井戸
いつものお坊さん派遣センターから電話が鳴る
井戸供養をしてくれ
だそうだ
土地を造成する上で井戸の供養が必要になったらしい
今時そんな迷信でわざわざ坊さんの出番になることは無いので
まぁ これは想像だが
事故でもあって井戸が祟りの容疑者になってしまって
とりあえずお祓いのお経でも読んでもらうかということじゃ無いかな
今は良い時代だ 住所をネット上の地図で調べてストリート写真で現地確認
近くにお地蔵さんや道祖神とか有って信心深い土地柄が見えてくる
この小さな林の中っぽいな〜
というわけで、比較的近所だし仕事を受ける事にした。
まぁ余計な詮索はしないでさっさと定型的な井戸供養をしてくれば良いか
と気楽に考えていたのだが。。。。
現地に行って
車の中から更地になりつつある造成地を眺める。
既に電源は無いが電動ポンプの付いた井戸がある
だがしかし
この容疑者の井戸は犯人じゃ無いな
異様な雰囲気が湧き上がっている
というか本当にお経を必要としてたのは
隣接した家の塀の向こう側の御稲荷さんの立派な祠。。。。
あ- ちゃんと御稲荷さんにお供えして工事の挨拶してないから
「うるさいぞコラー コンコン」
で、土地を守る力がちょっと弱った雰囲気
もしかしたらけが人でも出てるかも知れないなぁ
と担当者が来たので車の外に出て辺りを見回す。
ん? 何でこんな場所に
塔婆が?
井戸の後ろ側に木の板が見えたが塔婆のようだが、まさかとは思って拾いに行くと
やはり塔婆じゃん
担当者も目を白黒させて
「こんな物、有りませんでした」
塔婆を拾ってみると先祖供養の塔婆
しかし何で塔婆。。。。 なんかの合図?事故のダイニングメッセージ?
わからん
見回してもお墓らしいものは無い ここに塔婆が落ちるとしたら
造成中の土手の上にでもお墓があるのかな?
塔婆の施主を担当に見せると、そこの隣接した家のだと指をさす
はい御稲荷さんがある家じゃん
御稲荷さんとご先祖様の共同戦線とでも言うところか
造成が気に入ってはいないのは確か
そりゃスピチャル的には生い茂った林の方が良いに決まってる
取りあえず塔婆を低い壁の向こうの
御稲荷さんの祠の脇に置いて来た
今回の心配ごとにそこの家がどうやら色々関わってるのはわかった。
うーん 当初よりお経の数が随分増えるんじゃ無いの・・・
担当にそんな説明しても怖がらせるだけで意味も無いので
状況は言わずお経を始める。
井戸供養のお経一式として 御稲荷さんのお経やらお隣の家のご先祖様のお経やら
そしてもちろん井戸供養と消災厄除、工事無事完成のお経も読んだ
まぁ自分に出来ることはやった
さっさと 逃げ・・・いやいやおいとましよう
「すみません井戸の埋め方なんですけど空気穴とか必要でしょうか?」
と聞かれて
知らんがな と言うわけにもいかず
「その辺は霊的なものではなく土木的な物なのできちんと施工指示に忠実にやってください」
と無難に答えた。
もうね 御稲荷さん怖いのよ さっさと帰らして ここうるさいからって
見限って付いてこられるとスゲー面倒くさいのよ
と心の中でイライラしながら 井戸造成の技術的な相談をお断りして
さっさと帰ってきた
造成後何になるかわからないが
自分ならあそこには住みたくは無いなぁ
工事が無事終わりますように。