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姿を現した悪意 -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 シュークリーム作りは午前中のウチに終わり、昼食も終わったので、そろそろ手稲にある一ノ瀬寺院の札幌支社に行くことにした。


「帰りはワタシの方でやるでゲスよ。エリアス殿はじっくり練習をすると良いでござる。あとこれ」


 吉祥院は一枚のメモリーカードをエリアスに手渡した。


「これは?」

「先日出版された広報誌の、霞沙羅の撮影風景でござるよ。文化財になってる実家の別邸で撮影したので、立ち会ったのでありんす。動画と静画の両方を入れてあるだっちゃ」


「わあ、ありがとう」


 貴重な撮影の裏側を納めたデータを貰って、エリアスはぴょんぴょん跳んで喜んだ。


 今日は黒ネコのアマツくらいしかいないし、タブレットPCで見ながら、館を広く使って歩いたり、ポーズを取ったりする事が出来る。そのついでに霞沙羅の仕事風景を勉強しようと思う。


「一度霞沙羅の撮影風景をこの目で見てみたいわね」

「おや、お誘いはないでござるか? 一度広報にでも言っておくでござる」

「そろそろ行きます? エリアス、何かいい事あった?」


 シュークリームの準備をしてきたら、エリアスがご機嫌状態だったので、伽里奈(アリシア)は聞いてみた。


「吉祥院に霞沙羅の画像データを貰ったのよ。これを見て勉強するの」

「そ、そう? 霞沙羅さんには黙っておいた方がいいかなー」


 例のアイドル活動の事は、本人はあんまりやりたいとは思っていなくて、エリアスは自分の事を広報誌だけを参考にしていると思っている。それ以外の画像を手に入れていると知ったら、本人はかなり嫌がるだろう。


