魔法術科の問題 -3-
場面により主人公名の表示が変わります
地球 :伽里奈
アシルステラ :アリシア
そして放課後にはアリーナの施設に出向いて、学生同士の決闘を見学する事にした。
今日の所は3年生が1件、2年生が1件が予定されていて、それの見物をしようと、クラスメイトだったり友人をはじめとした、それなりの人数のギャラリーがアリーナ席に座っている状態だ。
ところで、決闘という仰々しい言い方をしているけれど、このアリーナで決闘をやるにはお互いの連名での申請書類が必要だし、勝とうが負けようがこの後に簡単なレポートの提出も必要なので、喧嘩という性質は少ない。
その中にはお互いに「オレかお前のどっちが上か教えてやる」というような自信家の2人による決闘、という事もあるようだけれど、基本的にはクラスメイトだったり、それなりに交流のある2人が「ちょっとやってみようぜ」とスパーリング感覚でやる事が多い。
今回の2組も険悪な様子はなく、アリーナ脇の控え場所で、ついてきたサポートメンバーと一緒に仲よさそうに話をしたり、規定されている防御装備の準備をしている。
どこか部活動の試合に似た、とても穏やかな決闘風景だ。
「決闘って名前をやめればいいのに」
魔法学院だと、これと同じような申請のいる決闘もありながら、ちょっと強い事に調子に乗った貴族が本人より格下の貴族や平民の生徒に対して、プライドを守る為にストリートファイトを挑むような事もあるような、ちょっと物騒な事案もあった。
まあ圧力をかけたり煽りに煽って無理矢理合意に誘導して来る貴族もいたけれど。
あれは良くない。
どういう理由や身分差であっても、国が国策として運営している魔法学院に入学が許された程度には魔術師としての素質があるのだから、例え平民であろうとも1人でも辞めてしまえば、未来の魔術師が1人いなくなるわけで、国家としては損失に繋がる。
そういう計算の出来ない貴族には、貴族を名乗らせてはならないと思う。まあ学生には正式な貴族なんかいないんだけれど。
そんな事を思っていると、一組目、3年生同士の決闘が始まった。
勝敗は点数制で、安全上の障壁を兼ねた防御用プロテクターに、試合時間内にどれだけダメージを入れたかの測定結果で決まる。
勿論どちらも避けるので、上手く当てるか、範囲の大きな魔法の余波を当てるとか、誘導するとか、牽制や移動妨害等を駆使して点数を争う。
勿論物理攻撃はダメで、殴りに行ったりモノを投げたりしてはいけないし。そもそもお互いのコートから出てはならない。
ルールもあって見た目は殆どスポーツだが、学校だけでなく、軍や警察など社会に出ても日々の鍛錬で使われる手法だ。
点数の取り合いというゲーム的要素もあるから見ている方もなかなか面白くて、決闘とは関係の無い人間もゲーム観戦の娯楽であったり、駆け引きなどの参考にする勉強で見に来ている生徒も多い。
2年生以降になると授業でも行われる位には安全なやり方なのだ。
今日は個人戦だけど、チーム戦になる事もある。
「見た事はないけど、面白いわね」
魔法が当たったり外れたりで、ギャラリーから声が挙がったりする。
お互いが3年生で、初級魔法もそれなりに使えるようになっていて、速度とか範囲といった色々と特性を駆使して、各々が戦略を組み上げて戦っている。
魔力にも限界があるから、回数は限られるし、無茶な魔法は使えない。詠唱時間もかかるし、発動までのタイムラグも考えないとダメ。だから位置取りも重要な要素になるので、案外足を使った動きもある。
お互いがボールを持っているドッジボールのように、攻撃のタイミングを計るという戦略性もある。
点数が解るというちゃんとルールが決まっているので、どっちが勝っているのか一目瞭然で、それで一喜一憂しながら見るのも悪くはない。
表情を見るに、当事者2人共に楽しんでやっているようにも見える。
楽しんでやっているというのは、魔法学院で面倒事に巻き込まれてきた伽里奈の目線から見ると、とても羨ましい。
「いいもの見たなー」
《スポーツで勝敗とか、向こうにはそんな概念はないからなー》
名誉とか身分とかか殺伐さを排除して、友人やライバル同士でもある程度気軽に実施できるのは面白い。お互いに納得した上で競い合える、そういうルール作りはしていきたいなと思う。
貴族にいい印象がない伽里奈だけど、親友のルビィだけでなく純粋に力と知識を競い合える貴族もいるので、「楽しい事」としてどう巻き込んでいけるかが勝負だ。
決闘というか試合が終わり、負けた方は悔しそうだけれど、二人はいいライバルのようでコート上で握手なんかしている。
「ロンドンではどうなっているのか、聞いてみよ」
シャーロットも見ていて楽しかったようだ。
自分は特待生として一般生徒とは隔離されているので知らないのだから仕方が無い。シャーロットは母校での決闘制度がどう運営されているのか確認する事に決めた。
「うーん、何か悪意を感じるけど、仕方ないかな」
それはそれとして、ギャラリーの一部から視線を感じる。
日本人ばかりの中で金髪のシャーロットが目立ってしまうので、その横にいる伽里奈が目についたようだ。
着ている制服がまだ普通科のモノなのも悪いのかもしれない。
であれば誰なのかを、意識を飛ばして相手を確認するとネクタイの色からして、上級生。恐らくA組であると断定した。
《襲撃事件の事が知られてるからねー》
突然普通科から編入して、ホールストン家のシャーロットの相手をしているのが気になる、というか気に入らないのかもしれない。
魔術師として明らかに格が上のシャーロットには文句を言いづらいけれど、素性がよく解らない伽里奈には敵意が向けやすいのだろう。
しばらくは気をつけないといけない。
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