年末に向けての準備 -4-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
学校の方は準備が進んでいるけれど、やどりぎ館での聖誕祭もそろそろ何を作るのかとか考えないといけない。そもそもその日に今の入居者がいるのかどうかもある。出張だったり、実家にいるかもしれない。
「アンナマリーは普通の勤務だから夕方には帰ってくる」
「そうだよ」
「シャーロットはロンドンには帰らない」
「時差があるもの」
ホントはやどりぎ館の料理が楽しみだったりする。今年だけだから。
「フィーネさんも家にいる」
「店は休みじゃよ」
占いの店を開けてても恋人同士がイチャイチャしに来るだけだから、やらない。
「霞沙羅さんは、勤務」
「夜勤じゃないぜ」
「吉祥院さんと榊さんは来ない」
「住民じゃねえからな」
「全員いるって事ですね」
他の入居者としてはユウトは帰ってる予定は無い。ということは武闘大会の結果は結構期待出来そうだ。
それと後一組。
「純凪さんのところはどうなるんです?」
「どうするんだろうな、エナホはまだガキだし、夫婦も冬に一度来たいとか言ってたしな」
ヤマノワタイにも季節は違うけれど、似たようなイベントはあるから、もういいかもしれないし、日本で生まれた子供だから、もうちょっと大きくなるまで参加をしたいかもしれない。
「だったら連絡を取ってみるわよ」
エリアスが呼ぶと言い出したので、早速純凪さんに連絡を取ると、もうしばらくしたら来ると返信があった。
少し前に霞沙羅が情報を渡した謎の2人組の情報も、今現時点の結果をくれるという話だ。
「エナホ君かわいいもの。聖誕祭の時に遊びたいな」
前回来た時に女子2人にすっかり気に入られてしまったエナホ君はまだまだ可愛い盛り。
「にゃーん」
「ネコちゃんも会いたいもんね」
「にゃーん」
アマツもエナホと仲が良かったので、「エナホ」という声に反応して、会話の中に入ってきた。
「あやつはいつまで我をおばさんと呼ぶのであろうか。だがまあなにか玩具でも買っておくか」
フィーネも思い入れがあるので、台詞とは裏腹に何かプレゼントでもしようかと、スマホで通販サイトを確認し始めた。
「一つ年を取りましたからね、ちゃんとした料理も食べられるようになっているでしょうね」
「食べる量は少ないだろうけど、大丈夫だろうねー」
待っていると、やがて裏の扉から三人がやって来た。
「いやあすまない」
「いえいえ、こっちが呼んでしまったので」
エナホ君はまだまだ住み慣れているといってもいいやどりぎ館をトコトコと歩いて、フィーネのところにやって来た。
「ふぃーねおばたん」
「この小童めが、まだ我をおばさん呼ばわりとな?」
といいつつも、フィーネは膝の上にエナホを乗せてあげた。
そして早速シャーロットとアンナマリーも寄っていって、アマツをエナホの膝の上に乗せてやった。
「にゃーん」
「ねこたん」
エナホは皆に任せておいて、4人は食堂のテーブルに座った。
「それでこっちの世界は聖誕祭が近いんですが、どうします? という話です。お二人も遊びに来たいとか言ってましたし」
「そうだね、向こうにもそれに準じたイベントはあるんだけど、季節も違うし、まだエナホにはこっちの方が馴染みがあるからね」
「外もすっかり雪が積もってるわね」
「スキー場ももう始まってますよ」
「俺達のところは殆ど雪が降らない所だからな。この庭も今は懐かしい景色だな」
エナホはすっかり人気者で霞沙羅以外の女子に構って貰っている。
「聖誕祭は招待されるか?」
「そうね。まだエナホもこっちの世界の方が馴染んでいるものね。私はスキーも行きたいけど」
「じゃあ聖誕祭に一泊くらいするか」
という事で、純凪さん一家は聖誕祭に一泊する事が決まった。
「それと霞沙羅とアリシア君の2人が追ってるという人間なんだが、ある程度の容疑者は絞れてきた。調査部署が言うには、ただ最近姿を見せないという話だ」
「まさに怪しいじゃねえか」
「そうだ。だから要注意人物として扱っている」
「どういう人なんです?」
「鍛冶の一族だよ。辿っていけば500年以上の歴史のある一族の、分家の一つだ。作る武器は本家も恐れるほどの家の人間で、今容疑がかかっているのは水瀬カナタで、魔術大学を6才で終了した」
「吉祥院より早いのか」
