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魔法術科の問題 -1-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 やどりぎ館の朝の風景にシャーロットが加わってからもう一週間が過ぎた。


 昼食について、学食にするか伽里奈(アリシア)の手作り弁当にするかを悩んでいたシャーロットだったけれど、しばらくの所は手作り弁当を選んだ。


 昼食の時間は三学年の皆が一斉に動き出すので、やっぱり学食は混むし、早く食べようと競争になってしまう。それが嫌だったそうだ。


ただ、教育論のレポートを書くために何回かは食べておきたいので、どこかでチャンスを見つけて、学食を体験するそうだ。


「んー、こんなオムレツ」


 今日の朝ご飯にはオムレツが出てきた。


「私もこのオムレツが好きなんだ」


 洋食屋やホテルで出てくるような、プルプルフワフワで中身が柔らかい綺麗な楕円のオムレツ。中にはチーズが入っていて、ケチャップでシンプルに食べる。朝食の一品なので、小さめには作られていて、丁度いい。


 シャーロットは知ってはいたけれど、お店ではなく、こんな下宿で当たり前の顔をして出てきた事に驚いている。


 アンナマリーにしても、こんなオムレツはフラム王国どころかラシーン大陸にはどこにもない。国内屈指の上流貴族育ちであるアンナマリーがこれを初めて食べたのは1ヶ月以上も前になるけれど、それ以降気に入っている。


「この家の朝食いいわね」


 パンとサラダとスープ、自家製ウィンナーとオムレツ。派手さはないけれど、しっかりと作られているし、量的にも考えられていて丁度いい。


 ただ美味しいだけじゃないのが、やどりぎ館の食事の特徴だ。


ロンドンからはるばる小樽に来て良かったと、このオムレツの初めての食感と美味しさを堪能するシャーロットだった。


  * * *


 今日も1年E組の授業が始まった。


 伽里奈(アリシア)とシャーロットの座席は、一番後ろの隅っこ。


 とっくに教材を読み終えて、何も学ぶ事がない2人がやる事は、授業を俯瞰的に見て、各教師がどのように授業を進めているのか、教材をどのように使用しているのか、その教材に何か欠点はないのかを確認する事だ。


 今の授業内容は、とうとう年末頃から始まる初級魔法の使用に関する準備だ。


 まず最初に習得する事になる{風樹(ふうじゅ)}という防御用の風魔法について、その術式の解説となるので、生徒達は「ようやく待ちに待った本物の魔法が使える」と熱心に授業を聞いている。


入学当初から中瀬と早藤に付き合っているから、彼らが練習用魔法を使い続けて、少しずつでも魔法に慣れていっている過程は見ている。


 最初は練習魔法であっても、1回使うのに5分だったり6分だったりとかかって、それで立ち上がれなくなるほど息を乱していたのも昔の話。レーンでの自主練習でも、仲間内での回転率も良くなっているし、射程も伸びてきた。


 これから初期魔法を習得していく段階に入ると、やっと慣れたこの状態がリセットされてしまうけれど、魔術を習得するという点ではここからが本番だ。


 これまで以上に手応えのある授業になるけれど、人によって差が出てくるのもこれ以降だ。だから今まで以上に気が抜けなくなってくる。


伽里奈(アリシア)もシャーロットもお互いに必要なデータを纏めていると、魔術に関する座学が終了し、次の実習の授業になった。


今日はグラウンドの練習用コートで、設置された壁に向かって氷の練習用魔法を撃つという内容だ。


「小さな、氷ね」


 家庭用冷蔵庫で製氷されるのと半分くらいのサイズの氷を、生徒達は飛ばしている。


 隣のエリアでは2年C組が風の魔法を打っている。つむじ風が中々良い感じに吹き荒れている。


 そういうことをやっているのなら、2人はなんとなくそちらの方に目を向けてしまう。同じ普通ランククラスの、学生レベルの魔法ではあるけれど、1学年違っての横並びの練習となると大夫違う。


「こっちの世界だと、動くターゲットとか使う事はあるの?」


 伽里奈(アリシア)は今のところ高校内でそんな練習を見た事はない。


「魔術は、普通は発動までに時間がかかるものだから、反射神経に訴えるような施設はないわね。そういうのはアリーナで生徒同士の対戦でやるものよ」

「だよねー」


 詠唱なんか無視して、精神で必要な魔術基盤を作成してすぐさま放ててしまうから、伽里奈(アリシア)は動いている相手に当てるだとか、体を動かしながら当てるという事が出来てしまうけれど、一般的な生徒にはまず出来無い。


 だからこそ、練習となると動きのない的やオブジェクトを相手にする事になる。なのでこのやり方に問題は無い。


 ただ、将来的に彼らの多くは軍や警察に入り、動くモノを相手にするのだ。


 練習用魔法とはいえ、今でも30秒から1分はかかっているから、そこから動く物体に当てろというのはちょっとキツイかもしれない。


《いやー、でもねー》


「練習用レーンが足りないっていうのは本当なの?」


 シャーロットともなると、母校では専用の練習場所が与えられているので、まったく困っていない。


 でもロンドンの学校では一般生徒と会う事はないので、彼らの苦労を知らない。


 だからこの小樽校に来てから見る授業風景には色々と興味を惹かれている。


「そうだよー。授業中でも各クラスで分け合ってて、放課後も2時間しか使えなくて、25分刻みで、4交代制かな」


 5分間は機材の確認時間だ。


「レーンが少なくてね。最低でも5、6人1組で使って、って感じかなー。横浜校はもっと多いんだけど、小樽校は最近霞沙羅さんのおかげで生徒数が増えてるから、増設が追いついてないんだー」


 元々生徒数に対してレーンが多くはないから、以前であっても頻繁には使えなかった。


「レーンを増設しようにも建物を拡張しないとダメだから、なかなかねー」


 アシルステラでの話は下宿内以外ではしない事にしてあるので、あくまで地球側の事情のみを話題にしている。


 他校と違って、造成していないだけで、実際の小樽大学の土地はもっと広くて、レーン用の建物の増築はワケも無い。でもそんなに予算の余裕は無いと聞いている。


「授業中は、んー、やっぱりA組の子がちょっと窮屈にしてるかなー」

「ちゃんとA組の生徒も気にしてるのね」

「中瀬達の練習に付き合っていれば、見えちゃうからねー」


A組だからといって施設の利用を優遇してくれているわけではない。そんな事をしてしまったら普通クラスが斬り捨てられるという意味になってしまう。


「学術も当然重要だけど、実習も重要。魔術を使う事が当たり前の体にするのが、理想だからねー。シャーロットはどう?」

「私も、大きな魔法はともかくとして、そういう感覚は身につけているわ。家にも専用の結界部屋があって、練習しているもの」

「へー、そうなんだ」


 自分は平民で、実習は学院でしか出来なかったので、時々ルビィの屋敷に行って練習をさせて貰っていた。


 どこの世界でも、長く魔術業界にに身を置いている家は、自前で設備を整えているものだ。


 でも一般の生徒は家にそんな環境は無い。


 授業で毎日実習は設定されているから、毎日魔法を使う機会はあるけれど、テスト前などでは奪い合いになるから、練習回数問題はある程度解消した方がいい。


それをどうやるのかが問題だ。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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