やどりぎ館でのティータイム -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
今日の館にはアンナマリーもフィーネもいる。
入居者が全員いるので、住民の方でもこの簡易的なアフタヌーンティーをやってみようとなっている。
それで、吾妻社長達は多分業務でそれどころではないだろうけれど、異世界人のアンナマリーには何かを言われた場合に発言は気をつけてと言ってある。ミスしてもフィーネが何とかしてしまいそうだけど。
伽里奈とシャーロットがお菓子作りをしていると、吾妻社長達がやって来たので、エリアスが出迎えた。
「にゃー」
「あらネコがいるのね」
「霞沙羅が飼っているネコなんですよ」
「この黒ネコちゃんは毛並みがいいわね。この子にちょっと手伝って貰うのもいいかしらね」
「わぁ、この建物、結構いいじゃない」
「ちゃんと管理されてるー」
「じゃあエリアスちゃん、今日はよろしくね」
やって来た4人は、2人部屋に案内されていった。
「霞沙羅って、ホントにモデル的な仕事なんかやってるのね。ああいう人達が来るとなんか実感」
「本来は軍の広報誌専門だけどね」
「日本て何か変な国よね」
「シャーロットの国はそれほどでもないけど、東京とか地方都市の一角が閉鎖されるくらいの被害が出てるからねえ」
厄災戦についは、イギリスは日本ほどの被害が無かったので、霞沙羅のような人間は必要なかった。
もし被害が大きかったと仮定しても、それでも軍が積極的に軍人の一人を誌面で特集し続けるとか、無い。マンガかアニメの世界だ。
「館にいるとちょっとだらしないけど、格好いいものね」
「完璧超人じゃ面白くないよー」
英雄と呼ばれる伽里奈達だって、全員癖有りだらけだ。その中でもハルキスが一番マシと言えて、伽里奈が一番おかしい。
まあとにかく、エリアスがお世話になっている吾妻社長の仕事だから、いい感じの時間を提供してあげたい。
「シャーロットも料理に興味が出てきたね。折角だから夕飯の準備中にちょっと面白い魔法を教えてあげるよ」
「魔法で料理を作るの? いくらなんでも絵本の魔法使いじゃないんだから」
「そうじゃなくて、芋の皮むきだよ。鍛錬の要素も入れてね」
「料理で鍛錬? 面白そうね、それ」
ではその時を楽しみにしてもらって、メモ通りにクッキーの生地作りを始めた。
「のう小僧、我に茶を煎れる許可を出そうではないか」
部屋から出てきたフィーネが厨房にやって来た。
「緑茶でよいぞ」
「はーい」
フィーネに頼まれて緑茶を煎れていると、2階から吾妻社長が降りてきた。
「伽里奈君、ピッチャーで水を…」
社長は厨房に座っている人間を見た。
「お、小樽の魔天龍さん!」
吾妻社長にとっては、まさかまさかの人物がいた。こんな所で会えるとは全く考えもしなかったので、完全に不意打ちを食らった。
「おー、常連の吾妻社長ではないか。今日はここで仕事であったな」
「か、伽里奈君、この人ここに住んでるの?」
「入居者ですよ。2階に住んでますよ」
「な、なんで教えてくれなかったのっ!」
「フィーネさんから教えるなと言われていたからです」
吾妻社長はスススとフィーネの側に寄っていって、頭を一つ下げた。
「いつもお世話になっております」
「お主の所の業績はエリアスから聞いておるぞ。上手くいっておるようではないか」
「そ、それはもう」
「占い師は相手に世界感という魔法を掛ける所から始まるのでな、私生活は教えぬのが心得よ」
「そ、そうだったんですね」
そうであれば伽里奈やエリアスに文句を言うのは野暮というものだ。
「ところでお水ですか?」
皆が飲む分をエリアスが準備を忘れていたみたいなので、ウォーターサーバーの水を入れたピッチャーと紙コップをいくつか渡した。写真写りが悪そうなので、あとでガラスのコップも持っていく事にしよう。
「此度の試みが上手く行くと良いのう。あとはまあ、遠慮せずにひとっ風呂浴びていくとよい。仕事終わりに気持ちをリフレッシュしてから帰るのじゃな」
「は、はいーっ」
懇意にしている占い師に一礼して、吾妻社長は2階に戻っていった。
* * *
2階の部屋では順調に撮影が続いている。
霞沙羅一人の写真、モデルとの写真と色々。
そしてエリアスも混ぜて貰った。約4年も一緒に生活をしているのに、始めて仕事として霞沙羅と一緒のフレームに収まって、とても緊張したけれど、多分上手くいった。
伽里奈の方は午後のお菓子の準備をしつつ、お昼用の、やや軽い昼食を作っている。
魚介のパスタとサラダとスープ。スープは具のない純然たるコンソメスープ。
「さすが小僧じゃ、いい具合じゃのう」
「何か量が少なめじゃないか?」
「小娘よ、食後はアフタヌーンティーじゃ。それに備えて控えめになっておる」
「アフタヌーンティー?」
お菓子を作っているとは聞いていたけれど、アンナマリーはその中身を知らない。
「ロンドンの小娘の国の伝統よ。其方の国にも類似のものがあるやもしれぬが、今作っておる菓子共に茶を用意し、話などをしつつゆっくりとしたティータイムを過ごすのじゃ。その為に菓子の量が多めなのじゃ」
「貴族の習慣なんだけどね。私の家でも時々やるのよ、魔術談義だけど。それでママが館で飲みなさいって、紅茶をくれたし」
「かの国の伝統ある家からの頂き物じゃ。それは期待してもよかろう」
「なんかすごそうだな。この後にお菓子を食べるから昼食を減らしているんだな?」
「そういう事」
こちらの貴族の習慣というのであれば、アンナマリーは楽しんで、その文化を持って帰ろうと思った。
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