それぞれの対応 -6-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
期末テストももう間近に迫り、直前になれば自分達で勉強する、という中瀬達との付き合いはもう今日で最後。
今日はシャーロットも付き合ってくれているので参加人数も多い。
シャーロットはホールストン家の人間として、ある程度の魔術レベルであれば何も教える必要もなく体で覚えていたような子供だったので、1年E組に来てからは今まさに勉強を始めましたという普通の生徒に興味を覚えた。
だから教育論のレポート作りもあって、中瀬達にどうやって教えればいいのかの勉強もしていた。
上では無く下を見る勉強だったけれど、いずれやって来る「人に教える日々」に向けて、伽里奈の手を借りながらこれまでとは別の勉強を始めている。
この辺はルビィや吉祥院も見習って欲しい所ではある。
「教えるっていうのも難しいのね。人によって得手不得手もあるから、教え方の選択肢も増えてくるし、いい勉強になるわ」
ここ1ヶ月以上、教師が何をやっているのか、教科書をどう解釈しているのか、生徒が何を苦手としているのかを見てきたから、色々とメモも取ってきた。
「直接向かい合って話が出来て良かったわ」
「もー、シャーロットって天使」
シャーロットが見てくれたクラスメイトも、テスト前の苦手部分の最終確認が出来て良かったようだ。
あとはテストまでに残された時間内で自分で解決する。
「すごい家から、年下のすごい子が来るって聞かされた時は大丈夫かなって思ったけれど、あっさり収まっちゃったね」
早藤が一番気を使ってくれていたのもあるけれど、シャーロットはとても良い子だったのが大きい。
「2人共期末テストを受けなくていいのが恨めしいがな、ははは」
「テスト期間中は2人はどうするの?」
「シャーロットのレポート用に横浜校と神戸校の施設を見に行くんだよー」
「高校の設備って、他2校とここって差はあるのかしら?」
「神戸校は知らないけど、横浜校はやっぱり設備の更新も多いし、機材も多いかな」
「おう伽里奈もちゃんと見てこいよ、俺達のためにさ」
「ははは、そうだね」
お金が無いなら、魔術でカバーするしか無い。でもまあ何が足りないのかは見てこないとダメだ。
名目上はシャーロットの見学だけど、伽里奈もこの機に乗じて見せて貰うことにしよう。
* * *
「のう小僧や、ひとまず我の土地に料理をもたらしたのは感謝するが、次は何か無いのか?」
フィーネの世界に行った後、時間を見て、カレーライスとカレーうどんとジャンバラヤとタコスをセネスタ王国に持っていった。
ライス系は普通に食べている土地だったので量が作れて出すのも楽なカレーライスは喜ばれた。それに味が強めで辛めの料理だったので、日々の戦いに疲れた戦士達には好評だった。
でもまだ砦周辺での戦いは続くから、もうちょっと持っていってくれないかと、邪龍神ネルフィナ様にせがまれている。
邪龍神もとい、フィーネがまたトカゲを放って、人間社会にどういう料理があって、どういう食材があるのかは教えて貰っているけれど、まだ互換性を検証している所。
「中華系はどうなのじゃ? 粉モンでもよいぞ」
「中華系は、香辛料とか調味料の互換性ですかねー。アシルステラでもまだ悩んでますからね」
今日はジャンバラヤに自家製チョリソー、それと目玉焼きにサラダとスープの夕飯。
これはアシルステラでも出来そうだなー、と思っているけれど、中華は饅頭とか餃子とかお粥はどうにかなりそう。ちょっと味は違うかもしれないけれど。
「小僧らが行く横浜も神戸も中華街があるであろう? 記憶から何か抜け落ちている物もあろう。今一度見てくるがよい」
「中華街は、横浜の方には行きますよ。あんまり時間は取れないですけど」
「よいよい。軽く見てまいれ」
「外で中華料理は食べてみたいわ」
シャーロットも話しに入ってきた。
「中華街もなー、最近は食い放題の店ばかりが増えて気軽に色々食べられるようになったが、本当に美味い店は減ったな」
「それでも体験という意味ではいいと思いますけどねー」
こういう料理がある、という事を知るには食べ放題は悪くないと思う。
「なんだけどな、リピーターだよな。昔、ウチの家で贔屓にしてたそこそこ高い店があったんだが、流れに負けて食い放題の店になった」
「地元民には辛いところじゃな。まあロンドンの小娘は北海道ではない日本を色々と体験してくるがよい」
「はい」
行く場所を決めたハズのシャーロットはまだ観光雑誌を読んでいる。北海道ばかりではなく、日本の他の地域を見るのも留学生の特権だ。勉強もいいけれど、適当に肩の力を抜くことも重要だ。
* * *
こちらはまたもや横浜市中区の小さなお店。
真面目に作ったアクセサリーは今日もボチボチ売れているしリピーターも来店している。
このアクセサリーを使って…、という事は全く考えていない。表上は真面目にやっておくことが拠点として長く使う秘訣だ。
「今回は楽に奪取したわけですのね」
一つ目は失敗してまたどこかに持って行かれてしまった。そして二つ目は今、稲葉清美の手の中にある。
今回は妙な妨害は無かったから楽だった。
「人目につかないいい場所に封印したのはいいけれど」
二つ目は静岡県は大井川の奥地。鉄道路線が終点となるさらに先に封印されていた。
寺院庁は常時封印をモニターもしているし、防衛のための転移も出来るようにしているけれど、今回は特に強敵が出てこなかったので、エージェント達は今回も返り討ちにした。
「この体はいい」
「槍はどうですの?」
「ええ、ここまで体に馴染む武器は初めてだったわ」
「そうですの、それは良かった」
今回のカナタは槍の方が重要なので上手く使えたのならいい。
「奪ってきたその箱はどうするんですの? どうもあなたは指名手配をされているようなので、持ち歩かない方がいいのでは?」
「それは解っているわ」
先日の札幌で追っ払われた事が絡んでいるとは思っているけれど、こんなにあっさり指名手配がかかるとは思っていなかった。
まさか迎え撃った伽里奈が撮影をしていたとは気が付いていない。あの時霞沙羅が仕掛けておいた魔工具は、本来カナタかアオイを撮影するための物だったけれど、意外な活躍をしてしまった。
「一旦良さそうなところに保管してからバングルの仲間に預けるわ」
バングルはマリネイラを奉る人間が集まった組織の一つ。稲葉はここの幹部の一人だ。
奪取したパーツは後日会う仲間に託す手筈になっている。
バングルとしても、寺院庁から見つかりにくい場所に保管して、幻想獣を復活させるその日を待つ事になる。
「それで次は?」
「気が早いですわね。場所はここから近いですの。ただ正確な場所を特定するにはもう少し時間を下さいな」
「近く?」
「海の向こうにいる、犬の脇腹くらいの位置ですか」
「面倒なところにあるのね」
「英雄2人が近くにいるのと、千葉県警が追ってますしね」
「計画を練らないと」
「組織にはテリトリーがありますから、軍が出ないように調整すればいいでしょうね」
幻想獣を沢山出すと軍が出てきて下手をすれば吉祥院と榊も出てきてしまう。
なら、陽動してはちょこちょこ出して、警察の仕事にしてしまえばいい。実際陽動なのだから、欲張ってまで町に被害を出す必要は無いのだから。
日常的にありそうな事件を演出すればいい。
パーツを取りに行く側には寺院庁は出てくる。これまで楽勝だったけれど、いい加減そろそろ対策も立ててくるだろう。そこをどう見るか、カナタの仕事では無いけれど。
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