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飛行船がやって来た -3-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 現場は混乱状態だった。想定を超えた数の魔物達に騎士団は苦戦していた。


 騎士団でもそれなりの手練れといえるメンバーが付いてきているけれど、相手の数が多く、地上だけでなく飛行タイプの魔物も襲ってくる。


 最初はゴブリンを相手にしていたと思っていたら、本来なら決して一緒にいるはずのない複数種類の魔物や魔獣が別々の方向から集まってきて、続々と増援のように襲いかかってきたのだ。


「治療が出来る者は、怪我人を直せ」


 専任の神官は2人いるけれど、使用回数はまだ多くはないとはいえ、最近は鍛錬でも治療を行うようになったアンナマリーも回復役に回った。


 一体一体は強さ的には大したことのないモンスター達だが、数が多いので苦戦を強いられていて、戦闘が長引いて怪我人が増えている。


 そんなところに、まさに地面を滑るように小柄な人影が突然現れて、通り抜けざま5体の魔物を真っ二つにし、森の奥から飛来した雷撃が空を飛ぶ4体の魔物を黒焦げにし


「私の獲物も残しとけよ」


 長い槍のような武器を持った長身の人物がそれを振るうと、7を超える魔物の胴体が飛んだ。


苦戦する騎士達の周りには淡く光る板のようなモノがまとわりついて、魔物達の攻撃を防いでくれる。


「数が多いでござるな」


 魔物達も見上げるほどの、もっと大きな人物が現れて、そのシルエットに怯えて動けなくなったコボルトの一体を大きな足で蹴り飛ばし、その先にあった岩に激突させて沈黙させた。


「うわあ、巨人だっ!」

「ち、違います、あの人は霞沙羅さんの仲間です!」


 突然森の中から現れた吉祥院の姿に騎士達が大騒ぎになりそうになったので、アンナマリーが慌ててフォローする。


 魔導師だと言っているのに、腕力が強すぎるのも悪い。見上げるほど大きな人物が一蹴りでコボルトをあんなに吹っ飛ばしてしまえば、幻の巨人族を連想させても仕方が無い。


「こんなに魔物なんていたっけ? ボクのあの探知機、壊れたかなあ」

「なんか様子がおかしいゾ。こんなに沢山の種類が揃うことは無イ」


 種類の違う魔物同士が仲良く徒党を組んで、一つの目標を襲うなんていう事はない。普通なら喧嘩になるか、それを恐れて弱い方がすごすごと逃げるはずだ。


「異変と言うなら気になるな。ここからはある程度原形を留めた状態で処理した方がいいぜ」

「そういえばこの世界も、そういう場所でありんすな。そんなワタシはアンナお嬢ちゃんを守るでござるよ」


吉祥院は怪我をした騎士達を治療しているアンナマリー達の側に行くと、安全の為に障壁を張った。


「おい、なんか部外者が全滅させると具合が悪いから、怪我してないヤツは手を貸せ」


 アリシアとルビィ、それと霞沙羅と、その知り合いだという大きいのが援護で来たからか、押され気味だった騎士団の隊員達は気合いを入れて、自分達も魔物達に斬りかかっていった。


  * * *


 魔物達はそれから大した時間もかからず、一体残らず駆除された。


 ではこの状況はなんだったのだろうか。


「うーん、なんか仕掛けられてるのかな」


 上手いこと綺麗な状態で駆除された個体を、アリシアとルビィで調べ始めた。


 最終的には魔物の数的にも30体はあるので、何か原因となるモノが出てくるだろう。


「お嬢も案外落ち着いてやってるじゃねえか。どうだい、隊長さんと先輩さん?」


 他の神官から治療を受けているオリビアとサーヤに霞沙羅が声をかけた。


「占拠事件以降はね、自分の立ち位置を見つけたみたいだね」

「私も負けないようにしないとねー」

「しかしこんな事がまた起きたら」

「出掛ける前はこんなに多くはなかったんだろ?」

「最初にゴブリンを発見した時は7匹くらいだったんだよ」


 討伐を開始したら、ドンドン魔物が合流していったようだ。


 だからアリシアの道具が壊れていたわけではない。


「おい、アリシア、なんか解ったか?」

「ええ、操られてますね」


 アリシアは小さめの札を一枚、霞沙羅に渡した。


 札が体に貼り付けられていた。


「これをやった魔術師個人のアレンジは入っているが、標準レベルの符術だナ」

「なんだ、私らが追ってるあの2人組とは、別物っぽいな…」


 魔物や魔獣を操る魔術は普通にあるので、何も珍しい事では無いし、霞沙羅が見ても高度な魔術ではなかった。


 吉祥院が瞬時に認識できなかった、幻想獣を操っていたと思われる術式があるのだとすれば、あまりにも幼稚な魔術だ。


 異変が、というから期待したけれど、残念ながらアシルステラの適当な魔術師が起こしたと予想される、ごく普通の事件だ。


「んだよ、不発か」

「本物の仕業であれば、この程度では済まないのではないかと思うで候」


 吉祥院も札を確認して、これは別物だと認識した。


「ボク的にはある意味よかったんですけど」


 そう何度もモートレルが狙われてはたまったモノじゃ無い。正直ここは特別に価値のある土地ではないはずだ。


「とにかく、モートレルの探知機を復旧させないとねー」

「あれが直るのですか?」


 修理中とは聞いていたけれど、アンナマリーは進捗まで聞いていない。


「その為にルーちゃんが来てるし、旦那さんも来てるし、吉祥院さんが修正案を出して不安定な所も修正してるし」

「これでアーちゃんのあの小さいのが借りられるゾ」


 とにかく集めた素材をすぐに加工しないといけないので、アリシアとルビィの二人がかりで、アンナマリー達も含めてモートレルに転移を行った。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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