やどりぎ館でのティータイム -3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「わー、伽里奈たんの料理だ」
「軽めですけどね」
まずは2階の部屋から料理を持っていった。
「なんかオシャレな料理」
伽里奈とシスティーの2人で運ばれてくる料理に、モデルの2人はSNSにあげるべく写真を撮っている。
この2人も伽里奈の、ちゃんとした料理を食べるのは初めてだ。
「エリアスも新城大佐も毎日こんな料理が食べられて羨ましいわね」
「まあこいつは凝り性だからな」
「伽里奈たんなら、お店を開けるよ」
料理を出し終えて、後は6人で食事をしながらのインタビューの続きが始まったので、伽里奈達は下で待っている3人との食事に向かった。
「折角ロンドンと館が繋がったんだから、日本に弟達を連れてきたいわ」
シャーロット的にはやっぱり弟と妹にも伽里奈と北海道の美味しい料理を食べさせてあげたいし、たっぷりの雪で遊ばせたい。
「今、上で2人がやっておるようにロンドンの小娘も遠慮する必要はあるまい。時差くらいであれば我が体内時計を調整してやっともよいぞ」
「だったら私もいいのか?」
「屋敷から甥でも父親でも連れてくるがよい。特に父親は娘の、見習い騎士としての日常と異世界での生活を見てみたいと思っているであろう?」
フィーネは館の運営側の女神だから、言っている事に間違いはない。裏事情を知らないシャーロットとアンナマリーも、その堂々とした口調に説得力を感じた。
2人は来たばかりでまだ遠慮しているから、背中を押そうという優しい女神様の、ちょっとしたお節介だ。
「友人を連れてきまくりの管理人もおろうが」
「そうね」
「そうだな」
「もー」
上と下、それぞれの食事が終わり、食器を片づけてから、今日のメインとなるアフタヌーンティーの準備に取りかかった。
買ってきたケーキスタンドに、シャーロットから貰った参考の写真を見ながらお菓子とタルトを並べていき、お茶と一緒に2階に持っていく。
「お店みたい」
「伽里奈君は一家に1人欲しいわね」
「賛成です、社長」
「私も世話になってるからな」
「個々には作るんですけど、ボクもこういうのは初めてなんですけどねー」
美味しい昼食を食べながらの会話は弾んだようだ。この後もお菓子を食べながらゆっくり、インタビューを進めて欲しい。
そしてまた先輩二人はお菓子の写真を撮り始めた。
2階の準備を終えると、1階でもアフタヌーンティーを始めた。
「ネコちゃんにはお菓子は無いけど、果物があるのよ」
「にゃーん」
「あの子猫達は元気にやっているだろうか」
「まだ帰って一週間も経っておらぬぞ」
「アンナもそろそろ黒ネコちゃんを触れるんじゃない? この前の子猫ちゃん達より大人しいわよ」
「いやー、大きいのがな」
ぬいぐるみのような小さな子猫ならちょっと引っかかれたとしてもかわいいモノ。でも大人なアマツとなると話は変わってくる。アマツが誰かを引っ掻いたという話は聞かないけれど、やっぱりこう、まさかの事を考えてしまう。
とりあえず今は、誰かの膝の上に乗っているのを見ているだけでいい。
「マスター、今日は天気もいいですし、そろそろイルミネーションを仕掛けましょう」
「そうだねー、じゃあ社長達が帰ったら出すよ」
「私やる」
「面白そうだから私もやるぞ」
昨晩の段階では、もう近所の家が4軒ほど始めていた。積もった雪をイルミネーションが照らしているのを見ると、もう年末なんだなという雰囲気が増している。
水族館ではペンギンの散歩も始まったし、そろそろスキー場の営業も始まるだろうし、今年も雪にまみれて面倒くささのある冬をせいぜい楽しもう。
* * *
やがてインタビューとアフタヌーンティーが終わったので、現場の片付けが始まった。
「仕事ではあるんだけど、今日は女子会みたいで楽しかったわ。大佐の話も色々と聞けたしね」
これからインタビューの書き起こしもあったり、写真の選定、ページのデザイン、そしてそれらが出来上がったあとに軍の確認と修正を経なければならない。
会社HPには数回に分けて掲載される予定で、第一回目は元旦を予定しているのだとか。
「それは良かったです」
「伽里奈、ありがとう」
「エリアスもなにか勉強になった?」
「それはもう色々と」
エリアスも見るだけじゃなくて仕事に混ざる事が出来て満足しているようだ。
「それで伽里奈たん、温泉に入っていいんだよね?」
「はいどうぞ、階段を降りて左の通路の奥にありますよ」
「何人入るんだ?」
「大佐も入りましょうよ」
「私もか?」
「エリアスもよ」
となると6人が利用する事になる。でもここの湯船は大人が4人くらいしか入れない。
「社長とメイクの小松川さんは、悪いんだが二手に分かれるか? 一度に4人しか入れん」
「あの、入居者の関係で今はボクしか使ってない男風呂があるんですよ。清掃して今日はまだ使ってないですから」
「あら、全然いいわよ。じゃあ小松川ちゃんはそれでいいわね」
「ええ、いいですよ」
「今、男は女っぽいこいつしか住んでないから、安心して入ってくれ」
「バスローブもありますからね。湯冷まし中に良かったら着ていて下さいね」
早速女子4名で1階に降りると、ソファーにはまだフィーネだけが残っていた。
「わっ、小樽の魔天龍様!」
「なんじゃ、あの社長は我の話しをしておらぬのか?」
先輩モデル2人はフィーネの所に進行方向を変えた。
「え、ここに住んでいるんですか?」
「占い師ゆえ、黙って貰ってはおるがのう」
吾妻社長ほどでは無いけれど、この2人もフィーネの占いに訪れている。
「何かあるんなら、風呂から出てから頼め」
「今日はお主らのおかげで良い午後を過ごせたのでな。その礼に簡単な事くらいはタダで占ってやっても良いぞ」
「ひえー」
「焦っても良い事はないぞ。我は何の予定も無い。温泉は温泉で日々の疲れをリフレッシュしてから来ると良い」
「は、はい」
先輩2人も、社長も小松川さんも、しっかり温泉を堪能してから、機嫌のいいフィーネに無料で占って貰ってから、帰っていった。
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