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年末に向けての準備 -3-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「プリシラ王女も頑張ってるから、何か準備しておきたいんだよねー」

「会えばアーちゃんの妹みたいなポジションだものね」


 もう4年以上も前の話なのに、いまだにボディーガードでメイドをしていた時の思い出を持たれてしまって、アリシアを「お姉様」と呼んでくるプリシラ王女。


 前回の訪問時にカレーの話しをされて、あの場ではオリエンス教に怒られると言ってしまったけれど、鎮魂の儀を成功させるためにに頑張ってる姿を見てしまっているので、怒られない範囲で何か料理を提供出来ないかということで、ヒルダとギャバン神殿の人に試食して貰って、一つの料理を評価して貰う事にした。


「フォー風のスープカレーなんですね」


 だからシスティーに来て貰っている。


 トマトを使ったスープカレー。それをナンでもライスでもなく、お米の麵で食べて貰う。


 具については、コストの問題で本物のスープカレーのようにはいかないので、ミネストローネのように野菜か豆を多めにしようと思う。


「スープの色が赤いのがいいわね」

「そういえばギャバン教の旗は赤だったねー」


 情熱とか闘志とか、勢いを現す色。


オリエンス教のカレーは特に何も考えていなかったので、茶色のまま。実際、オリエンスの旗は黄色だったりするので、ちょっと違う。


「カレーなので、辛さ調整のパウダーを作ってみたのですが」


 スープの辛さの調整をする為にシスティーが唐辛子をメインとした辛味調整のパウダーを作ってくれた。


「でもミネストローネみたいにもなってるからねー」


 アリシアは粉チーズを用意した。


 辛い食べ物が多い国だと行っても、誰も彼もが辛さを求めているわけではない。やっぱり子供やお年寄りには辛い料理は向いていないと思う。


「食べる人に選んで貰えばいいんじゃない?」

「ところでヒーちゃんが食べるって事は、騎士団で採用する気なんじゃない?」

「それは考えてるわよ。でも教団には申し訳ないからギランドルで採用されてからにしましょう」


 さすがにギランドルの大神殿より先にモートレルの騎士団のメニューにするのはやめて欲しい。


 順番を守れば怒られないだろう。


「じゃあ辛くする方とチーズを入れる方の二つで試食してね」


 出来上がったスープカレーは早速食堂に運んで、パスカール家の面々と数名の神官の前に出された。


「子供はこっちねー」

「んーんー」


 ヒルダの子供2人はさすがに辛いのは食べられないので、最初から粉チーズを入れてマイルドにしておいた。


「色が良いね」


 子供を除いて試食組の皆はギャバン教徒。アリシアが意図したわけでは無いけれど、料理の色は聖都で提供されるものとしてはぴったりで、好評だ。


今後のバリエーションとしてはフォー風だし、レッドカレーも案内してもいいかもしれない。ココナッツミルクは乳製品で代用するしかないけれど、出来ないことはない。


「カレーと言っても、騎士団のものとは違うのだな。確かにこれはスープだ」


 ルハードも食べに来ている。


「この麵で食べるのも面白いわね」

「騎士団で出しているスープスパとも違うんだね」


 レイナードも面白そうに見ている。


「ザクスン風の辛い料理になっていますね。これは良いのでは」

「味の調整はいいかもしれませんね。あまりに辛い料理は苦手とする人もいますから」


 やって来た神官2人もギランドルの事情を知っているから、味も良さそうだと感じている。


「ハルキスのところってどういうスープカレーを作ったの?」

「お肉系ですよ。マスターに言われていたので、ナンで食べるように言いましたけど北海道でもマイナーですからね。これならお米の麵もいいですね」

「また開墾で行くみたいだし、その時に話をしたら?」

「そうしますね」


 ギランドル用のスープカレーについては、神官からも好評を貰ったので、画像も撮ったし、今度ザクスンに行った時にでもプリシラ王女に案内しよう。


ただ、とにかく魔族の件が早く解決して欲しい所だ。


  * * *


 小樽校では期末テストが近づいているけれど、カレンダーでは聖誕祭も同じように近づいている。


 そして今年最後の料理実習も期末テストの後に予定されているので、今日は事前準備の最後の授業だ。


