二人の客人 -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
ロンドンが深夜帯になってしまったので、いつまでも部屋でごそごそやっていると家に迷惑になるからと、昼食前にシャーロットは荷物を持って帰ってきた。
「ダンディーなおじさまね」
超上流貴族で国の将軍の一人。エリート中のエリート。やや厳しそうな雰囲気を持っているけれど、アンナマリーとの仲は良好。
不遜な態度もとられずに、父親からの自然な挨拶も済ませた、シャーロットの第一印象はそんな感じ。
「紳士的よね」
「シャロのお父さんはどうなんだ」
「魔術師的で、口数が少ないかな。厳しめだけど悪い人じゃないわよ」
同じ男でも、柔らかすぎる伽里奈とは別物。
だらしない部分を取り除いた霞沙羅の路線といえばそうなる感じ。
ランセルの方も、娘と仲のいい友人が出来ていて安心している。
魔術師の家とはいえ、歴史も長いようだからしっかりしているし、同じく勉強の為にここにいるようだから、娘に良い影響が出ればいいなと思っている。
昼食は、娘が普段何を食べているのかとか、人の上に立つものとして、騎士団に反映出来ないかとかいった考えもあるので、伽里奈には普通通りにと注文している。
それで、お昼ご飯はオムライス。ホワイトソース仕立てだ。
本当に食べれるかどうかの確認はとっているけれど、材料的にもアシルステラにあるものだし、癖はなさそうなので同じ物を食べることにした。
「これは絶対覚えて帰るんだから」
やや手間のかかる料理だけど、シンプルなので、シャーロットは今度自分で作らせて貰おうと意気込んでいる。
いつものドーム型のオムライスが順に出てきた。ホワイトシチューでは無くて、チキンのホワイトソース煮がかかっている。
「面白そうな料理だな」
話しを聞くと材料は単純なものだけど、アリシアは手を抜く事無く料理をしている。なんというか、孫が喜びそうな料理だ。
「あの、順番に出来ていきますので、先に食べて下さい」
卵を調理する関係で皆同時には出せない。
シャーロットは気を使って順番を後にしてくれたので、アンナマリーとランセルで先に食べ始めた。
「あまり機会は無いが、ライス料理は食べやすいのだな」
フラム王国では貴族といえど、米を炊いて食べる事はあまり機会は無いから、ちゃんとした米料理は新鮮だ。
卵の中からは赤いケチャップライスが出てくる。料理全体の色合いもいい。
「味もいい」
娘も美味しそうに食べているので、屋敷で一度作って貰ってもいいかもしれない。
* * *
娘の生活も確認したし、今日はもう特に何もやることはないので、本当にのんびりしたいと、温泉に入ることにした。
「この後もその服でいます?」
ランセルが着ているのはどう見ても休日とは思えないスーツ姿。日本にも自宅でこういう服装で通す人もいるとは聞いているけれど、それもどうかと思う。
今日はモートレルに行く気も無いようだし、雪が積もって寒そうな庭に出る気も無さそうだ。
「何かよい服でもあるのかね? 折角だし、服装でも異世界を体験するのもいいかと思っている」
「作務衣って服があるんですけどね。この後部屋を見に来る人も着ているんですけど、ちょっとラフな感じの、この国では仕事着にしてる人もいる服です」
説明しづらいので、伽里奈は作務衣を出してきた。
海外旅行者が泊まっている旅館でこれを着ている映像もあったし、いいかなとは思う。
「温泉の使い方も教えますね」
ランセルを浴室に連れて行って、蛇口やらシャワーなどの使い方と教えて、着替えの作務衣を置いてロビーに戻ってきた。
「そういえばそろそろ霞沙羅さんが帰ってくるかな。榊さんも連れてくるのかなー」
「榊までこの家に来たら、日本のパワーバランスがおかしくなりそうね」
霞沙羅が神奈川に出掛けたので、榊を迎えに行くエリアスの仕事は無くなってしまいそうだ。
「いやまあ、勤務地は変わらないから」
「超が着くほどの遠距離通勤ね」
職場の側か実家の近くに裏の扉は開くことになるけれど、どっちだろうか。
「この後すごい人が来るんだな」
霞沙羅だって剣の腕前がすごいので、その上となるとアンナマリーには想像出来ないけれど、専門の剣士とは聞いている。
「前にも言ったけどヒルダとハルキスと互角に斬り合いが出来るような人だからねー」
魔法を使い始めるた場合の戦闘力は、アリシアと霞沙羅の方が分があるけれど、それでも勝負は解らない。
「ユウトさんは基本は素手での格闘の人だけど、よく力比べに来てたんだよ」
「そもそもカリナの力も解らないのに、なんかもうよく解らない世界だ」
「物静かな人だけど、変な人じゃ無いよ。ちょっと考えがストイックすぎるけど」
そんな事を話していると、正面玄関から霞沙羅と吉祥院と榊の3人が入ってきた。
「そんな3人で来なくても」
「ワタシは霞沙羅の家に泊まるだっちゃ。色々と2人で悪巧みがありんすから」
「榊はどうするんだ? 一泊体験して明日帰るか? ついでにヒルダに会ってみるか?」
「伽里奈君の仲間か。領主なのだろう? そんな簡単に会えるのか?」
「ヒーちゃんは呼んだら剣を持って飛び出てくると思いますよ」
「そうか? どの程度の腕前なのか、一度会ってみるか」
それにしても、こことは気温は違えど横浜も冬だというのに、榊は作務衣姿。足下は雪駄だ。寒くないのだろうか。
「この人が三人目の英雄なのか」
「榊さんてこんな人だったんだー。現代の侍って聞いてたけど、なんだか柔らかい印象」
体はがっちり引き締まっていて、いかにも格闘家というのが解る。身長は霞沙羅よりほんの少し高いくらい。
アンナマリーは、榊は一流の剣士、とだけ聞いているけれど、人生全てを剣に捧げました、というような厳しい顔はしておらず、温和そうで甘いマスクだ。
格好いい男性。伽里奈とは正反対。
「今日のメシは足りるか?」
「何となくこうなるだろうなとは思ってましたから、シチューは多めにしてます。カレーも作り始めてるんですけど、どうします?」
「明日の夜も食ってくか?」
「う、伽里奈君のカレーか…」
榊も伽里奈の料理は評価している。
「じゃあ増量します」
悩んでいるようなので、もう増やした方が早いと考えて厨房に向かった。
「アンナパパには言っておいた方がいいことあるんじゃない?」
「そうだな」
お風呂にはランセルしか入っていないから、アンナマリーは吉祥院のことを予め伝えておいた。
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