インターバル -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「私はああいう場所じゃダメなのね」
やどりぎ館に帰ってきてシャーロットがちょっと落ち込んでいた。
伽里奈の側にいて事件現場に居合わせるのはこれで二回目。怪我をすることは無かったけれど、二回とも結界を張って身を守るだけだった。
「でもまだ戦闘の訓練とかちゃんとしてないでしょ?」
伽里奈は2人分のココアを持ってきて、ソファーの向かいに座った。
ココアを受け取ったシャーロットは一口飲んで、落ち着いてみた。
ロンドンではVRの授業は受けていると言っていたけれど、確かにそれでは実戦経験とは言えない。
最近は伽里奈や霞沙羅から杖での戦い方を習ったりはしているけれど、その程度。
でもそれが悪いとは伽里奈には思えない。
「伽里奈は何歳から戦ってるの?」
「ボク? ボクと比べてもねー、王都って言ってもちょっと城壁の外に出れば危険もあるような世界だから。学生時代から、例えば実習での素材の収集とかも安全ってワケじゃ無いから、命がけな所があるよ」
「じゃあ10とか11とかでももう?」
「入学したのが10才だけど、そういうので町の外に出たのはその前の、教えて貰ってたお師匠さんと一緒に9才くらいかなー」
「ちょっとそれは…」
正解の違いと言えばそうだけでど、あまりにも若すぎる。それは達観しているわけだ。
「シャーロットはもう戦いたいの?」
「そ、そういうわけじゃ無いけど、でもなんか伽里奈の邪魔になってそうな感じで」
敵というかトラブルの原因が来ればすぐに「結界張って」と言われている。魔法は一通り習得しているから、攻撃だって問題無く出来る。実際のところ、幻想獣の幼態程度なら一撃で倒せてしまえるだけの実力はある。
「一ノ瀬さんの時は、怪我人の治療もあったから、ロンドンでも何回か幻想獣との遭遇経験があるみたいだから頼んだんだけどね。大分落ち着いてたし、反応は良かったとは思うけど」
「今日は?」
「急だったし、それにシャーロットはまだ正式な魔術師じゃないから外では基本的には魔法は使えないでしょ?」
「まあ、そうなんだけど」
「あんな場面だったけどシャーロットは冷静に対処してくれたと思うよ。そうじゃなかったら頼まないでボクが結界で閉じ込めるところだからね」
「う、うん」
ある程度は自分の魔術の腕を信用してくれているという言葉には、シャーロットもちょっと嬉しそうにした。
「急にそんな事を思っちゃうとか、一ノ瀬さんと藤井さんを見ちゃったからかな? それともアンナマリーの話しを聞いたりしてるからかな?」
「それは、両方あるかも」
自分の方が優秀なはずが、ちょっと年上の人達とはいえ、自分の周りにいる同世代の人達が戦っていて、自分は出来ないというのが情けないというか、そう思ってしまった。
「一応色々ルールがあるから、学生が率先して戦いに首をつっこむのは推奨出来ないけど、学生時代の実践の準備もまたシャーロットの大学に行ってからのテーマにすれば良いんじゃない?」
「伽里奈は、学校授業の事で、そういう事に手を出そうとか思ってないの?」
「思ってるよー、ただそれは今の所、一ノ瀬さん達みたいな家業で寺院とか警備会社とかやってる人向けかな」
「え、え、どういうの、どういう事をやる気なの?」
シャーロットは自分のことを忘れて、伽里奈の話に乗ってきた。
「VRはボクの世界でも持って行きたいって思うんだけど、もう少し現実に寄るのが必要だと思うんだ。あれじゃ、ただゲームをやってるだけで、遊びだよね」
あれは遊んで戦いを意識するという目的もあるけれど、チームプレーの勉強の色が強い。それに個人的にちょっとお金を出せば、あんな感じのゲームなんかいくらでも手に入れることは出来る。
「やっぱりゴーレム?」
「それもあるけど、壊してもいいモノで考えてるよ、お金無いし」
「私も参加したい」
「色んな人が使わなきゃならないから、色んな人に試して貰いたいし、日本以外の人の文化も欲しいし。だからそれまでにシャーロットにはアンナとか、一ノ瀬さんとか、ちゃんと戦いに出向いている人に、気持ちを作る方法とか、聞いてほしいな。ボクとか霞沙羅さんは現場に慣れすぎちゃってその辺の感覚が麻痺しちゃってて、参考にはならないからね。普通は怖いハズなんだよ」
「アンナってでも、騎士の家っていうプライドとか育ちっていうのがあるじゃない」
失礼ではあるけれど、シャーロット目線では自分より弱いと感じていながら、毎日モートレルの騎士団での仕事をしているから、アンナは慣れているモノだと思っている。
いざという時は民衆の楯になる、というのが貴族の育ち方だったのかな、と。
「平民と違う育ち方もあるけど、アンナも一回、シャーロットが来る前に結構な挫折を味わってるからねー」
「え、そうだったの?」
「すごい怖い目にあってねー、あまりにも何も出来無くてそれが悔しかったみたい。それからボクと霞沙羅さんの言うことを聞くようになったねー」
騎士を目指しているのに神聖魔法の習得に力を入れいているのは知っているけれど、理由はあったんだ。
「だから、それぞれの人がどういう考えで動いてるのかって、聞いてもいいかもね」
「うん」
「13才の子に言うのもなんだけど、大学でのテーマもあるだろうから、今はまず卒業レポートを優先して、その後の準備をしていこうね。高校の卒業が確定して大学に入学するまで結構時間があるんでしょ?」
「ええ、そうよ」
今行っている卒業試験がそのまま大学への飛び級試験でもあるので、3月には結果が出て入学する6月まではまだまだある。とりあえずは卒業試験を大事にして、大学でやるべきテーマを決めて、準備だけにしておこう。
そして準備期間中に伽里奈の冒険話や、霞沙羅の軍での話しを聞かせて貰って、アンナマリーにも貴族のことを教えて貰おう。
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