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それぞれの対応 -4-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「アーちゃんよ、学院にもまだやって貰うことがあるゾ」


 一旦学院へ戻ってから、ルビィの部屋に帰ったから、アリシアの記録盤(デバイス)をひったくられた。


「結局これはどういう機能が追加されているんダ?」

「タウ様から頼まれた?」

「まあそんな所ダ。アーちゃんがなかなか開示してくれないから、皆痺れを切らせている」


 言ってみれば持ち運び出来る書籍。単なる研究データの収納機材でしかないこの記録盤(デバイス)だけどアリシアがつけた機能は魅力的だ。


「学院の機材に繋がらないからこっちもちょっと困ってるけど、ザクスンの件とか料理の事とかあるからねー」

「いやまあそうなんだガ」


 この記録盤(デバイス)は基本的にはノートのような物で、使い手がその思念で書き込んで、授業や講義では専用の投影装置で、プロジェクターのように映し出す物。


 本体には液晶画面のように、クリスタルで作られた画面があって、文章内容はそこで確認する事が出来て、修正する際はまた思念で行う。


「これだと見せにくいから」


 アリシアはまず本体だけで大きく見せる投影機能をつけて、それをやや小さくして多人数に見せる機能をつけた。それからいちいち思念で編集するのが面倒なので、投影機能を応用してそこで手描きで編集をする機能もつけた。


「もう別物になっていないカ?」

「だから一気に教えられないんだよー」


 それから撮影機能をつけて、記録容量の拡張と、外部メモリー的なカードを使っての拡張、それと本体の出力上昇と、外部魔力供給装置との接続による多人数ディスプレイ機能の拡張。


「なんで変なカードが刺さってるんダ?」


「記録容量の拡張と、他の人への移動用かな」


 現在の移動方法は、他人の記録盤(デバイス)を見ながら、自分の記録盤(デバイス)に思念で書き込んでいる。


「どれが悪さしてるんだろうねー。ここに帰ってくるとか考えないで色々つけたから」


 見た目はあんまり変わっていない事に誤魔化されて、ルビィもここまで別物になっているとは思っていなかった。


 一応やや厚みが増している。


「霞沙羅さんも手伝ってくれたから。それで霞沙羅さんも地球用のを作って、それと情報のやり取りが出来るんだよ。お互いの魔術の勉強用にね」

「と、とにかく、早く情報を開示するんダ」

「どの順番にする? 学院で決めて欲しいなー」

「む」


 一個一個機能をつけないと何が悪いのか解らないから、順番にやっているわけで。


「じゃあ今聞いた機能を伝えて、順番を決めて貰ウ」

「はーい。それとこの前教えた野菜の皮むきの件はやってるの」

「あれは何か面白いから、毎日何かの野菜か果物でやっているゾ」

「それならいいけど」

「他になんかないカ?」

「弱いゴーレムを作るとか」

「何でわざわざそんなモノを作るのダ?」

「生徒への演習用だよ。ここだと砂か石のゴーレムになるだろうけど、あれも調整するの大変なんだよ。壊れないとダメだけど、簡単に壊れてもダメだし。教育だからね、生徒達に目標を与えて、目に見える達成感を与えるためのゴーレムだからだよ」