「薄々は気がついてござるよ、私がいるのでありますから」

「じゃあそろそろ送るわよ」

「うん、エリアスもゆっくり練習してね」


 シュークリームが入った箱を持って、伽里奈(アリシア)と吉祥院はご機嫌のエリアスに転送された。


「異世界とはいえさすが女神にござるな」


 手稲の住宅地の外れ、山の麓にかかる位置にある一ノ瀬寺院にやってきた。


 一般人が入ることが出来る寺院部分の裏手に職員の住居や練習所が必要となるので、こんな町の外れに作ったと言っていた。


「裏手に入る気はないでござるが」


 入り口付近にいると、一ノ瀬と藤井が奥から出てきた。鍛錬中だったのか、ジャージ姿だ。


「な、伽里奈アーシアと吉祥院様」

「すまんでありんす。ちょっと見に来たでござる」

「ボクはシュークリーム作ってきたから」

「あ、伽里奈君ありがと」

「2個しか入ってないから、後で2人で食べてねー」

「わ、私のデザート!」

「じゃあ冷蔵庫に入れてくるわ」


 藤井はシュークリームを受け取ると、すぐそばにあるマンションに入っていった。


「あれ、寺院に住んでるんじゃないんだ」

「学生は勉強があるからあっち、って用意されたのよ」

「だから藤井さんが料理を作ってるんだねー。変だなと思った」

「そ、それで今日はどういう御用で」

「いくらワタシと言えどいきなり中を見せて貰おうとは考えてはいないでごんす。とりあえずどこにあるか見てみたかったのでござるよ」

「ど、どこかで、お茶くらいは、出します」


 ここに作ってまだ60年と、割と新しいからか、寺院のお堂は和洋折衷のコンクリート建築だ。


 そのお祓いの為の待合室に通してもらい、事務員の人にお茶を出して貰った。


「知っての通りワタシも神聖魔法が使えるわけで、研究もしているのでござるよ。大僧正一家ともライバル関係にありはするのであるが、仲が悪いわけではないだっちゃ」


 本職でも無いし、魔術を専門としているので吉祥院もある程度の神聖魔法くらいしか使えない。ただし、知識だけはかなり持っている。


「軍でも教育をする身だったりしちゃうので、色々勉強中なのですな」

「さすがに伽里奈アーシアは、神聖魔法は使えないのよね」

「信仰してないから」


 世界が違うし、地球の神様とはまったく縁の無い人類なので、奇跡の力を借りることは出来ない。ただ、吉祥院と同じように知識だけはある。


「いつかで良いので、ちょっと練習風景でも見せて貰えると助かるのでござる」

「ま、まあ吉祥院様のお願いとあれば」


 神聖魔法と魔術の融合がこの一ノ瀬寺院の特徴だ。国内を見渡してもそれほどお目にかかれない。


「ところで何やらせわしないでござるな」


 そこに長いローブ状の上着を着た男性が入ってきた。


美哉(みかな)様、事件です」

「え、そうなんですか?」

「おう、警察沙汰でござるか。であれば軍関係のワタシ共は去った方がよさげでありんすな」

「き、吉祥院様でありましたか。失礼致しました」


 座っていたから視界から外れていたけれど、さすがの巨体と化粧に、男性は誰がいるのかを一発で認識した。


「いえいえお気になさらず。ここから先は寺院の領域だっちゃな」

「え、どこで事件?」


  * * *


 市内を流れる豊平川を伝ってきたと思われる幻想獣が数体、すすきのに割と近い土手辺りから上陸してきた。


 姿としては大きなワニというか、足の長い四足歩行のハ虫類の姿をしているそうだ。


 幻想獣の数的には道警の出番で、先日の大学襲撃で軍人の霞沙羅に良い所を持っていかれた雪辱をはらさんとばかりに、とても迅速に出動している様子。そして協力業者として一ノ瀬寺院も出て行った。


 スマホで警報状況を確認すると、すすきのの周辺で道路が封鎖されているようだ。


「おそらく成長態であろうと、駐屯地から連絡があったでござるよ。ちょっと強めでがんすな」


 繁華街近くだし、周囲を気にしながらの作戦ともなれば、慎重にならざるを得ないし、時間もかかるだろう。豊平川から上がる前に取り囲めなかったのだろうか。


「シャーロットは大丈夫ですかね?」


 すすきのよりは北側の大通りから札幌駅の間を見て回ると言っていたから、大丈夫だと思うけれど、念のため連絡をしてみる。


「あらら、電波が」


 事件が起きているから今は色んな人が電話なりネットをしているのだろう。回線が混み合って通話が出来ない状態だったので、メールとSMSを送っておいた。


「とりあえずどこかのランドマークに転移をするでありんす」

「どうしましょうか」


 と悩んでいると、シャーロットからSMSが帰ってきた。


「札幌駅周辺でハンバーガーを食べてるみたいです。家電屋さんの一階ですかね」

「そこに行くなら簡単でござるな」


 今回は吉祥院に転移を任せ、まずは駅前の広場に転移した。


 周辺にはスマホを見ている人ばかりがいたので、急に伽里奈(アリシア)と吉祥院が現れたことには気が付かれなかった。


 現場からはかなり離れているので、さすがにここまでは警察の姿は無いけれど、地元民も旅行者も皆スマホで幻想獣関連の情報を見ているようだ。


 駅北側のビルにあるハンバーガー屋に行くと、4人で軽いモノを食べながら座っていた。


「あらどうしたの? 吉祥院さんまで」


 背が高いだけでなく、紅白の袴姿の吉祥院の姿には、他のお客達に驚かれたけれど、札幌駅を挟んだ北側の区画だからか、事件が起きていることを気にしていないのか、知らないのか、のんびりしている。


「幻想獣が豊平川から上がってきたって、すすきの周辺で騒ぎになってるんだよ」

「え、そうなの?」


 伽里奈(アリシア)に言われて早藤達もようやくスマホで確認し始めた。


「現場はここからちょっと離れてるんだけどねー」

「あ、ホントね」

「女子4人はどうするでありんすか?」


 事件場所が鉄道路線から離れているので、小樽行きの路線は問題無く動いている。慌てるような事態ではない。


「時間が経てば警察が退治してくれると思うけどねー。買い物は終わったの?」

「帰る前にちょと話をしていただけなのよ」

「それなら大丈夫かな。ここならいいと思うけど、念のため情報は気にしておいてね」


 まさかこっちまで現場が移動してくることは無いだろう。規制区域も変わっていない。


「伽里奈君はどうするの?」

「ボクはまあ、地元民じゃない吉祥院さんに付き合おうかなー」

「ワタシは軍人でありんすから、警察の邪魔をする気は無いでありますが、近くにはいたいと思うだっちゃ」

「すごく強そうな人がいるけど、伽里奈君も気をつけてね」

伽里奈(アリシア)は無事が確認された4人と分かれた。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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