インターバル -4-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
異世界人なのか、異世界の技術なのか、とにかくどこかの時代に異世界との繋がりのある情報が無いか、学院の図書にないか、ボチボチ探していこうと思う。
図書館自体に蔵書の数も多いし、アリシアはあまり長時間フラム王国にはいられないので、探すにしても結構時間はかかるかもしれない。
それにしても「異世界の話」とはどう探せばいいのだろうか。さすがに大系だった本でも無いだろうし、研究レポートでも無いだろう。なら魔術師達の日記的な記録でもないかと棚を探し始めた。
「ルビィみたいなのもいるからねー」
冒険譚という程ではないけれど、本人や、同行した偉大な師匠の足跡を綴った活動記もあるし、学院が編纂した偉大な魔術師の記録書もある。天望の座に所属したような賢者であればそういう書籍は存在する。
「うーん、とりあえず年代の古い人かな」
前期以前の文明の偉人もある。そちらは記録が少ないからか、何冊かに纏められているのでそこからあたることにした。
ただとにかく時間が無い。一時間程度読み進めたところで今日は中断し、ヒルダの屋敷に移動した。
* * *
「早速来てるしー」
簡易転移装置が設置されて一人で転移出来るようになったので、イリーナが来ていた。
「その為に作ったんでしょう?」
「そうだけどさー」
騎士団にもオリエンス教信者も数名いるから、聖騎士イリーナが頻繁にモートレルの町に来られるようになって喜んでいた。ひょっとしたら稽古もしてくれるかもしれないという期待もある。
一番喜んでいるのはこのところかつての仲間との鍛錬の機会が増えているヒルダだけれど。
「とりあえず温蔵箱を見せて貰うよ」
学院に行く前に自家製チョリソーを挟んだ小さなホットドッグを温蔵庫に仕込んでいったので、まずは動作具合の確認のために厨房に行った。
「船に乗せるなら火事の心配もなさそうだからいいわね」
火は使っていないし、温度もそれほど高くない。熱も外に漏れないので火事にはならない。ただこれ単体では料理は出来ない。あくまで暖かい状態で料理を保管しておくだけ。
蓋を開けてホットドッグの入った容器を取り出した。
「これはいいわね」
数時間入れておいたけれど、ホットドッグは温かいまま。それだけでもアシルステラの人には有り難い機能だ。
「後はちゃんと食べられるかだけど」
「どういう事?」
「水分が抜けすぎたり、温度を間違えて焦げちゃってないかって事」
イリーナも加えて、多めに作っておいたホットドッグを皆で食べる。バターロールで作ってあるので、小さめだ。おやつには丁度いい。
「ソーセージが辛めで美味しいわね」
「へー、シンプルな作りだけどいいわね」
「ちゃんと食べられるねー」
想定した温度が保たれているから焦げることはなかったし、水分も抜けていない。これなら今度船に積んで貰っても大丈夫だろう。
「個人的には冷凍箱を売って欲しいけど」
「あれは皆に言われてるよ。用途は違うのに」
冷凍箱は魚の冷凍品が遠方に運べるように大きいのを作っていきたい。ただ、アイスクリームのインパクトが大きくて、アイス製造箱としての需要が高いので、本来のモノとは別に作らないといけないかもしれなくなってきた。
「じゃあイリーナには霞沙羅さんのメモを渡しておくよ」
メモというか小冊子になってしまっている。湯ノ花採取の為に、必要な資材だけで無く、最終的にこういう施設を作るというところまで描かれているからだ。
「なにそれ?」
「セネルムントの温泉から、今まで捨てていた温泉の成分を粉にして取り出す事になったのよ。それを霞沙羅さんが提案してくれて、その準備をするの」
「あの人すごいのね」
「日本ていう国は温泉が好きだから、同じ事をしてる場所があるんだよ」
「でも先に国王様や前王様に渡したいわね」
「普通に出来上がるまでには時間がかかるからねー。サンプル品として、魔術を使って作れるから、それを渡しておく?」
「教皇様に相談するわ」
説明した時に霞沙羅が作った粉は神官達が湯ノ花の検証をするために普通のお風呂に入れて半分くらい使ってしまった。折角なので早めにお試しで使って欲しいので、何回か分は渡しておきたい。
多分アリシアも霞沙羅と同じ事が出来るだろうから、方針が決まったら依頼しよう。
「そうアーちゃん、さっきギャバン教の神官さんが来て伝えて欲しいって事で、ブリッツっていう町の側で魔族の研究施設が見つかったそうよ」
「そんなところにあったんだ」
「魔族は逃げたから行方を追っているらしいけど、研究所から回収された備品なんかを、ザクスンの学院で分析しているそうね」
「逃げちゃったのは残念だけど、進展はあったんだね。でも逃げたんならフラム王国も一応警戒しないとね」
「パスカールの領地は国境に面してるから、この後どうするかお父様と相談ね」
逃げた後にどこに潜伏するか解らない上に、ザクスンとは国境で面していて地続きになっているから逃げてくる可能性はある。
「あれ、魔術師はどうなったんだろ?」
「魔術師と魔族が同一人物だそうよ、調査隊の目の前で変身したっていうから」
「じゃあちょっと前にモートレルの森でやらかしたのも魔族なのかな?」
それにしてもそこまで高度な技術を持った魔術師ではないと思われる。
「その後魔族と一緒になったのか、喰われたのかもしれないわね」
「それは教皇様にも報告するわ」
「その方がいいわ。国王様にはラスタルの神殿から連絡が行っているそうよ」
ザクスンと地続きなのはフラム王国だけではないけれど、警戒はしておいたほうがいいだろう。
それとこの二人にも水瀬カナタと舟形アオイの情報を渡しておいた。
世の中何が起きるか解らないから。
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