「そういえばアーちゃんは向こうの教育にも関わっているんだったナ」

「まあそれはまた今度ね。今日は館にシスティーがいないからそろそろ帰らないと」

「砂糖の生産量増加カ。星雫の剣が畑仕事に役立つとは思わなかっタ」


 まあでも来年はどうなるのか楽しみだ。砂糖の流通量が増えればアリシアはもっと美味しいモノを持ってきてくれるだろう。


「じゃあまた来るねー」


  * * *


 先日から霞沙羅と吉祥院の2人で密かに研究していた「対マリネイラ神」用の、いわゆる対幻想獣用の神聖魔法が形になってきた。


「アリシア君が書いているとおり、確かめる機会が少ないのが欠点でありんす」


 攻撃と防御の両方とも、その他の例えば人間の魔術師に対しては全く無効ではないけれど、使い方が限定される。


 だから試験をしようにもいまいちその効果が正しいのかどうかは解らない。


「まあ動いているんじゃねえのか?」


 魔法の起動自体は確認した。2人とも専門では無いけれど、ある程度の神聖魔法は使えるから、それは間違いない。


「我々がやるしか無いでござる」

「実際、私らには必要がないが、軍全体の問題だ。お前か私のどちらか先に現場仕事があった方が実験するという感じだな」


 この2人なら幻想獣の成長態程度なら楽勝だ。ならついてきた部下に付与するのもいいし、試験として札を作ってもいい。


「事件の発生待ちだな」

「私は旧23区を確認しに行く予定があるでやんす。あの探知機の運用確認をするだっちゃ」

「じゃあお前が先になりそうだな」

「ふふふ、任せるがいいダス」

「半分幻想獣人間も追っ払ったし、あいつそろそろ昇格させてやれよ」

「その予定でありんすよ。アリシア君の持ってきたデータは協会も注目しているであります。警察を通して犯人も特定出来そうだっぺ」

「空地家もこっちに情報を出せってんだ」

「見事な失態でヤンス。それにしても封印場所は急にバレるモノでござるな」


 吉祥院がトップどおしでちょっと聞いた結果、一度も封印場所は変えていないと言われた。それを急にピンポイントで見つけられて、ひょっとすると他のパーツもバレているんじゃないかという予測がたっている。


「9人も殺された相手が狙ってんだろ。他のがどこにあるか知らねえからフォロー出来ねえぞ」


 空地家の有能エージェントが10人も束になってかかって惨敗しているのだ。そもそも敵が1人とは限らないし。霞沙羅達も伽里奈もいない場所で同じ事が起きたら完全にアウトな気がする。


「それぞれの組織にテリトリーがあるのは理解しているが、一部分ずつで良いから協力はできんもんか?」


 ここの所、警察案件をたまたま現場にいた霞沙羅と吉祥院がメインで対処しているので、この業務テリトリーが足を引っ張っている。


「組織の意味が無くなってしまうでありんす」

「厄災戦中もそうだったが、それで事後にメンツがどうのとか言われても困るんだよな」

「そんな霞沙羅に朗報でヤンスよ。アリシア君が作った研修テキストの一部を開示して良いとのお達しをもらったっぺ」


「そうか。また道警に貸しを作っておくか」


 伽里奈はタダじゃない。軍事費を使って報酬を出して、それで出来上がった研修テキストだ。せいぜい恩を売ってやろう。


  * * *


 吉祥院から許可が出たデータを教えて貰い、霞沙羅は早速道警の本部ビルにやって来た。


 要件については来る前に伝えているので、魔獣課の教育担当が出てきた。


「新城大佐、テキストの件は本当なのですか?」

「最終的にはライブラリ管理の部署への使用許可は取って貰うがな、範囲は限定されるが」


 と霞沙羅はPCでリストを見せる。


「今持ってるのは初級編だがテキストのサンプルも見せるぜ」

「では失礼して」


 刑事達はPCの内容の確認する。


 許可リストは以前に言われていたとおり、火水風土の基本四系統の中級前半までで、サンプルとして持ってきたテキストもとても解りやすい。


 それにどういった状況ならどれが有効か、ある程度メジャーな幻想獣に対する集団での戦術まで書かれている。


「これはいいですね」

「実際に北海道で使われているし、吉祥院の監修も受けているからな」


 霞沙羅は窓口となる部署と担当者の連絡先を渡した。


「使うのならこいつに連絡をするんだな」

「解りました。ありがとうございます」


 警官からPCを返して貰い、鞄に詰めた所で


「新城大佐は一ノ瀬寺院で起きた半人半幻想獣について追跡をしていますか?」

「いや、あれは寺院庁と警察の管轄だろ」


 霞沙羅が伽里奈に持たせておいた魔工具によって、あの人間の容姿はハッキリととらえられた。


 人と幻想獣の融合は面白い事象なので、動画データは色々な組織に蒔かれたけれど、軍は管轄じゃないとして、静観することにしている。


「一応、課長からの情報です」


 と警官の一人が封筒を机の上に置いた。


霞沙羅が中を確認すると、千葉県在住の一人の人間の資料が入っていた。


「解っているだろうが、伽里奈だから追っ払えた奴だぜ」

「いつああなったかは解っていませんが、それは彼女をコンサルとして雇っていた千葉県警がよく解っているでしょう」

「解った、貰っていくぜ」


 課長の奴め、早々に恩を返してきやがった、と内心思いながら、霞沙羅は道警のビルを後にした。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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