ち出せる物なのだろうか?


 札幌駐屯地の事件まではいわゆる妖刀的な、持ち主では制御の効かない魔装具だった。その次の今林兄弟が持っていたのは、焼かれてしまったけれど、あの短時間での探知で持ち主の制御が効く作りに変わったと感じたので、タイミング的にはここだろうなー、と注意していた。


「君らの幹部は灰になっちゃったから、もうここしかタイミングがないもんねー」

「いつから入り込んでいたのだろうか」


 伽里奈(アリシア)が魔剣での拘束を外すと、他の兵士達が代わりに拘束をした。


「途中からバングルになったんじゃないですか? 最初は真面目に学校を出て、軍に入ったけど、マリネイラの生み出す幻想獣に強さへの幻想を抱いたんじゃないですか? 強い力は弱い心を引き寄せますよ。誰も彼も一人でやってるわけじゃないのにー」

「とにかく、この2人は連れて帰り、後で尋問だな。ありがとう、伽里奈君」

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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