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霞沙羅 ラスタルを満喫する -4-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 王からの褒賞よりも、色々なモノが見れた事に喜んでいる霞沙羅に町の案内をしながら、アンナマリーを回収しにエバンス家の屋敷まで歩いて行った。


「うお、あいつの家はこれか。これぞ貴族って感じだな」


 いかにも広い敷地、高くて頑丈な柵、大きな門、よく整備された庭、その向こうにある大きなお屋敷。日本にはない物件だ。


「国の中でもトップクラスの上級貴族ですよ」


 門の前にいる衛兵に声をかけると、2人共屋敷に案内された。


「馬車だぜ、馬車。結構豪華な感じだ」

「あれはエバンス家の馬車ですね」

「あいつホントに金持ちなんだな」

「謁見の間にもいましたけど、お父さんは3人いる将軍の1人ですからねー」


そしてそのまま応接に通された。廊下も広いし、所々に美術品も飾られていたり、使用人の姿もあるような屋敷の中で、さすがの霞沙羅もデジカメを構えることはなかった。


「すみません、お待たせしました」

「エリック君とは遊べた?」


 甥っ子の名前はエリック=エバンスだ


「え、ええ」

「なんだ、何か心残りがあるのか?」


 帰ろうとしているはずなのだが、アンナマリーは何か後ろ髪を引かれているように見える。


「エリックは今昼寝をしているのですが、目が覚めた時に私がいないことで騒がないか気になって」


 アンナマリーの脳裏には「あーん、お姉様がいない」と泣くエリックの姿が浮かんで離れない。


 アリシアがフラム王国に顔を出すようになってから何度か屋敷に帰っているけれど、毎回不在で、半年以上ぶりということもあって今日はすごく懐かれた。


 今は0才の弟の方に母親もつきっきりで、そちらに自然に愛情が注がれてしまっているので、今日はその反動とばかりにずっとベタベタして離してくれなかった。そういう事もあって、帰りの挨拶をどうしようか悩んでいるのだ。


「お前、いい姉ちゃんしてるんだな。私は実の弟にもそんな考えをしたことは無かったぞ」

「う、うーん、ボクも夕飯の準備があるからねー」

「今日の夕飯はなんだ?」

「シャーロットに喰らわせてやれと、フィーネさんが牛肉を買ってきたので、ローストビーフです」

「「それは食べたい」」


 目を覚まして夕食くらいは一緒に食べてから、適当な頃に迎えに来て貰おうと思ったアンナマリーは、申し訳ないけれどローストビーフの魅力に完敗した。


「どうした、アンナマリー?」

「お、お爺様」


 アンナマリーは祖父のモーゼス公爵に今心配していることを相談した。


「ところでアリシア君、付き合いのある家の人間達がキミの料理を食べたいと言ってきてね」

「ボクのですか?」

「一度晩餐の料理を作ってはくれないだろうか」

「夕食ですか? 平民出身のボクですよ?」

「聞けばヒルダ殿にも振る舞っているそうだし、なによりこの孫娘が随分と君の腕を信用している。先日も国王陛下が大夫気に入っていたではないか。勿論、我が家の料理人達を使って貰っていい」

「そ、そうですか?」


 アンナマリーをチラリと見ると、一つ頷いた。


 まあ、貴族向け料理ではライアの劇場も好評のようだし。


「我々がどういう食卓を囲っているかは、孫娘から聞いて貰えるといいが、毎日毎日君が考えているような料理を食べているわけではないのだ」

「そ、そうですか」


 《う、うーんじゃあ、まあ、先日国王様と一緒に食べているし、エバンス家の前当主で、前将軍が勧めてくるというのであれば、大丈夫なのだろう》


「じゃあ、甥っ子には食事会があるからまた近日中に来る、と伝えておけばいいんじゃないのか?」

「そ、そうですね」


 《あ、エリアスが見てた?》


 突然アリシアの手元に犬のぬいぐるみが転送されてきた。そして入れ知恵もしてきた。


 《もう、わかったよー》


「これと同じようなぬいぐるみをアンナ…、マリーが持っていったでしょ? 今度それを持ってくるから遊びましょって、メモを残したら?」


 さすがこの世界の女神だ、と霞沙羅が苦笑いをしている。エリアスとは3年以上の付き合いがあるだけに、これだけで何をしてきたのか察したようだ。


 《アンナマリーは入居者だしねー》


 これはこれで管理人の仕事だ。


 ちなみに、何個か作ったこれは豆柴のぬいぐるみだけれど、それぞれ毛の色が違う。一つはシャーロットが入居初日に持っていって、その後アンナマリーが持っていって、これは部屋に残っていた

