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これまでの事と、これからの事 -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 「で、ホントにいいんですね?」


 どちらも業務があるので、時間的には夕方になってしまったけれど、今度はフラム王国の魔法学院に、正式に情報提供のお願いに行くことになった。


 学院のトップである大賢者タウにはすでに概要は話してあるし、天望の座や階位上位者にも、先日のレポートで霞沙羅の名前は知られている。


 アリシアの知り合いでもあるし、火山の対策も立案してくれた事もあって、喜んで時間を取ってくれた。


 夕飯はある程度まで準備が終わっているので、残りはシスティーに任せて、アリシアと伽里奈は魔法学院にやって来た。


 正規の予定を取ってきているので、今回は受付の前に転移した。学生達はもう帰る時間だけれど、受付はまだもう少し開いている。


「外観はこんなだったのか」

「ボクらは転移しまくりですからね」


 最初も前回もエリアスに部屋の中に送り込んでもらい、お城に行くにも転移だったので、霞沙羅はこのラスタルの町並みをちゃんと見ていなかった。


 さすがに王都だけあって、地方都市のモートレルよりも建物の数も多いし、王立の魔法学院だけあって、背の高い立派な洋館が幾つも建っている。


 アリシアにとっては何でもない施設なのだが、霞沙羅にはそうではない。


「うおおお」


 また白い戦闘服を着てやって来た霞沙羅は伽里奈にデジカメを手渡してきた。


「記念撮影ですか?」

「ああ」


仕方がないので見栄えのする何カ所かで記念撮影をしつつ、タウ達が待っている講堂にやって来た。


「しかし、すごいな。お前こんな所に通ってたのか?」

「え、でも横浜大の方が広くないですか? 学生食堂もバラエティー豊かで毎日楽しみじゃないですか」

「そうじゃねえんだよ。お前は解ってないぞ。確かに横浜にはいい感じの洋館があるが言うほど残ってない。そしてあの大学は近代的すぎて、魔術を学んでいる気がしない。建物がつまらないんだ」

「そ、そうですか」


 《空調設備も照明装置もないから、勉強するにはちょっと大変なんですよ》


 中に入れば、そういえばまだ通路を歩いていないと霞沙羅がまた記念撮影を始めた。


「うーん、地震だな」


 噴火が近いからか、そう大きくはないけれど、窓がカタカタと揺れた。


「よくて震度2だな」


 さすが関東地方生まれの人。この程度の地震ではまったく動じない。まるでちょっと強い風でも吹いた程度だ。


 けれど、すれ違った学院の職員は不安そうに、構造上頑丈そうな柱にへばりついて「ひいっ!」とか情けない声をあげていた。


そして予定されている講堂にやってくると、出席者達はもう殆ど座っている状況だった。


アリシアに連れられて霞沙羅が講堂に入ってくると、出席者達は驚きの声をあげた。


 あれがアリシアと共に王者の錫杖を解析した異世界人だ。そして地球という世界の英雄で、その力はアリシアに勝るとも劣らないという情報がいっているからもある。


「シンジョウカサラ殿、よく来てくれた」


 もう座っていた大賢者タウが教壇の方にやってきた。


「いえ、私の方もこのような機会を頂けただけて感謝しています」

「我が国で起きた事件だ。アリシアにより事情は理解した。しかも火山の件もあり、国王も感心を持っておる。それ故に王宮からも人を呼んである。改めて話をして貰いたい」

「ありがとうございます」


 挨拶を終えて、参加者全員が集まるのを待った。


  * * *


 数分の後には参加者が全員集まったために、霞沙羅は早速、再度になる魔工具と魔装具の概要の説明から入った。


 アリシアからも魔術的な専門事項を省いたレジュメを作成してあるので、書類としてそれを配り、またあの小型ディスプレイを使って、霞沙羅をサポートした。


「相手が何を目的として行動しているか解らないが、こちら側の軍にも被害が出ています。魔術的な話だから魔術協会を主体として、原因解明に動いているが、今のところ犯人の情報はそちらと同じ状況であるとアリシアやヒルダから話しを聞いています」


 他人の記憶を弄る魔法はどちらの世界にもあるけれど、残党達と何度も会っているというのに、あの人数全員の記憶から、接触してきた当人の情報だけが上手いことぼかされている。


「当人の魔術を異世界でも問題無く動作させる技術を持っている事からも、相当の能力を持っていると、こちらの協会でも警戒をしています」


 一度入った記憶が改竄されているのではなく、最初から改竄されたデータが、接触した人間の頭に入っているのが厄介だ。


 しかもどちらの犯人も何度か接触しているのに、それに気が付いていない。


「何かの魔工具を持って動いていると思います」

「このアリシアの資料から見ても、さらに妙な技術を持っておるようじゃな」


 実際に、タウ達、天望の座が全員記憶を覗こうとしたがダメだったという状況にもある。


「さすがのシンジョウカサラ殿もこの者が来たという世界へは連絡は取れぬのか?」

「いえ、このアリシアの先代管理人がその世界の人間ですので、依頼済みです」

「そうか」


 それを聞いて、タウや王宮から来た人達も頷く。


「今は少しでもこの犯人の情報を集める事が先決です、この国でまた同じ人物が何かするかどうかは解りませんし、この世界の他国との繋がりがどこまでかは解っていません。ですが、もし情報があれば、このアリシアへお願いできませんか?」


 霞沙羅が頭を下げるというのは中々珍しい。軍や魔術協会からの仕事という面もあるだろうけれど、英雄になれたほどの正義感もあるから、地球側へ必要な事だったのだろう。


横でサポートしてる伽里奈も思わず、格好いいなー、と思ってしまった。


 なんというか、フラム王国の中心に近い人達もいる中、貴族にもなったのだし、人生の先輩として、もう少しこの霞沙羅を見習おうかなとも思う。


「学院としては。シンジョウカサラ殿に協力しよう」

「国王からも、まずは情報であれば伝えてもよいと言葉をいただいている」

「ありがとうございます。こちらからの情報は、この、お前、貰った爵位は何だよ」

「し、子爵です」

「子爵のアリシアを通じて届けさせます」


子爵とか言われてしまったけれど、折角カサラを見習おうと思ったばかりなので、文句を言うのはやめた。子爵として、国に関わる位置になった自分をもうちょっと見つめよう。


「よ、よろしくお願いします」


 アリシアも頭を下げた。


 これには集まった全員がちょっと笑ってしまった。


「アリシアも、良い人間と出会ったモノだな」


 タウやその他の賢者達も、あのアリシアに良い影響が現れればいいと、カサラを評価した。


「それとシンジョウカサラ殿、この件とは関係ないと考えて貰いたい。同じく魔術の道を歩む人間として解っていただきたいが、我らは知識を求めておる」

「魔術師であればそうでしょうね」

「お主はアリシアからこちらの魔術を習得しているという。それを見込んで、異世界人として一つ、こちらの魔術に関する講義をお願いできぬか?」

「私でいいのですか?」

「階位11位のアリシアの言っている事が解るのであれば、充分すぎる。急ぎというわけではないが、頼まれてくれるか?」


 霞沙羅はアリシアの顔を見る。


「まあ、こっちの協会や軍でアリシアにもやって貰ってますからね。いいですよ」

「感謝する。そう急がんでもよい。火山の件が一先ず終わってから、もう一度話をしようではないか」

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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