二人の客人 -8-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
夕食後、ランセルはしばらくカレーライスの余韻を楽しんだあと、再びフィーネ達とビールを楽しんだ。
外は雪が積もっているのに、それを暖かい部屋から見ながら飲む冷たいビールはとても美味しかった。
そしてあのアイスクリームとブランデーを一緒に味わうというやり方は狡いと思った。
それが終わるとランセルは伽里奈とアンナマリーを呼んで相談を始めた。
「あのカレーとシチューはフラム王国でも食べられるのか?」
「シチューは言いましたけどヒルダの屋敷で、家の人だけで作りましたので、大丈夫です。やり方は違いますけどライアの劇場でももう提供されていると思います」
「やり方が違うとはどういう事だ?」
「お肉をステーキみたいに食べて貰うために、大きな塊の肉をあのソースの中で煮込んで、切って提供するやり方を教えたんです」
「あれかー。あれもよかった」
アンナマリーも一度だけ、その様式で食べたことがある。煮込みステーキといえばいいのか、肉だけを楽しむのならあれがいい。
「ではこのカレーは?」
「まだやってないですけど、材料的には問題無いです。あ、お米が手にはいればですけど」
「米か…」
シチューはパンで食べる人もいれば、米で食べる人もいる。でもあのカレーはパンには合わないだろう。
「お米は晩餐の日に王様にもアピールしたんですけどね、どう捉えられてますかね」
「あのパエリアは、鮮やかな見た目からして出席者全員に好評だったぞ。料理としても魚介と米が見事に合わさっていて良かった」
「ナンには合わないのか?」
「今日のカレーは、ナンには合わないねー。騎士団のカレーは逆にライス用には作ってないから」
「騎士団のカレーとは?」
「モートレルの騎士団に以前にカレーを教えているんですけどね、ナンていう薄いパンみたいな食べ物につけて食べてるんです。セネルムントでも同様です」
「色々あるのだな。しかし米の話しをするのであれば、このカレーはいい材料になると思うぞ」
「そうですか」
「しかし蕪の話があったな」
砂糖の生産の話で今は持ちきりだ。
「蕪と米の生産地は別なので」
実際に、ランセル将軍は農業関係の担当では無いので、せいぜいエバンス家が持っている領地の中で決めるしかない。けれど会議にはかけておきたい。米の生産は周辺の国では普通に行われているから、国土の環境的にももっと増やせるはずだ。お米に合ういい料理があれば自然と広がっていくだろう。
「まずは料理だな。アリシア君にはラスタルの騎士団にも来てもらわないとならない。一気にとはいかないが、時間をかけて少しずつ良くしていこう。王都の近衛騎士団の食事が、言い方は悪いが、地方領主の騎士団に負けるわけにはいかない」
今回は娘に誘って貰って良かったと思う。休暇としてもよかったし、視察も成功だ。娘の成長や、努力している所も確認出来た。
後はこれら情報を持って屋敷に帰り、今後の国政に活かしていくだけだ。
* * *
ランセル将軍は翌朝の朝食を食べてから、エバンスに屋敷まで送ってきた。
榊は結局2泊していったので、吉祥院と一緒に神奈川に帰っていった。
ヒルダとハルキスという腕の立つ知り合いが出来たので、出来れば早めに引っ越したいとも言っていた。
個人的にはライアの方に会わせたいけれど、相性もあるから、今は無理には薦められない。ただ、「侍」という騎士とは似て非なる、ラシーン大陸にはいない剣士は劇のキャラクターとしてはいいと思う。
「少しずつ入居者が増えるのう」
「気になるのはユウトさんがどうなるかですね」
「そうであったな。まだ帰ってこないという事は、勝ち進んでおるのであろうが」
フィーネ的にはやどりぎ館は賑やかな方がいいので残って欲しいが、ユウトにも事情があるので、退居するにしても止めることは出来ない。
「伽里奈、私の弟妹もここに連れてきていいのよね」
「どうぞー。まだ子供だし使うのは二人部屋かな?」
「あの部屋って三人部屋にも出来る?」
「ちょっと狭くなるけどベッドをもう一つ入れることは出来るよ」
2人の弟妹は年齢的には小学生の子供だし、夜は久しぶりに3人で話をしながら寝るのもいいかもしれない。
「来る時と帰る時で時差があるのを忘れないでね」
「時差ボケは我がどうにかしてやってもよいぞ」
「後はいつにするのかだねー」
「イベントがある時だといいわね」
「なら聖誕祭?」
「聖誕祭は、家族で礼拝に行ったりするから」
「イベントを考えるのであれば2月になってしまうぞ?」
北海道の冬のメインイベントとなるとやはり札幌の雪まつりだろう。
「まずどこかで一泊だけとか?」
「年末年始はイギリスの学校も休みじゃない?」
「何回でもよいぞ」
「じゃ、じゃあ近々。まずはこの辺だけでも案内しようかしら」
何と言っても小樽は観光地だ。シャーロットもある程度はこの町に馴染んできたので、有名所の案内くらいは出来る。
「そろそろスキー場も始まるからねー」
「え、もうなの?」
「もう少し雪が多くなってからの方がよいであろう。営業が始まったからと慌てて行ってもゲレンデの雪質も良くはあるまい」
「雪はとりあえず庭で遊ばせる感じで」
「まあ楽しむがよい」
「はーい」
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