更なるパワーアップ計画 -2-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
「アリシアって、神官としてもいけるのね」
「魔術的な視点で見てるだけだよ。だからボクは教義とかそういうのを厳守して生きる気は無いから、適当な所までしか神聖魔法は使えないしねー」
イリーナが見ても、初級向けテキストとしては持って帰ってそのまま雛形として使えるくらいにはとても良かった。相手への「愛」という精神が明記されているのも良かった。
最上級の神官の目から見ても本当によく解っている。パートナーに女神がいるというだけではないだろう。
言い方は悪いけれど、神聖魔法のシステムをよく解っている。神官としては教義も必要だけれど、それだけではダメだという事だ。
「これは、教皇様にも提出するわ」
「あんまり事が大きくならなければいいけど」
「それと、カレーを作って貰えない?」
「あ、許可下りたの?」
「ヒルダとルビィに聞いたら美味しかったって。占領事件の後とか、この前ここの騎士団に作り方を教えたって言ってたし」
「じゃあ、あとでメモを渡すから、セネルムントでその材料が手に入るか確認して? ひょっとしたらラスタルじゃないとダメかもしれないから」
「ええ、わかったわ」
「あとね、同じ食材で別のも作れるから。それはグラタンの時のホワイトソースを使うから、カレーと違って作りやすいかな」
「グラタンは子供に好評よ。じゃあ折角だしそっちもお願いね」
「あらイリーナも料理の話?」
勉強会が終わったから、鍛錬に誘いにヒルダがやって来た。
「巡礼者向けの料理よ。折角セネルムントまで来てくれた人達に、美味しいモノ食べて貰って送り出そうって皆が賛同してくれて」
「それでカレーを? 確かに騎士団でも好評だものね」
「それでヒルダはもう大丈夫? 私は話が終わったわ」
「じゃあイリーナ、早くやりましょ」
折角アリシアがいるから、結界を作って貰えば本気でやり合える。
「アリシアは向こうの世界で誰と鍛錬しているの?」
「いつもは霞沙羅さんだけど、たまに榊さんていう剣士の人も来るよ。剣士っていうか騎士みたいなもので、侍っていうんだけど。それとね、イリーナも「気」を覚えて帰って欲しいんだけど」
「き?」
「ヒーちゃんとやりあった後に教えるよ。ヒーちゃんには教えて、今は基礎鍛錬をやって貰ってる最中なんだ。あのさ、こっちに来るか解らないんだけど、占拠事件の裏にいた人達と数日前に斬り合いになってねー、ボクや霞沙羅さんと同じくらいの人と、ルーちゃん以上の魔術師が出てきたから、それの備えなんだ」
「そんなのがいたの?」
そういえば学院にだけ報告をしていて、ヒルダにはしていなかった。
アリシアと同等の剣士とルビィ以上の魔術師とか、占拠事件の時にいなくなっていて本当に良かった。
「なんか変な道具をばら撒いてるみたいだから、気をつけてねー」
またフラム王国にちょっかいをかけに来るかどうかは解らないけれど、下手に他の国に道具を流されて、新たな争いに発展するかもしれない。
* * *
「イリーナは大神殿の聖法器を使っていたのか」
「最後の方だけですけどね。それで神殿に返してしまったので、その前に使ってたハンマーを持ってきてます。それでも教団では名の知れた老神官に託された立派な聖法器ですよ」
「どんな性能なんだ?」
「城壁を破壊できるハンマーです。大きさはドラゴン退治の時に持っていたのと同じくらいですね」
「そうか」
まあとりあえず見てみよう。自分もあれとは違うけれど、場合によってはハンマーを使う事があるから参考にしてみたい。
「それで、ここで話をします? モートレルにします?」
「聖法器だし、神がいる向こうがいいだろ。それとお前、あいつらに気功を教えてるだろ。ちょっと見てやるよ」
「じゃあそう連絡しておきますね」
早速鏡を使って明日の予定を連絡する。霞沙羅の件以外にも確認する事がある。
「ビーフシチューはボクがいなくても出来そう?」
今回のビーフシチュー作りは、そこまで手を出していなくて、後ろから指示を出しただけだ。
最終的に味見はしたけれど、向こうの厨房で向こうの人の手で作られた。
「ちゃんと出来てたわよ。次作る時にはまだ聞かないとダメかもしれないけど」
「その時はその時だねー」
これでデミグラスソースが出来たわけだから、ここからの派生品を作る事が出来るようになった。またパスカール家を拠点に、アシルステラに料理を持っていこう。
「以前より量が多くて豪華に見えるから、背徳感に駆られながらもイリーナも喜んで食べていたわ」
