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研究者達の集い

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  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「しかしアーちゃんよ、あの小さな探知機は中々使えるゾ」


 いつもの鏡での通信中。


 あの日帰っていった飛行船は、何事も無くにラスタルに到着し、引き続き飛行試験の為に、別の領主のところに向かっているところだという。


「地球でも吉祥院さんが試作品を作って、問題点と改良箇所をあげてくれるって。あと霞沙羅さんがそのアンテナが気に入らないからって、なんかいいのを提案してくれるって。それで性能も上がるかなー」

「そうなのカ。今は研究の為に船から降ろしているから、また今度講義をしてくれと言ってきているゾ」

「まあいいけど」

「私らでも要望とか改良点とか伝えるから、まずは学院から使えるようにしたいが、周辺警備の騎士達にも持たせたいと、将軍達も関心を寄せていル」

「外に持ち出すなら撮影の機能は外しても良いしね」

「アーちゃん、探知機にもその撮影の機能がついてるナ。早く構造と情報をよこすのダ」

「もー」


 話をしていると、霞沙羅がやって来て伽里奈(アリシア)の横に座った。


「よう、お前の杖用の制御装置ももうじき出来そうだぜ」

「先生カ。ヒルダのロックバスター用のは終わったと聞いタ。私はまだ見ていないが、中々だったといっていタ」


 結局また地下室に仕舞ってあるけれど、魔剣の機能を切って、毎朝引っ張り出してきて素振りに使っているそうだ。


「受け取りはどうする? こっちに来るか? そっちに行くか?」

「どちらかというと来て欲しイ。町の外に学院所有の検証用の場所があるかラ」

「じゃあ完成したらまた話をしようぜ」

「しかし全員分をタダでやるとか、霞沙羅先生に得がないな」

「勉強だよ。別に新しく作ってるわけじゃねえしなあ」

「すごいなあ、先生ハ」


 実際、ある一線を越えた魔術師は何でもかんでも興味を持って「勉強」として捉えるからそこまで上がれるのだ。それに対してお金だの損だのケチケチしていたらチャンスを逃すことだってある。


 アシルステラの英雄6人が持っているような魔装具や聖法器がそこいらに転がっている道具なわけはないので、自分のその後の事を考えたら、整備をする代わりに無料で触らせてくれるなら安いモノだ。


「そういえば、魔物に付いてた札ってどうなったの?」

「あれは討伐隊にいる魔術師に話をして、現場で解除魔法を使わせながら戦闘しタ。なので、モートレルの時のような混乱は無かったようダ」

「平均的な魔術師の仕業なら、そんなもんだねー」

「しばらくは類似の事件には備えておくガ」


 誰がやったのかは見つかっていないから、それは国の方で追う事になるだろう。


  * * *


「お声がけいただき誠にありがとうございますの」


 先日の魔術師から詳しい話しを聞かせて欲しいと声がかかったので、カナタ達は指定された、森の中にある彼の研究所にやって来た。


「それでまず何からお話ししましょうか? もしくはどのようなお悩みをお持ちか聞かせていただけますの?」

「カナタ、それよりも今回は自己紹介からした方がいいんじゃない?」


 水色の髪の女性が間に入ってくる。


 確かに今回は正式に営業をかけているのだからその方がいい。第一印象…、もう2回目だけど印象が大事だ。


「改めて名乗りますが、私はカナタと申しますの。覚えてらっしゃると思いますが、見ておわかりの通り異世界人。誰が呼んだかヤマノワタイという世界の住民ですわ。こっちのが」

「アオイよ。こっちのカナタと同じ世界からきた、相棒ってやつね」


 カナタは今日もOLのような事務服、アオイも同じくどこかの高校の制服アレンジ。なので、このアシルステラでは違和感のある服装だ。


「あの神官も異世界人か?」

「彼はこちらの、アシルステラの人間ですの。反逆神レラの神官はこの世界の人間でないとなれませんからね。人の信仰は自由ですが、神から出てきた子でなければその声は届きませんの。神の奇跡を借りるのであれば、現地人を確保するしかありませんから」

「だから私達自身はレラの力は借りられないのよ」

「それも解決したいのですが、現地人用の道具は作れますのでご安心を」

「お前達の目的は? なぜオレに声をかけた?」

「先日も言いましたが、私には魔術師として、そして鍛冶屋として、人生のテーマがありましてね、それを世に発表する為に、実験を通してデータを集めている所ですの。貴方は広く世に発表したいわけではなさそうですが、個人的にやりたいことがあるんですよね? ただ、いまいち力が足りない」

