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アリシアのとりあえずの居場所 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 管理人としての日常生活の合間を使って。アリシアが学院職員用の記録盤(デバイス)に勝手に追加した機能の一つである、空中投影機能の設計レポートを提出するために、魔法学院へと出向いた。


「ここに来なさい」と指定されたのは大賢者タウのいる学院長室。中にはタウと2名の賢者、それと設備管理の責任者の1人が待っていた。


 この人数となると、今日の説明は短時間で済みそうだ、と思いながら、アリシアは早速追加機能の説明を始めた。


「今回の機能は設備とは関係ないですが」


 記録盤(デバイス)本体にはクリスタルを使った、いわゆる画面が埋め込まれているけれど、これがあまり大きいわけではないし、これだけだと霞沙羅(かさら)吉祥院(きっしょういん)に魔術を教える時に不便だ、と魔力粒子によるスクリーンを空中に展開して、集まった二人に大きく見せる機能をつけた。


 何でこんな機能になったかというと、電化製品にある液晶プロジェクターが良さそうだと思ったからだ。


 使われている魔術的には【幻影】系統ではあるけれど、記録盤(デバイス)出力にも限度があるので、実際の【幻影】魔術より小型の表示にして、省エネルギー仕様にしてある。


「あの、お前の講義で各座席に飛ばした機能とは別か?」


 王者の錫杖等の講義をした時に質問してきた賢者が資料を見ながら尋ねてきた。


「あれはこれの発展型ですね」


 そういえばこの機能はルビィとタウにしか見せていないので、この機能を使って、収納されている別のデータを見せた。


 机の上に置いた記録盤(デバイス)の上には最大4面までの、横長テレビでいう26インチくらいの半透明スクリーンを発生させる事が出来る。


「他の機能になると記録盤(デバイス)の出力もアップしないとダメなんですけどねー。とりあえず順序立てて出していきますね」


 日本で勝手に改造をしてしまったから、どの機能のせいで学院の設備と連結できなくなるのかが解らないので、アリシアが提出してきた機能を、サンプルの記録盤(デバイス)に1つずつ乗せていく計画だ。だから焦らないで欲しい。


「だがこれはこれで便利そうだな。早速つけていこうではないか」

「では設備課でメンバーを集めて、早速明日から動きましょう」


 一つ機能を乗せて、学校設備に接続できるのであれば、安全だと判断して、希望者のデバイスを拡張する、と繰り返していく。


 逆に、接続できなくなったら、どうすればいいのかの解決方法を見つけていく。


「ところでアリシアよ、今表示されているこの箱は何だ?」


 何も考えずに、目についた適当なデータを表示させているのだが、さすが大賢者となれば目ざとい。


「ボクの、いえいえ、私の冷凍魔法とか冷蔵の札の次の構想なんですけど、向こうの世界の家庭には冷蔵庫っていう食料を保存する装置とか、あとはその機能を持った大きな運搬用のコンテナとかあるんですね」

「食料保存の話か」


 アリシアは大魔法と称されるような、効果が大きな魔法には興味が無くて、そういうのはルビィに任せてきた。


 自分には自分の気になる魔法があるから、規模は小さな魔法ながら身近に使える分野を中心に、制御能力が試される、それはそれで高度な技術を身につけてきた。


「こっちに帰ったらやろうかなって、ボチボチ設計していたんですけど、ライアのいる芸術都市ベルメーンに行った時に市場を見たら、魚介類が当たり前に並んでて、やっぱりいいなーって思いましてね。海が遠いモートレルはともかくとして、このラスタルってそれなりに海が近いのに、港町から上手く魚が運搬出来ないじゃないですか」


 また食い物の話か、とバカにする人間はいなかった。なぜならあの冷凍の札が、王宮に有用性を認められて、騎士団の移動や演習に正式に使用が決定されて、国王からのお褒めをいただいたばかりだ。


 それに小さな魔法とはいえ、単発ではなく持続型なので制御技術が問われるため、魔術としては複雑な、勉強家達の興味をそそる内容ではある。


 それに現時点では料理用として出されても、後々何かに転用する事もできるので、その可能性を無視するような人間がこんな高い地位に上り詰められるわけはない。


「緊急で転移を使う事はありますが、魔術師は貴族や王家の御用聞きじゃないですからね。普通は【氷柱】とか、【氷結の棺】で氷漬けにして貴族向けに運んでますけど、それなりレベルの魔術師が必要だったり、人によっては回数に限界もあるじゃないですか。あと、冷凍モノと冷蔵モノって素材の劣化に差があったりで、長期保存する文化じゃないなら本来は冷蔵が正解なんですよね」


