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新たなる火種 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「なんでフィーネさんが来るの?」

「ギャバンとやらは先日あの館に来て、我と共に飲んだではないか」

「そうなんですけど」


 この女神様と同じで、館の運営側の色々な世界の神々も時々休みに来る。


 さすがにアンナマリーやシャーロットにはそんな事は言えない。霞沙羅や吉祥院のような魔術に深く関わる人間でないと気が付くことはないからだ。


 アンナマリーは無理だろうけれど、もしシャーロットが気が付くような事になれば、その時は正直に説明する予定だ。運営上そういう事になっている。


「あやつはこのような場所に根を垂らしておるのじゃな」


 フィーネはいつもの黒いドレスで来て、アリシアと腕を組んで歩いている。


 フィーネはアリシアより背は高いけれど、霞沙羅よりは低い程度なので、何とか釣り合っている状態だ。


「ここには孤児はおらぬのか?」

「ギランドルは戦神の聖都なので、戦災孤児が多いですね」


 この町も大神殿を中心に、6つの神殿が周りを囲むような作りになっていて、その一つに孤児院がある。


「ボクが一旦いなくなるまでは戦いが多かったので、孤児も多めでしたけど、今はどうなんですかねー。ギャバンさんもそういうのは把握してないですし」

「新たに増えておらぬのであれば、あの女神がやった事も無駄ではなかったのじゃろう。あの小娘の1年はノーカンにしてやれ」

「フィーネさんには色々フォローして貰いましたね。エリアスを連れていってなんですけど、神様の考え方って人間には解らないから」

「あやつもお主も同じ館の住民じゃ。お主は常々家族と申しておるとおり、我にとってもそれは同じじゃ」

「はーい」


 ただこの人には何も返せてないなー、というのがアリシアの悩みでもある。館でのマッサージとか料理とかの我が儘に付き合うことはしているけれど、あれでいいのかとは思っている。


 フィーネは最高位クラスの女神だけあって、本人の世界でアリシアが手を貸すような事態は起きないから、そういう返し方は出来ない。


 以前に霞沙羅に対しては、伝説の魔剣や聖剣の整備や修理をさせたことはあるようだけれど、それだけ。


 管理人だからと言って、必ずしも入居者の世界に乗り込んでいって、何かをやらなければならないなんてことはないけれど、この女神様には何かを返したい。


 次の、何百年後か解らないフィーネの役割を行う時までの平穏な日々を、ほんの一時でも提供すればいいのだろうか。


「ドラゴンが飛んでおるのう」


 町から外れた上空を5頭ほどのドラゴンが飛んでいる。でもあれはただのドラゴンでは無い。


「竜騎兵ですよ。竜騎と呼ばれる馬的な、小さめなドラゴンに乗っている騎士です。ウチの国にはいないんですけどねー」


 空を飛んでいるので小さくしか見えないけれど、背中には槍を持った人間を乗せて飛んでいる。


「あそこを飛んでるって事はまだ解決してないみたいだなー」


 どうも街道の上空を飛んでいるので、引き続き警戒をしているのだろう。


「とりあえず大神殿に行きますね」


今日も王女がいるのかは解らないけれど、街道警備の一端を担っている大神殿に向かうと、今日もいると言うから、会わせて貰うことにした。


「お姉様、どうかされました?」


 アリシアがこの前と違う人間を連れてきているので、ちょっと驚いている。ただ、フィーネは魔術師風の姿をしているので、関係者かなと思ってくれた。


「なんかちょっと疲れてません?」

「王女の私が表に出ているわけではないのですが、件数が多くて…」


 さすがに王女が現場に出て行くわけでは無いけれど、事件が起きる度に現場担当者からの報告が上がってきて、と疲労がたまっている。


 さっき竜騎兵が飛び回っていたのも、それに関連しているのだろう。


「じゃあ手早く話をしますが、フラム王国でも魔物の出現が所々でありまして、モートレルではこういう札をつけて、何種類かの魔物が協力して動いていまして、誰かに操られているようです。こちらではどうでしょうか?」

「確かに、ゴブリンとオークが一緒に襲ってきたりしているようです。その札は参考にいただけますか?」

「ええ、どうぞ。何枚も回収しましたので」


 王女は魔術については基本しか解らないので、側にいた王女お付きの魔術師にアリシアから貰った札を渡した。


「死骸を調べて貰えますか?」

「畏まりました」


 王族の人間に付き従っているくらいだから、魔術師はそれなりの階位にあるはずだ。


 女性魔術師はプリシラから指示を受けて部屋を出て行った。


「間違って混乱させてしまったら申し訳ありません」

「いえこちらも長く続いて困惑している所です。原因不明ですから、何か手がかりになる情報があれば欲しい所でした」


 そこまで話をしたら、プリシラ王女は伽里奈の横に移動してきて、寄っかかるようにして眠ってしまった。


「このような子供が、いっぱしの王女として気丈に振る舞っておるのじゃな。この者は幾つなのじゃ?」

「12才です」

「貴族の小娘より2つ下か。地球ではまだ小学生じゃな。まあ少しくらい眠らせてやるがよい」


 お姉様、と言われているけれど、そこまで面識の無い自分がこんなに信用されて良いのだろうかと思うけれど、ほんの少しくらい休ませてあげるのもいいだろう。


 空気を読む女神様も黙っているけれど、声を出さずに何かと話をしている気配がする。


「何してるんです?」

「ドラゴン共が我に気付いて怖がっておるのでな、気にするでないと説教しておったところじゃ」


異世界の女神とはいえ、竜と似たような龍の性質を持つ本物の神がすぐ側にいるので、それを察知したドラゴンが困惑していたのだ。


 静かに説教が終わって、フィーネもちょっとアリシアに身を寄せてきている。


「異郷の神など気にする必要もなかろうて」


 何も無いまま、だいだい30分程が経ってから先程の魔術師が帰ってきたので、プリシラ王女を起こすことになった。


「し、失礼しました」

「少しでも休めたならいいですよ」


 伸びを一つすると、ちょっと持ち直したようなプリシラ王女は元の席に戻って、お付きの魔術師の報告を聞いた。


「所持していることが解りにくいように少し細工をされていたのですが、同じ術式を施された札をが発見されました」

「そうですか。それで何か対策は打てそうですか?」

「そうですね、術式さえ解ってしまえば、教団と協力して解呪の結界を張ればよいかと」

「では関係者を招集して、手順を決めましょう」

「ははっ!」


 魔術師は王女の指示を受けて、対策本部に向かっていった。


「お姉様、良い情報をありがとうございました。父にも伝えておきますね」

「関連してる件でよかった。じゃあフラム王国にも伝えておくよ。お隣同士だから同じ人が出入りしてるのかもね。こっちも気をつけないと」

「貴重な情報ありがとうございました、お姉様」


といいながら、プリシラ王女はアリシアにモジモジしながら近寄ってきた。

 久しぶりだけど、あああれだと、アリシアは思い出した。


「もう一息、がんばってね」


 以前よりも近くにある頭を撫でてあげた。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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