純凪さんのいる世界の教育機関は、ほぼ地球に準じている。だから吉祥院より3年も早く学業を終えている。
「年齢だけで全ては判断出来ないが、10代半ばまでは多くの実験レポートや論文を発表した、いわゆる世界が認める天才の一人だ」
「あいつ、本番装備じゃないが呪術を打ち消せなかったそうだしな」
「それもあり得ないことでは無いだろうな」
まだ容疑とはいえ、プロフィールだけ聞いても吉祥院が負けたのも納得出来る気がする。
「もう一人は船形アオイね。こっちもおなじ魔術大学を15才で修了していて、更にある流派の剣術を極めた子ね」
「でも2人ともそこまで解ってるんですね?」
「霞沙羅君から鍛冶としての特徴は聞いているから、まずは本家をあたってみたよ。接触があった時に仮面は被っていたけれど、千年世君からも容姿を貰っているからね。それにこの水瀬家という家は昔から悪い噂がつきまとっている」
一応という事で、2人の素顔の画像を貰う事にした。
特にカナタの方は魔術業界では普通に有名人なので、色々と写真がある。
「カナタとかいう方は何か見覚えがあるな」
「そうですよねー」
「二人とも素顔で接触しているって事か?」
「いやーなんだろうな。私も色々人に会うからな。思い出したら言うわ」
「そうか。とにかくこちらのの水瀬カナタは充分注意して欲しい。水瀬家は独自の剣術を持っている。単なる魔術師とは思わないことだ」
それよりも、すすきのでは吉祥院と魔術合戦になっていたから、水瀬カナタは魔術師専門だと思っていたら、伽里奈や霞沙羅と同じタイプのオールラウンダーだった。これを知っているか知らないかでは大夫違う。
とてもいい情報だ。
「そっちで捕まえられないのか?」
「ヤマノワタイでは何もしていないんだよ。ただ他の世界で何かをしているのが解れば、止めなければならない」
悪い噂があったとしても、明確に容疑となっている事項がないのなら調べようがない。
「ところでこいつは何歳なんだ? アシルステラには100年前から同じ流派の痕跡があるんだが」
「26才だよ。間違いなく。ちゃんと両親も祖父母といった家族もいる」
「じゃあ王者の錫杖はずっと前の人が作ったって事なのかな」
「アリシア君の世界にある道具がそんな昔からあるのだととすれば、何代か前の人間がもう既に別の世界を動き回っていたんだろうな」
「こいつら一般人の記憶に干渉出来るようだから、探そうにも、現場の人間が覚えていられるかどうかだな」
「ウチの世界もですよねー」
カメラにも干渉してくるから、見つけた次の瞬間にはもう忘れてしまうかもしれない。
だとすればかなり高位の魔術師か、魔術への抵抗力の高い人間を使うしかない。
「ヤマノワタイではそのような話は聞かないが、注意はしておこう」
「また情報が入ったら連絡するわね」
「ああ、頼みます」
ヤマノワタイで何かしている人ならすぐにでも逮捕も出来るんだろうけれど、何もしていなければ捕まえようがない。
ホントに現場を押さえるしか今は手がないけれど、伽里奈や霞沙羅でも一人で相手をするには危険すぎる。
しかも向こうは二人組。
「とりあえず対策を立てるか」
何をどう対策するのかは解らないけれど、とりあえず画像が手に入ったから、しかるべきところに相談をしよう。
それはともかく
「宿泊は2人部屋でいいですよね?」
「また増える予定でもあるのかい?」
「榊の野郎が年明けに入居する予定だ」
「あの榊君が?」
榊と聞くと、どうしても霞沙羅の話になる。
「な、なんだよ」
「あの、ボクの方の仲間に感心があるって言うのが大きいみたいなんですよ。この前も一回やりあってから意気投合しちゃって」
「確かに榊君の腕前だと、なかなかいい相手がいないかもしれないな」
「じゃあ北海道に転属するの? 管理人をやめて半年以上たったけど、榊君まで必要なほど事件が増えたの?」
「いや、あいつは横須賀勤務のままだぜ。そこのシャーロットと違って同じ日本国内の移動だから時差が生じないからな」
「霞沙羅ちゃん、良かったわね」
「…アリサさん」
「あらあら、ごめんなさいね」
いつもいつも急に乙女な反応を見せてくる霞沙羅に、アリシアとエリアスのように堂々としていればいいと思うのだけど、としみじみ感じる純凪夫妻であった。
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