飛行船は帰っていった -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
その翌日には予定通りに、飛行船はラスタルへの帰途につくことになった。
モートレルの探知装置も安定稼働、一晩飛んだ飛行船にも運行上の不具合は見つからなかったので、今回の目的はを果たしたというわけだ。
「しかしアーちゃん、この探知機は最長でも半日しか動かないナ」
「ずっと使う事は前提としてないし、試作品で魔力タンクが小さいからねー」
そもそも本格的に使ったのは今回が初めてで、作って動作の確認だけして片づけてしまったので、問題点も解決策も纏めていない。
飛行船には別のが付いているんだし、とりあえず今回は使えるのか使えないのかの判断だけにして欲しい。
「あの飛行船が飛び立つところは見たいでごわす」
「遊覧飛行程度でいいから、いつか乗ってみてえな」
霞沙羅と吉祥院が飛行船を見に来ている。
二回目とはいえ、今回も屋敷にたどり着くまでに一悶着あった。
「タウ様に頼めば乗せてくれると思いますよ。あの飛行船はは魔法学院の持ち物ですからねー」
「そうなのか?」
「霞沙羅さんには乗った感想とか求められると思いますけど」
「乗せてくれるってんなら、そのくらいはやるぜ。こっちもただ乗るだけじゃねえしな」
「それはワタシもいけそうでござるか?」
「一回顔合わせはした方がいいと思いますよ。今回ルーちゃんが探知装置の話しを持って帰るから、また連れてこいとか言われると思いますから、その時にでも」
見守っているウチに荷物も積まれていき、帰る準備が進んでいく。
「ところでこれから夜通し飛ぶんだろ? 食いもんはどうすんだよ」
「いずれ耐火処理をした台所を積むんですけど、今は飛行船を飛ばすのが重要で無いんですよね。だからお弁当とつまむ程度の焼き菓子を作ったんですよ」
「内装が完成すれば結構乗り心地がいい乗り物になりそうだな」
「それなりに長く飛ぶモノですからねえ。人が運ぶ事になるので、狭いですけど寝泊まり出来る個室もあるんですよ」
「最近のフェリーみたいなもんか」
旅客もやっている帆船もあるけれど、フラム王国を出ないのであればあそこまでは長期に乗ることもないから、多少狭くても不便は無い。
「一応カテゴリー的には船ですからねー」
屋敷から夜用のお弁当が運び込まれていく。
「お弁当は何を食べるのでゲス?」
「おにぎりが無いですからね、サンド系のホットドッグとチーズステーキとケバブを作りましたよ」
「チーズステーキとはアリシア君はなかなかやりおるねえ」
「なんだよそれ」
「アメリカではここ最近の大統領達も好んで食べるという、とある町のソウルフードでありんす。二つに割ったパンの間に小さめにカットしたステーキ肉ととろーりチーズを挟んだだけの実にアメリカンな、シンプルでナイスな食べ物でごんす」
「フィーネさんからのリクエストでお弁当で作ったことがあるんですけどねー」
「なんだよ、話しを聞くと美味そうじゃねえか。私にも作れよ」
霞沙羅のお昼ご飯は学食だったり、基地の食堂だったりなので、あんまり要求される事が無い。だから今度の休日のランチにでも作ろう。
「アーちゃん、あれは別の機会に騎士団で作ってね」
「今回はヒーちゃんのおかげで牛肉だけど、チーズステーキとケバブは豚肉か鶏肉にするよ?」
「それでいいわよ」
当然、ヒルダは一通り食べていて、それで気に入ったので依頼をしてきている。
騎士団のお昼ご飯としては大量に用意出来るし、ボリュームもあっていいかなとは思う。
やがて荷物の積み込みが終わり、全員が飛行船に乗り込んで、固定用の紐が外されて、浮かび上がっていく。
「よっしゃ今だ」
いきなり霞沙羅と吉祥院が紙飛行機を飛ばした。
「あー、あれ探知機に引っかかりますよ」
あの紙飛行機はドローンのようなモノで、この二人はあの飛行船がどういう魔法で飛んでいるのかを確認している。
弱いながらも探知と飛行の魔法が乗っているので、警戒用の魔力感知の探知機にも引っかかってしまうので、アリシアは慌ててルビィに【遠話】で連絡を取った。
「ルーちゃん、あの2人が魔力が乗せた紙を飛ばしたから。しばらく船の周りにまとわりついているから、探知に引っかかっても気にしないでね」
「え、なんダ?」
キャビンの窓から見ると、ルビィには何なのか解らないけれど、紙飛行機が2つ、船の周囲を飛んでいる。
やがて紙飛行機は2人の元に帰ってきて、飛行船はラスタルの方に飛んでいった。
「よしよし、あの発想を使って何かを作るとするでありんす」
吉祥院は早速、飛行船の魔術的構造のメモを取り始めている。
「あんなでかいもん作るんじゃねえだろうな」
「今更世界に合わないモノは作らぬでござるよ。そうと決まれば家に帰ってまずは基礎技術をまとめるでやんす」
「来ないとか言っておいて、何だかんだでこっちの世界を楽しんでるじゃねえか」
「今回は設備にも口を出す機会もあって、中々楽しかったでござるよ。いずれは魔法学院とやらに顔でも出してみるでありんす」
今回も自分用のお土産を持って、吉祥院は横浜に帰っていった。
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