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とりあえずの処分 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 翌日には霞沙羅が帰ってきた。


 軍の上層部の方で、集まったパーツの処分方法が決まったのだそうだ。


 まずは温泉でひとっ風呂浴びてから、霞沙羅は伽里奈(アリシア)を自宅の方に連れていって、これからやることの説明を行った。


「軍が回収した2つのパーツは実験場で開放して私ら3人が処理することになった」

「寺院庁には返さないんですね?」

「返してまた盗まれる危険性があるなら、全部で5個あるパーツの、軍が手に入れた2個を破壊して、復活した際の弱体化を行った方がいいと判断された」

「まあそうですよね。ボクが返しちゃった分のを含めた3つは引き続き寺院庁で管理するんですね?」

「そうだな」


 寺院庁、ひいては空地家の側近達に密告者ががいないか確認が行われている最中だ。それについては警察も入れて、入念に調査にあたっている。


「処理についてはいつまでも軍で持っているわけにはいかないから、各所で調整してこの数日内で行われる」

「それでボクは何をすればいいんです?」

「処理をするのは私と吉祥院と榊の3人、実験場内や周辺の警備は軍がやる。お前にやって貰いたいのは警戒だ。バングルという、お前が捕まえた2人とあの半分幻想獣女が所属しているグループが奪取に来る可能性がある。当然、軍も警戒は行うが、お前の勘とか危機管理能力を借りたい」

「はい」

「当日は何でもいいから、お前が気になった事があれば周囲の人間に報告しろ」

「解りました」


 どこでやるのか、いつやるのかは、実は決まっているのだが、当日まで伽里奈にも伝えない。


 伽里奈が漏らすような事は無いだろうが、念のため、外部の人間なのでもう少し待たせることにした。


 多分解ってくれるだろう。


「はぁー」


 言い終わって霞沙羅は溜息を漏らした。


「これが終わればしばらくは何もないだろう。通常業務に戻れるな」


 年末年始だからといって軍が冬季休暇になるわけではないけれど、そこは気持ちの問題。静かな年末年始を送りたい。


「あの四角い石は解析したんですか?」

「今、警察と軍の両方でやってるよ。それとあの半分幻想獣女が槍と腕輪を持ってやがった。あれはまたこの後横須賀に行って解析の続きをするんだが、水瀬カナタとかいう人間の制作物のようだぞ」

「またですか」

「軍でも注意はしておくし、お前も注意はしておけ」

「はーい」

「じゃあよう、ちょっと昼寝してから戻るから、軽く足裏やってってくれねえか」

「はーい」


 折角ごねて札幌に転属したってのに横浜の仕事かよ、と心の中で愚痴りながらも、多大な戦果をあげた人間が軍に居続けるのならこうもなる。


 せめて今は頼りになる弟分のマッサージでも受けて、気持ち良く一寝入りする事にした。


  * * *


 「青い槍」「他の構成員人間とは違う腕輪」「幻想獣を固めた石」の3つが軍の手に入った。


 見たところ魔力が籠もっているのは腕輪と石の2つ。


 槍は半分幻想獣と化した稲葉清美が持っていたくらいだから、なにがしかの魔剣かと思ったら、いわゆる良質の武器だった。これ自体には何の力も無い。ただ、霞沙羅から見ても武器単体としての

出来は素晴らしい。正直参考にしたいくらいだ。


 魔剣ではないし、知り合いでも、霞沙羅の頭の中に記録されている鍛冶の作りでは無いので、誰が作ったのか解らない。銘のようなモノも刻まれていない。


 ただ何となく、これも水瀬カナタ製ではないかと思っている。


 これまでの水瀬カナタ製の武器はいくつか触ったけれど、単純な武器の出来としてここまでの物は無かった。込められている術式は出来が良いモノの、ガワとなる武器自体はちょっといいくらいだった。


 でもこれは出来が良すぎる。手にすれば榊も気が付くだろう。


 悪い奴じゃ無かったら、今の霞沙羅でもその門を叩きたいところだ。


「どうしたでござる? その槍はただの武器ではござらぬか?」

「榊に持たせても解ると思うが、槍としての出来が良すぎるんだよ」


 素材の方は極端にいいわけではないので、武器としては霞沙羅の長刀の方が強い。ただ、持ち手のことをよく考えました、という職人のプライドを感じる。


この辺はさすがに吉祥院では理解が出来ないので


「槍のレポートは霞沙羅に頼んで良いでありんすか?」

「そうだな」


 ヤマノワタイにある本家の人間の工房を見て、一度流派の話を聞いてみたい。どういうコンセプトで作っているのだろうか。


「純凪さんに頼んでみるか」


 何のギミックも無いけれど、レポートは書こう。軍や警察でどう取り上げられるかは解らないが。


「そっちはどうなんだ?」

「腕輪は一つの体を二つある精神のどちらが支配するかを制御するものでありんす。どう合体させるのかの部分は私の魔法で焼けてしまっているでやんすが、ともかく、人間と幻想獣を一つにして、人の時は幻想獣の精神がこの中に、幻想獣の時は人間の精神がこの中に入るようになっているでありんす。すごい代物でやんす」


ちょっと火力が高すぎたかなと、吉祥院は反省している。


「まあウチらは幻想獣を殲滅するのが第一だからな」


 いちいちドロップ品のことを考えて戦闘するとかやってられない。


 伽里奈(アリシア)はやってのけるだろうが。


「もう半分の機能は解ったわけだし、良しとしよう。もう一個は?」

「これは完品でやんすから」


幻想獣を圧縮した石。今の所は伽里奈(アリシア)が封印した状態で解析している。封印といっても外部からの衝撃の殆どを遮断するように出来ているだけだから、研究には大した支障は無い。


「被るようにくっついてるダミー術式がこっちの人間に見えちゃったら説明がいるけど、訊かれなければ黙っているでござるよ」

「…アシルステラのかよ」


 霞沙羅も解るが、アシルステラでいうと水を放出する魔術が地球の、幻想獣を固定する魔術に被さるように巧妙に刻まれている。


 でも水の魔術はアシルステラに持っていっても決して動くことは無い。魔術基板としては完成していないのだ。


 これはあくまで幻想獣を固定する魔術。しかも互換術式まで取り付けられている。


「伽里奈にも伝えておくか、隣の国にドラゴンの幻想獣が出たっていうしな。まあこれをそのまま持っていってるんだろうよ」


 どうやって移動しているのかは解らない。


 ただ、持ち運んでいるのであればこれしかない。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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