それぞれの対応 -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
ザクスン王国では魔獣出現の情報があったブリッツの町と、その周辺の調査を行う事になった。
アリシアから伝え聞いた「幻想獣」という異世界の生物について、どうやら魔族が操っているのでは? という仮説が立ったので、プリシラ王女を中心とした一団は、最初に妙な魔獣が確認された
というブリッツにやって来た。
「町の方には特に怪しげな建物や施設はありません」
ブリッツは王都サイアンからの街道を徒歩で一日にある宿場に利用される町。
サイズとしても大きな町では無く、住民は千人にも満たない。もっと地方にある村ほどで小規模では無いけれど、住民全員を調査するにしても、そこまでは苦労はしない規模だ。
「住民はこんなものか? ここ二、三週間の長期滞在をしている冒険者のような流れ者はいるか?」
プリシラとやって来た騎士隊長が町長に尋ねる。時期的に見てそんなものだろう。
「冒険者ギルドもありませんし、冒険者が拠点にするような町ではないですから、そういった者の話は聞いていません。ただ、三ヶ月前でしたか、魔法学院出身だという魔術師が、近くの森に住むようになりました」
「どういった方なんですか?」
「エルナークという男なのですが、物静かな性格で、普段は食事の為に町に来る程度で、基本的には森の中にある家で自分の研究をしています。魔術師という事で、我々と違い魔物の知識がありまして、自警団へ討伐の指導をしてくれたり、魔物が苦手な匂いを松明に仕込んでくれたりと、とても協力的な人であります」
「その方は今もいますか?」
「いえ、最近はいたりいなかったりで、昨晩は馴染みとしている食堂に夕食を食べに来たそうですが」
「姫様いかがしますか?」
話しを聞く分には悪い人物では無さそうだけれど、古くからの住民でも無いし、確認はしておいた方がいいと思う。
「そうですね、その魔術師の家に案内して貰えますでしょうか」
王都の魔法学院出身でとても協力的な人らしいが、魔物の知識があるというのが引っかかる。勿論魔術師なので魔物の知識は必要だが、わざわざそれをアピールするものだろうか。
町に協力的な人だそうなので、疑うのも悪いけれど、一人だけ例外とするなら調査の意味がない。
プリシラ達は知り合いだという自警団の一人に案内して貰い、町からほどほどに近い森の中にある家にやってきた。
「いるかどうか俺が確かめてきます」
そのまま自警団の人がドアを叩くと、中から魔術師が出てきた。魔獣の件でブリッツの町全体を確認中だと説明すると、入室を了解してくれた。
「では見て参ります」
数名の魔術師と騎士がエルナークに招かれて建物に入っていった。
「協力的な男ですな。それであれば空振りでしょうか」
「町での評判は悪いわけではないので、その結果でもいいのですが」
「そうなると調査は振り出しに戻りますな」
しかしそんな思いも余所に、建物の中で動きがあった。小さな爆発があり、窓が吹き飛んだかと思うと、屋根を突き破って人影が飛び出して来た。
そして、中に入った騎士達が剣を手にして飛び出てきた。
「王女を守れ。奴が魔族だ!」
エルナークだったであろう人影は、体格も一回り程度程度大きくなり、背中に鷲のような大きな翼が生えている。
そのエルナークだった魔族は黒い炎を放ってくるが、神官がプリシラの前に出て
「【戦神の楯】」
神官本人もまさか覚えたての対レラ魔法を使う事になるとは思わなかったけれど、アリシアから教えて貰った対レラ用の防御魔法は、その威力を発揮して、しっかりとプリシラ達を守った。
何が起きたのか解らないが、攻撃を完全に防がれた魔族は、一瞬悩むような仕草をしたが、これ以上の抵抗をすることなく、家を捨てて飛んで逃げて行ってしまった。
「姫様、大丈夫でしたか」
「はい、大丈夫です。それにしてもお姉様の魔法が上手く働きましたね」
「はい、アリシア殿には感謝ですな」
さすが大陸を救った英雄の一人と言える。
「それでどうしたんですか?」
「研究用の机の上に、例の、金属のレラの目を持っていました」
「な、なるほど、それを指摘されて」
「ええ、それで逃走に移りました」
「お姉様とあの友人の方にはどこかの機会でまた感謝をしましょう。家の中の調査は続行出来ますか?」
「はい、多少研究物は壊れましたが、残された物も少なくはないです」
「ではお願いします」
まさかというか、やはりというか、まずはこれまでの事件に関係しているのかどうかを確認し、その解決のためにはエルナークという魔術師を追わなければならない。
とはいえ、これで解決の足がかりは得られたと言える。
鎮魂の儀のためにもエルナークだった人物を倒さなければならない。
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