「言い方は悪いけど、この世界にも有能な人間が多いものね。例えばフラム王国の六英雄とか」

「あれは厄介ですわね」


 カナタのスタンスは、あくまで欲望を持っている現地人達に力を与えて、実行して貰う事なので、最終的には傍観者というか観察者として、事件の行く末を見ることに落ち着く。


 それが成功しようが失敗しようが結果に関わる事はない。物事の結果では無く、道具がどう動いたのかが見られればいい。


 しかしモートレル占領事件は、まさか一晩で終わってしまうとは思っていなかったので見ていなかった。


 後で調べた所、3年も姿を見せていなかった六英雄のリーダーが実はモートレルに潜んでいたとかで、それが連れてきた別の仲間とともに計画があっさりひっくり返されてしまった。


 しかもその英雄、なぜかヤマノワタイで製作された王者の錫杖といくつかの魔工具を解析している。


 異世界から帰ってきたという話もあるので、それもあり得る。ヤマノワタイに行っていたのか、もしくは出身の魔術師に出会ったのか。


そういえば先日も地球でヤマノワタイの魔術がバレてしまった。


 だからといってやめる気はないし、それはそれでいいデータになる。


「確かにオレは力が足りない。魔術師としても体が強いともいえぬからな」

「ほほう、研究の為に頑丈な体が欲しいとおっしゃる?」

「オレはただ研究がしたいだけだ。しかしこの強いとは言えない体が足を引っ張る」


 病弱なわけでは無いけれど、魔術師という職業にある者として、特別に強い体を持っているわけではない。


 まあ、どこの国でも高位の魔術師となるとなぜか体が頑丈だったりするけれど、自分はそうではなかったのもあって、魔術が及ぼす体への負担の壁がある。


「我が一族は代々にわたって頑強な体に恵まれているので、どう弱いのか解りませんが、強い体を得て、力を存分に振るって目立ってやるという望みではないのですね?」

「あくまで研究の為だ」


 おお、これはまた自制心の塊のような人間だと、カナタは思った。力が足りないとも言いつつ、目先の力を欲するのではなく、あくまで自分の研究の為の力と体が足りないという。


 確かにこの男、神官に調べさせた所、あまり善良とは言えない研究に没頭しながらも、それを表面に出すことはなく、町の側で生活し、時には住民の安全の為に力を貸すなど、ひっそりと生活をしている。


「何の研究ですの?」

「魔物や魔獣といった生物の制御だ」

「何の為に?」

「ただ知りたいだけだ。研究にそれ以上の理由がいるのか?」

「極論ですが実に共感できる話ですわね。私のやっている事も所詮は自分が知りたいだけですの」

「お前はこんなオレの悩みを解決する手立てがあるというのか?」

「ご自身の心持ちもありますが、貴方のお悩み解消と私の研究成果を確認する一石二鳥の道具がありますわ。ところで貴方、神降ろしの杖に興味がおありでしたわね」

「どうしてそう言える?」

「前回、私の言葉を聞いて指が震えていましたよ」

「見抜かれていたか」


 内心がバレないように、平静を装ってワインを飲んだのだが、見えていたようだ。


「あの騒動を見ていた冒険者からの情報だが、神そのものは出てこなかったというが、本当か?」

「本来の神降ろしは、神聖魔法であっても神官という犠牲が必要ですから、後の事を考えて、下位の存在を呼び寄せて負担を減らしたんですの。少なくとも使用者はいきなり犠牲にならないようにね。コストの低いレラ配下の魔人を呼ぶよう設定しましたが、変身時間が短かったので、討伐後の生き残りも多かったようですが、本来は何回か使えるコンセプトでしたの。国を再興しようというのに、切り札とはいえ1回の使用で中心人物が失われては意味ないですからね」

「レラの配下とはいえ、杖一本で召喚出来るとは…」


普段はこの大陸にいないレラとその腹心、それ以下の魔族と呼ばれる存在も、条件をクリアしそれ相応の儀式を行えばラシーン大陸に呼ぶことは出来る。


 ただしそれはレラの神官での話で、それなりの実力はいるし、単純な魔術師ではできない。魔術ではなく、反逆神とはいえ、神にお願いするモノだからだ。


「あの杖を踏まえまして、もう少し使い勝手が良いものを考案しましたの」

「ほう」


 神降ろしの危険性は充分に理解している。それに成したとしても、自分という存在は消えてしまうのではないか? それでは意味がない。


「半分人間をやめる事にはなりますが、貴方が失われるわけではありませんの」

「…」


魔術師はほんの少し前のめりになった。


 これは脈有りだと、カナタは言葉を続ける。


「貴方の性格的には、あのおバカな帝国残党のようなことにはならないと思ってお話をしましょう」

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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