 料理毎に班に分かれて、最後の確認。何をどういう調理をするのか、材料の確認、誰が何の行程を担当するのか、当日の大体のスケジュールも決めないといけない。


「き、緊張するー」


 聖誕祭だから生徒達からの期待も自然と高まっている。その中でもやはり一番人気となるケーキ担当だから、シャーロットはプレッシャーを感じている。


 数日前にもう一度ホールのショートケーキを作る手伝いをしたりと、経験不足をカバーするために真面目に練習もしている。


 出来たショートケーキはロンドンの実家にもお裾分けをしたりもしたので、両親には「あのシャーロットが」と驚かれたし、「美味しかった」と弟妹はとても喜んでくれた。


「授業はテストが終わってからだからね。緊張するのはまだ早いよ」


 普通科の生徒はシャーロットの凄さをよく解っていないので、年下の子の可愛い反応を微笑ましく見ている。


 シャーロットのメイン担当はチョコレートクリームづくり。レシピ通りに溶かしたチョコと生クリームを混ぜてもらう作業だ。


 ショートケーキの時にハンドミキサーも経験しているから道具の方も大丈夫なはず。


 あと、全員の作業になるけれど、ケーキの表面にクリームを塗りつける作業もある。ただ、時間の問題でデコレーションはしないつもり。味で勝負をする。


「美味しいの作ろうねー」

「う、うん」

「皆でやるんだから大丈夫だよ」

「が、頑張るから」

「とりあえず今日は打ち合わせだから気楽にねー」


  * * *


「今林さんの所とはもういいのね」

「うん。ボクは別にいいけど、あとは3人次第だねー」


 中瀬達は今日は自宅で勉強をするというので帰ってしまった。なので伽里奈(アリシア)は簡易結界の利用状況を見に来た。


 シャーロットはレポートのために一足先に帰り、今日は一ノ瀬と藤井が利用の予定を立てていたので、時間まで雑談をすることにした。


「そういえば寺院では聖誕祭の日には何かやるの?」

「特別礼拝の予定があるのよ」

「お、やるんだねー。一ノ瀬さん達は、裏でなにかその、聖誕祭的な食事をしたりはするの?」

「私達は儀式をやる側よ、って、ちょっとくらいはいい料理は用意するのよ。あとケーキは食べるわ」

「人数も多いし、作ってる時間が無いから買ってくる物の方が多いけどね」

「そうなんだねー」

「それに寺院としては浮かれてるわけにはいかないのよ」


 何があるか解らないので、裏方は最低限、ちょっといいものを食べるだけ。宗教運営側なんてそんなモノだ。


「だから今年最後の演習は楽しみよ。2人ともちゃんと作るのよ」

「はいはい、当日を楽しみにしてなさい」

「じゃあ年末年始は実家に帰るの?」

「そうね、年始は実家も忙しいのよ」

「あらら、折角帰省してもゆっくり出来ないんだねー」


 寺院の運営があるから年始も忙しいとか大変だ。


ああ年末なんだなー、という会話が続く。去年は一応受験なんてあったけれど、普通に日本の話だけしていればよかった。


 今もこの2人の予定を聞いているけれど、セネルムントの鎮魂の儀はどうなるんだろうと頭の片隅で考えている。


 アンナマリーが来てからは本当に状況が変わってしまった。


 魔族についてはザクスン王国だけで解決出来ればいいけれど。


「実家は秋田でしょ、どうやって帰るの?」


 鉄道経由で帰るのか、飛行機か。


「船とか? 最近のフェリーは結構良いって聞くけど。苫小牧から秋田って行けたよね? バイキングとか食べられるんだよね、あれいいなー」

「秋田まで一泊して早朝に到着だけど、一度乗ってみたいわね」

「一応、ウチの寺院同士で転移が出来るのよ。つまらないけどそれで帰るの」


 こっちの世界ではアリシアは神聖魔法が使えないので、宗教とは距離を離しているけれど、こちらにも施設間の転移装置があるのは知っている。


「疲れないからいいけど」

「北海道は広いから交通機関で秋田まで移動するなら案外大変だよねー」

「まあ久しぶりに地元の料理でも食べてくるわ」

「地元でゆっくりしてきてねー」


 そろそろ予定の時間になったので、2人は立ち上がった。


「結界の意見出しもお願いねー」

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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