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飛行船がやって来た -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 箱の中の食材はまだまだ全然鮮度を保ったままだった。変な匂いもしないし、腐ってもいない。なのでカードを取り替えて、一旦中を洗ってからまた収納して、夕飯の準備まで厨房に置いて貰うことにした。


 飛行船の担当者達は到着後のチェックとメンテナンスに入り、ルビィと旦那さんは午後に予定されている発生器設置の手順確認と、しばらく使われていない表示板の状況を確認する為に、騎士団の事務所に入っていった。


「すごいのね」


 アリシア達は、今後顔を出す事になるであろう吉祥院とのヒルダとの顔合わせの為に、執務室にやってきた。


 屋敷の天井は一般住宅よりも高いけれど、扉はそれほど変わらないので、顔面をぶつけそうになりながら、吉祥院はやってきた。


「確かに彼女なら(さかき)とまともにやり合えそうでがんすな」

「もう1人いるんだが、そいつはここじゃないとこに住んでいるぜ」

「ルビィとは真逆の体型ね」

「我が家は昔から背が高くてござるよ。ワタシだけ特に大きいでありんすが」


 ソファーに座っているけれど、座高も高ければ、膝の位置も高くて、窮屈にも見える。


 最初は確かに驚いたけれど、最近出来た信用できる知人の知人だと思えば、大きいだけの人なんだなと見えてくる。


 大きな掌に座ってしまいそうな子供には見せたくないが。


「ヒルダにとってはあまり面白い人間ではないかもしれないが、今色々と起きているからな。何かあったら知恵を貸してくれるぜ」


 挨拶ということで、遅れてレイナードが遅れて入ってきたけれど、やっぱり驚かれた。


 異世界人とはいえ、英雄と言われれば確かにそのような貫禄はある。が、魔術師のイメージからはかけ離れている。


「それで気になっているんだが、この町に設置されているという魔物探知装置だが、なんか安定悪くないか?」

「アーちゃんが言ってた話ね。探知の範囲に時間によってちょっと幅があることはあったけれど」

「この土地に集まる魔力と、山や森等の周辺に埋まっている岩石が悪さをしていると思うのである。術式や設計に間違いはないでありんすが、追加の補正装置があった方がいいのではないかと」

