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ドラゴンと火山とバーベキュー -4-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

「誰だこいつは?」


 一旦この現場から消えていたルビィが、イリーナを連れて帰ってきた。


「聖都セネルムントがこの山が見える位置にあって、神官達が気になっていたから、それでイリーナが作業を見に来たのダ」

「イリーナ様はアリシア様のパーティーの神官です」


 アンナマリーがフォローしてくれた。


「という事はこいつも英雄か?」

「本物の聖騎士だゾ、先生」


 いつの間にかルビィからも霞沙羅に対する先生呼ばわりが始まっている。


「聖騎士とか、すげえな。だがハンマー持ちだから騎士とはイメージが違うな」


 霞沙羅が想像する聖騎士というと、「騎士」の延長上にありそうだが、イリーナはどう見ても神官だから、どうもイメージと違う。


「ただの神官じゃねえな?」

「アーちゃんほどでは無いにせよ、肉弾戦となると聖都でも最強ダ」


 黒髪で清楚という大人しそうな外見にしては、服の下に隠された肉体はかなり鍛え上げられているのだと感じる。騎士という概念がどこまでか解らないが、神官としてはかなりの猛者である事は解る。


「色々いるんだな、お前らは」


 霞沙羅のところは基本は3人で1ユニットで、作戦に応じて他のメンバーが替わる編成だった。なので、専門の聖職者はおらず、ある程度は霞沙羅が役割をになっていた。寺院から神官が合流してくる際は、やはり術専門だったから、アリシア達6人の能力構成がちょっとおかしいんだろう。


「この人が向こうの英雄さん?」


 霞沙羅の方が納得したので、変わってイリーナの方が確認を求めてきた。


「おう、そうだぜ。軍隊の中での3人組だが、私がリーダーだ」

「神官みたいな服を着ているけれど、英雄さんは聖職者なのかしら?」

「神聖魔法もある程度心得てはいるが、服だけだぜ。役割で言えばアリシアと同じだな。能力も大体同じ。鍛冶は出来て家事は出来ないところが大きな差だな」


 持ってきていた長刀をズイと出す。先端に刃物がついている槍のような武器なので、霞沙羅が神官ではなく、剣士的なモノだとイリーナは理解した。


「となると、あそこでワインを飲んでいる人が、あなたの、魔術師のお仲間さん?」

「あいつはまた別の世界の魔術士だ」

「モートレルの事件で大勢の人質を撤去した、よく解らない力を持った魔術師だゾ」

「あいつはあんまり触らないでやってくれ。自由人だからな」


 そして森の方からはバキバキと木が倒れる音がしてきた。アリシアは伐採した木が貯まってくると、いったん中止して、木材にするために枝を切り落としているので、それが終わってまた伐採を再開したのだ。


 システィーの作業状態はエリアスが捕らえているので、その画面を皆に見せてくれた。


「システィーがあんな事に」


 時々方向を確かめる為にアリシアを乗せたシスティーが森から上昇してくる。


 あんな使い方は見たことがないけれど、確かにあの持て余すほどの巨体を活かした合理的なやり方だ。森を分断してしまおうという無茶な作戦に対して、システィーにしか出来ない荒技だ。


 溶岩が流れる方向ではないにせよ、聖都からは火山が見えるから、いざ噴火した時に混乱させないために、教皇をはじめとしたセネルムントの中心人物達には連絡が行っている。


 火災を止める事は出来ないけれど、これなら森全体に被害が及ばないようにするという施策は上手くいきそうだと、イリーナも納得した。


 それにしてもシスティーの有効な使い方を異世界人に教えられるとは思ってもみなかった。


「昼飯の話になるが、こっちの神官は肉を食えるのか?」

「あまり贅沢にならなければ食べ物の制限は無いわ。そちらの世界ではあるの?」

「信仰する神さん次第であるんだよ。殺生は控えるようにという流派もあって、基本は贅沢は控えているな。まあアリシアだし解って持ってきてるだろ」


 ランチはバーベキューだからお肉が結構多く含まれている。イリーナが来ることは解っていたから、もし制限があるのならアリシアはそれを考慮した食材を入れているはずだ。


「こんな所まで来たんだ、勿論食ってくだろ?」

「え、ええ、まあ」


 先日のパスタとグラタンは贅沢さが無かったのと、自分の神殿でも好評だったので、他の神殿でも採用される事になった。


少し前にヒルダの家でも食べたし、やっぱり今のアリシアの料理も美味しいから、お昼は何を作ろうとしているのかは気になる。


「伐採は順調そうだナ」


 遠くから目で見えているだけでも、進行方向の半分位には到達している。これなら午前中には終わりそうだ。さすが一振り50メートルが伐採できるだけはある。人力でやるのとは随分と違う。