ぬいぐるみだ。


「そうする」


 アリシアからぬいぐるみを受け取ると、甥の部屋に向かっていった。


「そちらはカサラ殿でよろしいかな?」


 残されモーゼス公爵は、2人の前に座り、まず霞沙羅に声をかけてきた。


「ええ、そうですが」

「アリシア君とは別に、孫が色々とお世話になっていると聞いている。同じく軍に関わる人間として言わせて貰うが、あのまだまだ見習いの孫娘に色々と教えては頂けないか?」

「そうですね。最近は年頃の女の子の面も見せていますが、なかなか勤勉ですよ。将来の素質を認められてあの館に来たのだから、同居人としてサポートはしますよ」

「かたじけない。アリシア君からは魔法を教わっていると聞く。引き続きこれからもお願いする」

「はい、畏まりました」


 そこで一度目線を下に落として、再度2人を見る。何を言うかと思ったら


「正直な意見を聞きたい。我が孫娘はどうか?」


突然の言葉に、え、言っていいのかとアリシアが驚く中、霞沙羅は堂々とした口調で


「まがりなりにも英雄と呼ばれる人間から言いますが、戦士としてはそれなりですね。当然、魔術的な腕前もそこそこでしょう」

「そうか…」

「ただ、私はこれでもそれなりの規模の部隊を纏める人間ですから、それだけでお孫さんを評価する気は無いです。私自身はそれ相応の結果を出して軍内部では上から数えた方が早い階級を貰っていますが、私付近の階級の全員が私ほどの力を持っているわけではありません。ですが組織とはそういうモノでしょう? それぞれの理由があってそこにいるのです」


霞沙羅の言葉は、家族に対して何かを誤魔化しているような訳では無い。


「それでもお孫さんは少しずつ力をつけていますし、何より人を惹きつけるモノを持っています。館では最古参の最も強大な力を持つ魔術師も早い段階から彼女の応援をしています。騎士という組織の中でどこまで上がれるか保証は出来ませんが、素直さを武器に、単純な腕力では無い人間力を発揮できれば、ついて行きたい、使いたいという人間はいるでしょうね。なあ、こっちの英雄殿」

「そうですね。折角あの館に来たからにはエバンス家にも交流のないボクの知り合いに会わせてあげたいですし、フラム王国だけではない広い世界を見せてあげたいです」

「その経験と知識をどう使うかで、充分化けますよ」

「そうか、ありがとう。今後もあの孫娘をよろしくお願いします」


将軍まで勤め上げたご隠居さんも孫であるアンナマリーの事を解っているから、側にいる人が同じような評価をしている事を確認しつつも、ちゃんと見てくれている事に安心をしたようだ。


 そんなやり取りがあったことなどつゆ知らず、エリック君にぬいぐるみとメモを置いて戻ってきたアンナマリーを連れて、やどりぎ館に帰った。


  * * *


 夕食は多数決の結果ローストビーフ丼という形になった。


 料理発祥の国から来たシャーロットがその変わり果てた姿に驚愕しながらも、美味しい美味しいとモリモリ食べて満足した夕食が終わると、通信用の鏡を通してイリーナから連絡が入った。


「教皇様も霞沙羅さんに会いたいの?」


 2回とも突然霞沙羅が演奏したから、聴くことは叶わなかったけれど、神官達からの評判を聞いて是非会いたいと思ったようだ。


「出来れば自分の礼拝を行う時にオルガンを演奏して欲しいって」

「えー、まあ霞沙羅さんには言っておくけど」


 霞沙羅はセネルムントから帰ってから、自慢のシンセイサイザーで曲の練習しているようだけれど、どうなるだろうか。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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