「それは良かった。それでね、明日は霞沙羅さんとそっちに行くから」
「ええ、待ってるわよ」
* * *
「これであとはライアとハルキスか」
「ライアは隣の国だから、また今度料理を教えに行く時にどさくさ紛れに行くしかないですねー」
カサラはまたあのお気に入りの戦闘服でやってきた。もうこの世界に来る時の普段着にでもする気だ。
そんな霞沙羅はヒルダと仲良くやっているので騎士団にはもう顔パスで入れてくれるようになった。
「後で冒険者ギルドに連れて行ってくれよ」
「まあいいですけど」
《またTRPGの影響ですか。そういえば連れて行っていなかった気がする》
鍛錬用のグラウンドではイリーナとヒルダが霞沙羅の到着を待っていた。
これはいつもの通りだ。
「2戦もするの?」
「所詮鍛錬だしな。問題無いだろ」
霞沙羅は今日も長刀を持ってきている。今回は刀は持っていない。
「イリーナ、後でそのハンマーを見せろよ」
「さすがにこのハンマーではやらないわよ」
鍛錬で使うハンマーは、たまにここに来る事があるので、騎士団に置いてあるものを使う。
「まあまあ、早く始めましょう」
ヒルダも霞沙羅を気に入ってしまって、もう異世界人だとかそういうのはどうでも良くなってしまっている。口は悪いけれど、さっぱりした性格も気に入っているとか。
今ではただ強いのとやりあいたい、というだけになったし、霞沙羅もいい鍛錬相手が一人増えたので、たまにやろうかというふうに考えている。
これでハルキスが追加されたらどうなるのだろうか。
「早く早く」
と急かされるので、アリシアは結界を作らされ、霞沙羅はヒルダとイリーナそれぞれと鍛錬を行う事になった。
「イリーナは楽しそうだなー」
イリーナは聖職者という事で刃物を持つ事はなく、神官が標準で身につける棒術を発展させてバトルハンマーで戦っている。
オリエンス教の神官の中ではトップクラスの肉弾戦能力は持っているけれど、ヒルダやアリシアに比べれば劣るので、霞沙羅には勝てない。
それでもセネルムントにいては思いっきり体を動かせる相手とはなかなか会うことが出来ないので、ご機嫌な表情をしている。
「うーん、エリアスに確認してみようか」
アリシアには一つの構想があるけれど、自分がそこまで高位の神聖魔法を使う事が出来ないから、イリーナに協力をして貰わないと完結出来ない。
神聖魔法の知識だけはあるので、正解だとは思うのだけれど、何せ前例が無いので、愛する女神様に確認してから動いた方がいい。
お飾りとはいえ特別名誉神官なる地位を貰っているので、別の部分でも教団に貢献してもいいかなとは思う。
となると、説明の為の仕様書をデバイスに書き込んでいると、霞沙羅達の鍛錬が終わった。
「このハンマーは面白いぜ。そもそもハンマーなんざ持ってるヤツはこっちじゃ少ないからな」
引き続き、霞沙羅によるバトルハンマーの確認が始まった。
ハンマーといっても、棒の先に小さめのハンマーがついているだけなので、重量はあまりない。
イリーナが持ってきた愛用の聖法器は、そのハンマー部分に仕込まれた衝撃魔法のおかげで、イリーナの腕力で殴れば、城壁もバラバラに砕け散るほどの威力になる。
当然大きな魔物であろうとも、その衝撃をくらえばひとたまりも無い。
「威力のくせに持ち運びも楽そうだしな。見た目が地味な分、相手から見れば侮るだろうな。おい、リーダーから見てこれ戦車いけそうか?」
「一撃でバラバラだと思いますよ。積んである砲弾が誘爆するかも」
「それでなんか不満は無いか? 無ければ無いで綺麗にしてやるぜ」
「不満は特には無いわ。引退した神官から譲り受けたものだから。確かに見た目がちょっと古くなってはいるけれど」
「塗装がはげてるしな。必要なら言ってくれ」
「え、ええ」
霞沙羅はいいものを見れたようで満足した所で、「気」の話を始めた。
「実際やるのは2回目だが、大体無意識である程度はやってるんだよな」
「私もまだ基礎しかやってないけれど、中々面白い事に使えそうね」
「お前達がある程度使えるようになったら、今日みたいな鍛錬であっても、こっちも使い始めるぜ」
「それは望む所です」
「アリシアのヤツと定期的に連絡を取ってるんなら、その時にでも進捗を話しておいてくれ」
ヒルダの方はもう既に毎日やっているので、じきに本格的に教える事になるだろう。
イリーナの方はまだ先になるだろうけれど、これから毎日の鍛錬に組み込んで行くようだ。
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