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アシルステラの新たな障害 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「さあさあアーちゃん、早く家に入るのダ」


 今日は以前から頼まれていたので、ルビィの屋敷まで料理を教えにやって来た。


 料理は王都ラスタルで日常的に売られていて手に入りやすい食材で完結するモノに限定させたので、今日は冷蔵箱を使って港町ブルックスから魚介を買ってくることはやめた。


 ルビィがどうしてもクリームコロッケがいいというので、今は手に入りにくい魚系ではなく鶏肉とキノコの二種類と、チーズリゾットとペペロンチーノと鶏の唐揚げ、買ってきたパンで手軽に作れるピザトーストにした。


「おおー、アーちゃんの料理が遂に家ニ」

「よろしくお願いします、アリシア様」

「種類が多いけど、一個一個おねがいねー」

「はい」


 使用人のリューネは高級宿のホテルミラーニカの娘だ。専門のシェフではないけれど厨房での経験値もあるそうだから、画像付きのメモも残していくし、問題は無いと思われる。


「じゃあ」


 まずはクリームコロッケの中身から始めた。


 この使用人のリューネは、小さめとはいえたった一人でこの屋敷の管理を任されているだけに、日々の料理も一人で作っている。


 それなら今日の料理はすぐにでも覚えられるだろう。


「ルーちゃんはポテトチップを作ってよ」

「な、私に料理をしろと言うのカ?」


 ポテトチップはアリシアが伽里奈を名乗っていた時期に一度食べただけだ。芋を薄くスライスして揚げるだけ、であっても料理とは無縁のルビィには無理な話だ。


「お酒用のおつまみだよー。揚げて貰うのはリューネさんにやって貰って。準備が魔法の鍛錬にもなるからさー」

「料理がなぜに魔法の鍛錬ニ?」

「館にシャーロットって女の子いるでしょ。最近はあの子にも似たようなことをやって貰ってるんだよ」


 伽里奈はまな板の上に芋を置いた。


「包丁だとあんなに薄く切るのは面倒だからねー。ほら見ててよ、皮を剥いて、スライスするから」

 アリシアは芋を掴むと、一つ目の魔法で皮を剥いて、続く魔法で芋をペラペラにスライスした。

「おおー、流れるようニ」

「一個目の風魔法で、皮と実の間に風を送り込んで分離して切断、二個目の風魔法で、幾重にも分割した風の刃で芋をスライスするんだよ」


 皮を剥く魔法は実は先日、やどりぎ館でシャーロットに教えている。スライスする魔法はまだ危ないので教えていない。


 料理とはいえ、これだったら出来るんじゃないかと、アリシアから術式のレクチャーを受けて、ルビィは早速やってみることにした。


「おおー、ちょっと制御が面倒くさイ」

 魔法としての出力その物は大きくはないけれど。ミリ未満単位の位置操作が求められるので、やっていることは大したことはないように見えるけれど、ルビィくらいの魔術師であっても魔法の制御が難しい。


「これは…、なかなカ」


 手元から暴れてしまいそうな魔力を抑え込んで、薄く切らないとダメなので、集中力が試される。大きい魔法を制御するのとは正反対の繊細な感覚が試される。


 慣れない魔法操作に時間をかけてながら、ペラペラにスライスされた芋が2個分出来たので、早速油で揚げた。


「厚さは自由だと思うよ、もうちょっと厚くして、芋の食感を残してもいいかなー」


 パリパリに揚がったポテトチップに塩を振って、おやつとして食べた。


「むう、美味しイ」

「あら、これはいいですね」

「魔術の制御鍛錬も兼ねて、たまにやってね」

「アーちゃんからの挑戦、受けようじゃ無いカ」


 しばらくは大変そうだけれど、お酒に合いそうな美味しいポテトチップが食べられるという結果が待っている。だったらやってもいい。


「ワインの件もそうだが、アーちゃんは昔から魔法の細かい制御が上手いな」

「ルーちゃんには昔から魔法で勝てなかったから、その個性作りだよ」

「お二人って子供の頃からライバルだったって聞きますけど、熾烈な順番争いがあったんじゃないですか?」

「どうだろー、ボクの家は魔導書なんて無かったから、ルーちゃんの実家で写させて貰ったり、練習させて貰ったりしてたなー」

「何ていうか、環境の差で成績の差が開くのが納得いかなかったからナ。それに誰か追いかけてくれる人間がいると、モチベーションが上がるじゃないカ」

「でもどこかの段階で、ルーちゃんを追い抜くのは無理だなーって解っちゃったからねー。だからボクは万年二位なんだー」

「だからといってそんなに差は広がらなかった気がするガ?」

「一位を諦めただけだからねー」


 ルビィを追い抜くのを諦めただけで、魔術の勉強をやめたわけではない。


「その辺からアーちゃんの魔法は変な方向に向かっていった気がすル」


 その方針が冒険中に生肉を持ち歩く非常識な魔法として開花した。


「でもその、港町から本当に魚の運搬が安全に出来るようになるんですか?」

「それはねー、だってキミもラスタルで育ったなら解るでしょ? この町で安定して魚を食べたいじゃん」

「リューネ、この食卓に定期的に魚が並ぶと考えたらどうダ? 実家のホテルでもあのエビフライが食べられると考えないカ?」


 エビフライは見ていないけれど、特別注文でも無くエビが実家のディナーとして提供出来ると考えると、アリシアの提案は魅力的だ。


「ルビィ様の冒険譚で読んでいますが、アリシア様は変な方なんですね」


 美味しいモノが食べたい、という精神を持ったまま英雄パーティーは旅を終えている。


 リューネもルビィの所で働く事になってから、冒険者時代の話しを色々と聞いていて、普通の冒険譚とは違う、どこか楽しげな旅の雰囲気の理由が料理にあると解っている。


「でもその結果がこのコロッケと唐揚げダ」

「揚げるのは旦那さんが帰ってきてからだねー。ここからはソースとリゾットとピザの準備をしようね」

「ペペロンチーノとか言うのはどうしましょう?」

「それも後でねー」


ルビィの家にはなかなか来られないから、今日一回で複数の料理を作る事になったけれど、いつもはやどりぎ館の食事と同じくらいしか作らないみたいだから、次回はカレーかシチューくらいにして、追加でデザート系をやろう。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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