「ようやくかかったようじゃな」


 フィーネがここら辺一体の動物を追い払った事を異変と認識したようで、狙い通りに獲物が食い付いてきた。


 ワインを飲んでいたフィーネがゆっくりと立ち上がる。


「貴族の小娘、こちら来るのじゃ。管理人の小娘、しっかり見ておれ」


 フィーネに言われてエリアスがハッとした。異変を確認するためにドラゴンが3体、丘からさらに東の方から迫ってきている。


「ドラゴンか? アンナはフィーネのそばに行け。そこの騎士連中もこっちに来い」


霞沙羅にも声をかけられて、え? という顔をしているが、エリアスから追い払われるようにアンナマリーがフィーネの側にやって来た。


「アリシア、ドラゴンが来たわよ」


 周辺にいた観測の騎士達も、「ドラゴン」という言葉に慌て始めた。だがここには皆が良く知る英雄が2人いる。


「アーちゃんに伝えてくレ。ドラゴンは私らがヤル」


 ルビィからの言葉を受けたエリアスは、アリシアに指示を飛ばす。すると、システィーは森の中に姿を消した。


「それがお前の杖か?」


 ルビィが持ってきた杖は、ドラゴン退治があったので、愛用の轟雷の杖だ。


「またお前、そんな使いにくそうなモノを。ヒルダの剣と同じような発想かよ」


 この轟雷の杖も威力が大きすぎて、普通には使えない代物だ。持ち主が工夫して威力の調整しているのが現状だ。


「通常は自分で魔法を使っているのだが、大物相手に使っているのダ」

「折角いい品なのに、使いにくいなら何かもったいねえな」


 そして3匹のドラゴンが、丘を掠めるように飛んで行き、森の上空に到達した。


「おー、あれが本物のドラゴンか。幻想獣のは怪獣的なインチキ臭がするからなあ」


 早速霞沙羅はデジカメを取り出して、森の上空を飛び回るドラゴンの写真を撮り始めた。


 ルビィとイリーナが悠々とドラゴンへの攻撃準備を行う中、ドラゴンを近くで見るのはこれで人生二度目のアンナマリーの心境はそれどころでは無い。


 離れたところにいってしまったからいいけれど、あんな大きな魔獣は自分ではどうしようも無い。ルビィやイリーナが側にいるけれど、3体もいては怖いモノはやはり怖い。


 そもそもドラゴンというものは、普通は討伐隊を編成して、死者重傷者を多数出してやっと一体討伐するのが常識だ。


 それをヒルダはたった一撃で真っ二つにしてしまうとか、アリシア達の感覚がおかしいのだ。


「小娘、あのような羽虫ごときで騒ぐでない」

「は、羽虫って」


 フィーネが一声かければどこか遠くへ逃亡してしまうだろうけれど、ここは自分のいる場所ではないのでやらない。


「轟雷の杖、頼むゾ」


 ルビィから魔力を与えられた轟雷の杖が、その魔力を増幅する。そして一直線に、先頭の一番大きなドラゴンに、轟音と共に雷の一撃を飛ばした。


「グギャアァァッ!」


 一番大きなドラゴンは黒焦げになって、森の中に落ちていった。


 その隙をついて、森の中から姿をあらわしたシスティーが、その剣先で別のドラゴンの体を貫いた。これで2匹が撃墜。


 まさかの事態にこれはまずいと思った最後の1匹は、さすがにアークドラゴンがいる方向には逃げず、霞沙羅達の方に飛んできた。


「正面顔も良いねえ」


 霞沙羅はデジカメでドラゴンを撮り続ける。


 そこでイリーナが前に立ち、持っていたハンマーを構え


「【神の鉄拳】」


 ブンと、大きく振るうと、そこから巨大な白い光りがドラゴン目がけて飛んでいき、その体を空中でバラバラにした。


「お前らも大概だな」


 登場から1分と経たず、3匹のドラゴンは無残にも羽虫のように退治されてしまった。


 本物のドラゴンの写真は撮れたけれど、短時間すぎて霞沙羅にとっては撮り足りない結果であった。


「もう少し見せてくれてもいいだろ。火くらい吐くんだろ。ドラゴンとかいうわりにはガッツが足りないんだよな」

「勘弁して下さい…」


 こっちに飛んできそうになったのに驚いてしまったアンナマリーは椅子から転げ落ちそうになったけれど、無事に済んだことでぐったりしている。


 これは今晩夢に出るぞと思ってしまった。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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