 人手や手間がかかっているのでその分のコストが乗っているし、氷で重くなって馬車では充分な量が運べない。


 冷凍してラスタルで解凍しても、どうせその日には食べてしまう。解凍方法も水槽に入れるなど時間をかけるわけではなくて、雑に魔法で一瞬でやってしまうので、細かい事を言うと、細胞壁が壊れて素材の味も口当たりも台無しになっている。


 冒険者時代にアリシアが作った小規模な【氷結】の術も使うようになっているようだけれど、ラスタル到着時に丁度よく解凍されているような調整が難しくて普及していない。


 王都で魚介といえば干物というのが一般市民の常識で、鮮魚から直接調理された料理をを口にするなど、夢のまた夢だ。そんなに食べたければ港町まで行くしかない。


「あの札を使えば付着する水分の重量がなくなるから、新鮮な魚が多く運べるようになりますけど」

「札が必要になるな」


 札の複製は出来るけれど、手間とコストがかかる。今の所はアリシアが言ったような、日常的な運搬に使う気は無い。


「なので、冷蔵の機能を持った箱を作ろうと思ってます。大量運搬用に軽量化が必要なので、箱は出来るだけ簡素にするようにしてます」

「面白い。やってみよ」

「それでなんですけど、さすがにこの小さなデバイスと違って、館では作れないんですよねー。前に言いましたけど、モートレルの分校に部屋を貰っていいですか?」

「ぬう…」

「何部屋か空いてるみたいなんですけど」


 アリシアからは説明を受けているけれど、やどりぎ館の裏門である異世界との境界線から分校までは徒歩10分くらい、と言っていた。


「ヒルダが馴染みにしている鍛冶屋さんも近くにありますし」


 魔法学院としては、出来れば魔導士階位11位のアリシアにはこの本校にいて欲しい。


 階位11位という高位ではあるけれど、そこまで高位でもない微妙な位置にいるアリシアだが、何と言っても元冒険者で、魔女戦争では人類の先頭に立って戦った経験と技術を持っているから、それはこれからの教育や研究に役立てたい。


 だが今この提案を拒否してしまうと、やる気を削いでしまいかねない。


 しかもあの異世界の英雄、新城霞沙羅の影がちらつく。今は近くにいて貰った方が良い影響を受けるだろう。


 タウは2人の賢者の表情を見て、同じような事を考えていると確認し、その申し出を許可する事にした。


  * * *


「アーちゃんがいてくれるのは有り難いわね」


 魔法学院から帰ると、早速ヒルダに連絡をして、分校の校長に部屋使用の確認を取りに行くと、とても恐縮しながら受け入れてくれた。


 魔女戦争の英雄で、自分達よりもずっと上の階位を持っているアリシアがいてくれるという申し出を拒否は出来ない。


 天望の座の許可も貰っているというし、部屋も空いているし、断る理由が無い。


「別に常駐する気は無いよー。週に1回か2回来るくらい」

「いいのよー」


 先日の占領事件でもとても頼りになってくれたから、ヒルダとしては心強い。


「アリシア様にいて貰うだけでも生徒達にやる気が出ます」


 教育上の不明点にも答えてくれるかもしれないという期待もある。


「あとさ、ちょっと分校でどういう教育してるか見せて貰える? 向こうの世界の学校の改良をしててねー。問題があるなら案くらいは出すし」

「それでしたら、言って下さればお見せ出来ます」

「はーい、ありがとうございまーす」


 歓迎を受けたアリシアは、早速空き部屋を1つ貰い、机と椅子と棚しかない部屋を眺める。


 ちょっと埃が溜まっているので後で掃除をしよう。それと棚にはPCからデータを印刷して持ってこよう。


「あとヒーちゃん、いい鍛冶屋さんを紹介してくれない? ちょっと指定するサイズの箱を作って欲しいんだ」

「金属の箱? 宝箱でも作るの?」

「ううん、魚の運搬用の箱を作るの。ライアの国が羨ましくて」

「アーちゃんらしいわね」


 製作費はとりあえずはポケットマネーでまかなう事になるけれど、採用されたら買って貰うか報酬で請求しよう。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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