姿を現した悪意 -1-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
個人的な興味として、日本文化の事が知りたいシャーロットは、授業の隙間などに、同じクラスの女子生徒に積極的に話しかけるくらい社交的な性格だから、年下という事もあって、妹ポジションというマスコット的な立ち位置を築きつつある。
超優秀な魔術師だけど、日本文化については全くのド素人。それを素直な好奇心で向き合おうというしてくれているので、日本人としては嬉しくて、皆親切に教えてくれる。
とにかくこれから冬季期間の雪にまみれた生活の事は、「注意しなさいよ」と色々とアドバイスをくれる。
そこで今後の雪道対策で靴が欲しいと言ったら、早藤達女子が、お店の多い札幌に行こうと誘ってくれた。買い物ついでにいいカフェがあるので、そこに行こうともなったそうだ。
「ロンドンの小娘も日本を満喫しておるのう」
この前はエリアスと一緒にフィーネのガラス工房に来て、ガラス細工を幾つか購入していた。
「機会があれば横浜も案内するだっちゃ」
「だったら富士山を見てみたいわ」
「ワタシの部屋から見えるでござるが、実家近くの江ノ島からも見えるでありんす」
「素直に静岡か山梨にでも連れて行ってやった方が良くねえか?」
吉祥院は鎌倉生まれ、霞沙羅は横浜生まれ、どっちの市からも見える場所はあるけれど、距離が離れていてやっぱり小さくしか見えない。
ちょっと電車に乗れば隣の県に行けるのだから、登山するワケでも無いし、折角ならどーんと大きく見える富士山を、日帰りで見にいけばいい。
「北海道も色々見たいけど」
「冬はどこに行っても雪がついて回るぜ。ただまあ冬にしか楽しめないイベントも多くあるからな」
「札幌の雪まつりは行こうねー」
スキーもあるし、スノーモービル、ワカサギ釣り、各地でのイルミネーション。北海道ならではの見所は色々ある。
「後は色々食べたいわ」
「寿司であるとか海鮮丼など、異国の者として刺身系はどうなのじゃ?」
「日本のお寿司屋さんには一度行ってみたいわ」
ロンドンにも現地法人の和食屋さんだの回転寿司だのがあるけれど、折角日本に来たのだから、本物のお寿司は食べたいとは思っている。
「アンナマリーは生はきっぱりダメだったけど、あの世界の人間だからねー」
アシルステラで生食を広めるつもりは無いから、アンナマリーには刺身系はあまり勧めていない。
ただ、天ぷらや天丼は喜んでくれた。
「小樽は寿司屋まみれだぜ。値段も色々あるけどな。関東育ちが言うが、こっちの回転寿司でも全体的に美味いぜ」
「ごめんねー、さすがににぎり寿司は作れないから」
「小僧の料理を否定するわけではないが、この国を楽しみたいというのであれば、外食は遠慮せんでもよいぞ」
「アリシア君の料理も誘惑してくるでげすが」
「勉強やレポートで詰まっちゃう事もあるしねー。気分転換に外食に行ってきてもいいと思うよ。駅の向こうだけどハヤシライスが美味しいお店があるんだー」
「函館の塩ラーメンは癖が無くて良いぜ」
「ハンバーガーも良いでござる」
「もー、誘惑しないでよ」
「まあ、誘ってくれれば付き合ってやるぜ。13才じゃ、一人で他国のめし屋に入るのも抵抗あるだろうしな」
来て早々、中々に誘惑の多いシャーロットであった。
* * *
先日の魔剣の事で、また霞沙羅が横浜に行ってしまったけれど、引き続き吉祥院は小樽での休日を楽しんでいる。
外を歩いても、そろそろ観光客以外はこの身長を気にしなくなってきた。
近くのコンビニのバイトも「また来た」くらいの反応になった。
「ここのコンビニ、何か良いわね」
ついてきたシャーロットはジュースとスナック菓子とカップに入ったフライドチキンを買った。
店内調理のカツ丼が誘惑してきたけれど、今日は我慢した。
「ワインの品揃えが良いのでござるよ。関東には茨城と埼玉の辺鄙な場所にしか無いのが残念なのでありんす」
「伽里奈も料理用のワインを買ったりしているのよ」
エリアスも頼まれていた赤ワインを1本買った。
「ところで一番近いスキー場ってどこにあるの?」
「この坂を山に向かって歩いていくとあるわよ。行くならやどりぎ館の近くにバス停があるから、乗っていくといいわよ」
今いるコンビニから真っ直ぐに伸びる道があるけれど、緩めの坂道を歩いて十五分程度はかかるのでスキー場は見えない。
それでも下宿からバス一本で気軽に行ける場所にスキー場があるのは魅力だ。
是非行こう、そう確信してシャーロット達3人は館に帰った。
* * *
土曜日になって、シャーロットは予定通りに朝から、早藤達女子数名と札幌に出掛けていった。お昼ご飯は札幌で食べると言っていた。
同行するのも高校生なのでファストフード店に行く可能性は高いけれど、シャーロットは微妙に違うという日本版のお店も体験してみたいと言っていたので、そうだったとしても楽しみのようだ。
フィーネは今日も占いの予約が入っているので、お店に出掛けていき、システィーは今日はお休みなので札幌のスープカレー専門店に行ってしまった。
アンナマリーはいつも通り、今日もモートレルでお仕事だ。
吉祥院は一ノ瀬家の寺院を見てみたいそうなので、午後からアポ無しで突撃するようだ。
「アリシア君、あの一ノ瀬の2人はまたワタシに恐縮してしまいそうなので、ついて来て欲しいのでありんす」
「だったら一ノ瀬さん達に何か持っていこうかなー」
少し前にも「持ってくよ」と言ってしまったし、自分と霞沙羅の計画にも協力して貰っているので、折角の機会だからその御礼としてシュークリーム作る事にした。
入居者達が夕飯の後にデザートとして食べる分も一緒に作っておけばいいだろう。
「アリシア君は一ノ瀬寺院の札幌支社に転移が可能でありんすか?」
「寺院に言った事は無いですけど、手稲の駅までなら行けますよ」
「だったら私が寺院の前まで送るわよ」
転移と聞いてエリアスがニコニコ顔でやって来た。
「世界が違うけど出来るの?」
「私がいる場所の周辺なら問題無いわよ。寺院には行ったことはないけれど、小樽からそんなに遠くないでしょう?」
実際、エリアスのいる位置から半径100キロ程度であれば、行った事がなくても転移は可能だ。
「じゃあお願いするね」
エリアスは館に残ってモデル業務に向けたポーズとか歩き方の練習をするそうだ。
「じゃあそれまではアリシア君の書類でも読ませていただきたいで候」
「ええ、どうぞ」
吉祥院は伽里奈が纏めた、こちら側の神聖魔法についての書類を読むことにした。
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