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ドラゴンと火山とバーベキュー -2-

場面により主人公名の表示が変わります

  地球      :伽里奈

  アシルステラ :アリシア

 王宮としては、明日にでも伐採当日の現場警護の人員を決めることになり、緊急会議はお開きとなった。


「カサラ先生はすごいナ。アーちゃんが先生と呼ぶのも解ル」

「持ちつ持たれつだぜ。私もこいつの妙な考えで助けられてるしな」

「アリシアよ、大賢者と呼ばれるこのワシでも、とても羨ましく感じるぞ」


 色々言うけれど、異世界に来て、そこの王達の前でも堂々とした態度が貫けるのが、アリシアには霞沙羅の性格が羨ましい。


「魔法学院で何か講義をお願いしたいところだ」

「こいつにはウチの軍や協会で色々やってもらってるから、時間があったらいいですぜ」

「霞沙羅さんはこっちの魔術の知識はありますからねー」

「こいつと同程度の話しか出来無いがいいぜ、大賢者殿」

「アリシアと…、そこまで解っておるのであれば申し分無い。異世界人から我らの魔術がどう見えておるのか教えて欲しい」

「どこかで時間を取ってですかね」


 まずは火山の処理を終えてからだ。


  * * *


そして翌日には国王名義で、森林伐採に協力せよと命令というか、貴族としてのアリシアに業務依頼が来たので、予定通りシスティーを連れて参加することになった。


 まずは王宮の方で火山の観測隊を組織して、ベースキャンプを作ってから、というので、伐採の日程についてはまた別の日に連絡する、となった。


  * * *


「王都周辺も大変な事になってたのね」

「俺らの自治区からは離れているから関係はないみたいだが」

「ハルキスの町はちょっと高いところにあるから、噴火したら夜には山のある方向が赤く見えるかもねー」

「見えても騒がないように言っておくぜ」


 火山と野良ドラゴンの件で騒がしくなっている王宮だけれど、これからの国の産業に関わる案件を黙っているのは良くないからと、ヒルダとハルキスは甘蕪から採れる砂糖の事を王に報告しにやって来た。


 ここのところアリシアが積極的に国に絡んできてくれるので、マーロン国王も安心していると、ルビィからも聞いている。今回の件もアリシアからの技術です、と伝えてあるので、忙しい状況であっても喜んで時間を作ってくれた。


 それでハルキスもヒルダもそれぞれ、自分の領地で採れた甘蕪から作った砂糖を小さな壺に入れて持参している。お互いに、アリシアがいなくても砂糖の抽出には成功しているようだ。


 甘蕪の生産について、アリシアは詳しくは解っていないけれど、昔からラスタルでも出回っているので、王の領地でも栽培されているんだろうと思っている。


 今回も会議用の部屋に通されて、農業や産業に関わる大臣を連れてマーロン国王がやって来た。


 砂糖の生産についてと言っているので、大臣達も急な話にもかかわらず時間を作ってくれた。


「して、二人の話は本当の事なのか?」


砂糖については、仲がいいとはいえ、南の島国や温暖な国からの輸入に頼っているので、もし国内で生産ができれば、輸入だけに頼らなくなり、今よりも市場に広まっていくというもの。


「蕪から作った砂糖は、これになります」


 二人とも持参した小さな壺を机に置いた。それを側近の人間が王の前に持っていき、大臣らと共に中を確認する。


「見事に砂糖ですな」

「これを、其方達2人の土地で作ったというのか? あの蕪からだぞ?」


 王や貴族が甘蕪の漬物を口にする事はあまりないけれど、フラム王国の幾つかの場所で栽培されている事は知っている。


「アリシアから教えて貰ったのですが、あちらの世界では、甘蕪と同じような植物からの砂糖の方が多く出回っているとの事です」

「本当か?」

「流通量の半分以上は、甘蕪と似た植物由来のモノです」

「そ、そうなのか」


 試しにお茶に入れてみたが、まさしく味に遜色の無い砂糖だ。


「アリシアからの入れ知恵ですが、オレ…、んん、私達の土地だけ増産しては不義理だと思いまして」

「そ、そうか」


 フラム王国で普通に栽培されている作物だから、まずは今の場所で増産すればいい。


 アリシアが言うように砂糖の流通を全て置き換えるのは無理そうだけれど、国内に多くの砂糖が出回る事が出来るようになるのは王族や貴族であっても悪い話ではない。


 今の甘蕪は漬物用で主食では無いので、食用として流通を止めた分はまた別の食べ物を増産すればいい。


「確かにこれはフラム王国全体の問題だな。他の領主とも足並みを揃えた方がいいだろう」


 料理はともかく、大きな産業になりそうな砂糖について、王としてもアリシアと仲がいいところだけ良い思いをするのは政治上避けたい。


「これは調査が必要だな。大臣、この蕪の栽培地域について調べよ」

「ははっ」


これは大変な事になったが、砂糖の生産はやり遂げなければならない大きな事業だと、マーロンは砂糖の入ったお茶を飲んで心を落ち着けた。


  * * *


「土木作業は霞沙羅先生の発案からなんだけど、システィーも2人のところなら助けるよって言ってたんだー」


 マーロン国王への報告が終わり、三人は一旦ハルキスの町に転移してアリシアは話し始めた。


 システィーのあの巨体を使って農地の造成をする事だ。


 さすがに鍬に変形する事は出来無いけれど、森は伐採できるし、土を掘り返す事は出来る。人がやるよりもはるかに広大な土地を短期間に造成できる。


「カサラって誰だ?」

「アーちゃんの所に住んでる向こうの世界の英雄さんよ。私達2人ほどじゃないけど、剣の腕はかなりのモノよ。魔術師でもあるし、鍛冶が出来るのよ」

「そんなのがいるのか。なんでヒルダは知ってるんだ?」

「何回かウチの屋敷に来てるのよ。私の魔剣も見て貰って、使いやすいように改良して貰う予定よ」

「ハルキスの魔剣も見てみたいって行ってたよ。使いにくいなら直すって」

「魔剣をいじれるのか? すげえのがいるな」


 それはともかく、甘蕪の収穫を増やすなら畑を広くしないとダメだ。最終的な仕上げは巨体すぎて無理そうだけど、開墾を手伝ってくれるなら、あの巨体は役に立ちそうだ。


「システィーも料理が出来るから、ついでに何か作って貰うといいよ」


「ホントあいつも変わったな。まあまずはどこをどう開墾するかだな。決まったら相談するわ」


 さすがに顔も知らない領主さんにシスティーを貸し出すのは無理なので、開墾ではこの2人が有利になってしまうけれど、それが交友関係というものなのだから仕方が無い。


ハルキスと分かれて、アリシアとヒルダはモートレルへ帰った。

読んで頂きありがとうございます。

評価とか感想とかブックマークとかいただけましたら、私はもっと頑張れますので

よろしくお願いします。

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