「そうなの?」

「ボクはこういう大きな装置はあんまり得意じゃないから特定できなかったけど、吉祥院さんは大きい魔法が得意だから、都市の封鎖とか出来ちゃったりするよ」


 霞沙羅の相棒という事もあって、ヒルダはまた設計図を出してきて、吉祥院に見て貰うことにした。


「やっぱり大きい方がいいね」


 少し前にアリシアが撮っていった画像ではちょっと上手く見えなかった。


 設計図をテーブルに広げて、吉祥院は意識を大きく広げて、モートレル周辺の魔力の流れや邪魔をしている要因を確認する。


 それから補正案を頭の中で構築した。


「アリシア君、今からワタシが書く素材の互換品がこっちにあるか教えてくれないか?」

「ええ、いいですよ」


 魔術は教えたけれど、魔術用の素材についてはちゃんと教えていない。せいぜい霞沙羅に魔剣の修正時に教えたくらいだ。


 なので吉祥院はアリシアに地球側の素材のメモを見せて、アリシアはアシルステラの素材で互換品を書き出した。


 その互換品は無事に全部あったけれど、一つ懸念がある。


「でもヒーちゃんて魔術素材を持ってないよね」

「分校ならあると思うわよ」


  * * *


 魔術素材を貰う為に、分校にやって来た。


「お前、異世界で何作ってるんだよ」


 幾つか素材の在庫が無かったけれど、有る物は分校の倉庫から貰って、ついでにアリシアの部屋にやって来た。


 そこで霞沙羅は瓶に入った、見覚えのある物体を見つけた。


「味噌と豆板醤です。順調に発酵してますよ」

「宝箱まであるぜ。いやー、これで食いもんが入ってたら私の夢が崩れる」


 と言いつつも、霞沙羅は宝箱を開けると、中はヒンヤリとしていて、瓶に入ったポーションが数本保管されていた。


「霞沙羅はポーションを発見した、でござる」

「うお、夢が叶った」


 霞沙羅はポーションを一本掴んで、高々と掲げた。とてもいい気分だ。脳内でファンファーレが鳴る。ファンタジーと言ったらこれだ。


 ザ・家捜し。


「それはいいとして、不足している素材はこの辺で見つかるのでありんすか?」

「多分ありますよ。マップがあるはずなのでメモしてきますね」


 アリシアは在庫担当者に確認しに行った。


「アーちゃんが作ってるこの茶色と赤いのは何?」

「こっちの味噌は大豆を発酵させた調味料だ。主には味噌汁っていうスープを作る為のモノだな」

「こっちの豆板醤は空豆と唐辛子を発酵させた辛い調味料でありんす。中華料理という、ワタシらの世界ではちょっと特殊な料理を作る気でありんすな」

「調味料なのね。ホントにアーちゃんは」

「こいつの食にかける執念はすごいな」


 アリシアがこの周辺で採れる魔術素材のある程度のマップを撮影してきたので、3人は一旦やどりぎ館に帰って、昼食後にまた午後に取りに行くことにした。


  * * *


「まさか冒険者まがいのことをやることになるとは」

「霞沙羅、喜んでいる場合ではないでありんすよ」

「カサラ先生は冒険者に憧れがあるのカ?」


 吉祥院の説明を受けて、ルビィも素材集めに参加してきた。


「霞沙羅先生のその長刀って、本番用なんじゃないですか?」

「そりゃあそうだろ。この辺にはゴブリンとオークがいるんだろ?」


 自分達とは別にアンナマリー達がモートレル周辺の警戒に出掛けている。アリシアが貸してある小型の探知装置に魔物の反応があったので、先程出掛けていった。


「吉祥院さんはあまり野外活動が得意そうには見えないガ」

「そんな事はないっぺ。軍の演習には参加しているし、向こうでも同じように素材の採集は行っているのでありんす」

「なんか戦力としておかしいような」

「ドラゴンの時の方がおかしいかっただろ」

「そうなんですけど」


 女神が2人。片方はオリエンスやギャバンといった主神と同格だった。

 今日はそうでもないけれど、ドラゴンはいない。そして騎士団が討伐に向かったのはスタンダードな魔物達。


 霞沙羅が持っている長刀は、最上級の幻想獣完成態を倒す為に作られた、まさに過剰な性能を持っているものだ。


「お、早速何かいるぜ」


 森の中を進む4人の目線の先には1頭の熊がいる。立ち上がった身長的には霞沙羅よりちょっと大きいくらいで、吉祥院よりも小さい。


「あれは可哀想だっちゃ」


 熊は実力差を感じているのか、4人を見て呆然と突っ立っている。


「向こうも止まっているから無視してやるか」


 熊では誰がやってもオーバーキルしてしまう。野生の動物で魔物ではないし、狩猟なり駆除は猟師に任せるとして、4人は静かに無視して、森の中を進んでいった。


「ああいうのもいるので時々超音波でも蒔くでありんす」

「進行方向にな」


 吉祥院が杖を振るって、目に見えない超音波を放つと、何かの動物が小さな悲鳴をあげて逃げていった。


「アーちゃんもあれは使えるのカ?」

「だってあれ、こっちの魔術に変換されてるからね。野外で収集活動をするには安全でいいよね」


 連れている馬とか犬とか鳥には聞こえないようにしないとダメだから、その辺が注意点だけれど、森の中に入るなら野生動物を追い払えていいとは思う。


「霞沙羅さんのその槍はどういう能力があるのダ?」

「巨大な光りの刃を生成して、ぶった切るんだぜ」

「爆風などは出さないでげすが、半径五十メートルくらいまでなら自由に距離を調整できるでありんす」

「吉祥院さんの杖ハ?」

「これは普段使いで本番用ではないでゲスよ。増幅機能と先端から防御障壁が十枚ほど発射されるでやんす」

「霞沙羅先生の作品だから」

「カサラ先生はすごいナ」


勿論、アリシアの魔剣を改造した技術を使って、こちらの世界でも使用できるように、対策が施されている。


 そこまで出来てしまえる人間が、学院の講義ではどんな魔装具の話しを披露するのかとても気になる。


「それで材料は見つかりそうか?」

「近づいてますよー」


 アリシアは素材が持っている魔力の反応を探りつつ、森の小道を進んでいる。


「お、ありましたよ」


 小道からほんの少しはずれた所に生えている木の根本付近に、背の高い、先端に黄色い小さな花みたいなモノがついている草を発見した。


 周辺の何本かの木の根元にも生えていたので、必要な分だけ引っこ抜いて、残り一つの探索を再会した。


「それにしても探知装置の件でキッショウインさんに指摘されることになるとは思わなかっタ」

「ワタシは、日本の元首都があった町を閉鎖する設備などに関わっているでありんす。大型の魔法や設備も得意なのであります。ルビィ女史には説明が難しかったりしちゃったりするのでゲスが、日本の町の地下には色んなモノが埋まってるので候。そういうのが悪さをするのでありんすから、色々と研究が進んでいるでがんす」

「他にもどういうモノを触っているのダ」

「学校の宝物庫などは、代々我が家が見ていたりするのであります」

「キッショウインさんくらいになると色々と携わっているんだナ」

「口出しのせいでルビィ女史の旦那さんの面子が潰れていなければいいでごわすが」

「多分そんな事は、無いと思うのだガ」


 魔法学院では設備管理を専攻して、そのまま王宮の魔術師として、探知装置のメンテナンス等の仕事をしている旦那さん。その旦那さんがメインで設計をしたモートレルの探知装置は基本的に間違っているわけではなく、土地の影響を考えていなかっただけだ。


 ルビィもそんな事を気にしていなかったから。吉祥院の指摘にも「そんなことはない」などとは言わず、素直に受け入れていた。


 いきなり現れた異世界の魔術師にプライドがズタズタにされたような事は無いと思う。そんな人間が魔術師としてずっと上にいる、英雄の1人と結婚するはずがない。


 実際、吉祥院も町を一つ使った探知装置には興味を示していたし、話もスムーズに進んだ。


 残念ながら魔術師としての格は吉祥院がずっと上だ。なので良い勉強にはなったと思う。


「もう一つも見つけましたよ」


 今度は木に成っている実だ。渋くて人間には食べれないけれど、魔力を含んでいる。カサラの長刀と吉祥院の杖で必要な分を落として貰って、収集は終わった。


「それで、同居人としてはアンナマリーのお嬢ちゃんが気になるのだが」

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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