雪の【異端】と霧の【賢者】
初めてなので至らない点もありますがよろしくお願いします!
いつもと変わらない日常、騒いでいるクラスメイト、古い公園の看板、何もかもが変わらないと思っていた...あの時までは...
僕は「雪花 奏」いつものように教室で本を読んでいた、いつものように...そんな時だった。
教室の中に【白い霧】が漂っていた。明らかに不自然だった。何故なら教室の窓は完全に閉め切られていて外から霧が入るわけがない。
さらにその霧を吸い込んだ生徒が次々と倒れていく。その状況を見た僕は持っていたハンカチで霧を吸い込まないように口をふさいだ。そして皆が倒れていく中、僕だけは意識があった。
そこから少し時間が経った。
そこで僕は気が付いた。薄まっていく霧の中に「誰か」の気配がする。僕は問いかけてみることにした。
「そこに居るのは誰ですか?もしかして、先生ですか?だとしたら救急車を呼ばないと!皆の意識が無いんです!」
「あれ?君は何で【転移】してないの?」
と、言ってきたのは白いコートを着ている少年?だった。
「転移?何言ってるんですか?ていうか貴方、学校の関係者じゃないですよね!誰なんですか!!」
「まず、自分の名を名乗ろうよ、【雪花 奏】君。」
「!?...何で僕の名前を...」
「貴方は一体何者なんですか!?そもそも、さっきの霧はなんなんですか!」
「質問が多いなぁ...まぁ気になるのは分かるけども。じゃあ順を追って説明してあげよう。」
「【ウェルナレス】これが僕の名前さ。そして、さっきの霧は僕のオリジナルの魔術さ。あの霧で意識と肉体を分離させたんだ。」
「じゃあ、皆は死んだってことですか!?」
「いいや、死んで無いよ。ていうか僕が人を死なせるような悪い奴に見えるかい?」
「...」
「じゃあ皆はどうなるんですか...」
「言ったでしょ。『何で君は転移してないの?』ってその言葉通り、君以外のここの人間は転移しているんだよ。」
―転移。小説やアニメ、漫画とかでしか聞かない言葉だ。そんなことが本当に起こるのか?
「起こるよ。いや、実際に君以外の人はしているよ。」
―何で僕の心の中が...
「何で君の心の中の声が分かるかって?それはね、僕が【大賢者】だからだよ。」
「だいけんじゃ?何ですかそれ?」
「僕の事は重要じゃないんだ。それよりも今は君の事さ。雪花君。」
「君は本来、僕の魔術で意識と肉体が分離するはずだった。が!何故か分離しなかった。そうなると困るのは僕さ。君も転移してもらわなくちゃ困る。」
「何でですか!?そもそも転移してどこに行くんですか!」
「僕らが住んで居る世界。君たちから見れば【異世界】に転移してもらう。」
「なぜ困るかというと、目的が達成できないからさ。」
「その目的は何ですか?」
「それは僕に聞くより、行った方が早いよ。」
「僕は嫌ですよ!だって家族だって心配すると思うし、そもそも一クラス全員がいきなり消えたなんてなったら大騒ぎですよ!」
「そこは大丈夫、こっちの一年はそっちにとっての一秒だから。こっちで十何年暮らしたって、そっちではあっという間さ。」
「そんな話あるわけが...」
「それがあるんだよ。とにかく僕を信じて。」
「そんなこと言われても...」
「わかった!じゃあ君にこの魔装あげる!」
そういってウェルナレスはコートを脱いだ。
「はい!とにかくこれ着て我慢して!」
「え!?そんなこといきなり言われても!」
【セレスティル】
その言葉をウェルナレスが放った時、あの時と同じ霧が漂い始めた。
「なにを...し.......て..」
そこで僕の意識は途切れた。
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「ゆ.....な....くん...」
「雪花君!!」
―その言葉で目覚めた。周りを見渡してみるとクラスメイト全員がいる。本当に死んで無いだな。けど、景色が全く違う...。
―本棚がここぞとばかりに立ち並んで、本が詰まってる。ここがウェルナレスさんの言っていた異世界なのかな?
「雪花君!」
「は、はい!」
驚いてしまった。
僕の名前を呼んだのは、白川 秋さんだ。彼女はテニス部に所属していて、さらに勉強もでき、ルックスも素晴らしいため皆から一目置かれている。
「ここ何処なんだろうね...」
「えっと異世界なんじゃないかな?」
「え?異世界?何言ってるの?」
―そう言って白川さんは微笑む。でも、ここが異世界なんてことは僕しか知らないのか。多分何人かは感づいてると思うけど...。
「ようこそおいでくださいました。異世界の使者様。」
その声の主の方向を皆が一斉に見た。声の主は全身真っ白の装束を身にまとい、いかにもな光り輝く輪が頭上にあった。そんな彼女を見て一人が放った。
「ここは何処で貴方は誰なんですか!」
皆がその言葉を待っていたかのように頷く。
「失礼しました。私の名前はセレスと申します。以後お見知りおきを。そしてここは皆様が前に居た世界とは別の世界でございます。皆様にはこの世界を救っていただきたくお呼びさせていただきました。」
「救うってどうやってですか?」
白川さんがそう問いかける。
「それはですね、この世界を征服しようとしている。【魔王 エルゲリス】を倒して欲しいのです。」
魔王を倒すことがウェルナレスさんが言っていた『目的』か。でも...
「魔王を倒すなんてどうやってだよ!」
そう怒鳴ったのは立川 悠樹だった。
「それはですね。皆様には天から授かった【天授魔法】というものがこの世界に来た時に備わっているはずです。」
「え?そうなんですか?」
白川さんが聞く。
「はい、そして皆様は天授魔法と同じ属性の魔法を使えます。例えば天授魔法が炎ならば炎属性の魔法を使えます。」
「その...天授魔法?はどういうのかわからないんですか?」
「それはですね。目を閉じて自分をイメージしてください。そうすると、天授魔法を扱う準備が出来ます。自分の天授魔法が何かを知るのはその後です。まぁ聞いているより、やった方が分かりやすいと思うのでどうぞ。」
皆『訳が分からない』という顔をしていた。
―全く理解できなかった。【天授魔法】というのも初めて聞いた。けれど、こっちの世界には本当に魔法があるんだな。
―セレスさんが言ったようにやってみよう...。
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雪のように真っ白の空間に雪とは真逆の暖かさがあった。
「これが僕のイメージ?」
―とても不思議な感じで、人それぞれでこのイメージも変わるのかな。
そう思いながら僕は目を開けた。
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「あら、もうよろしいんですか?」
セレスさんが聞いてくる。
「はい。多分大丈夫だと思います。」
そんな会話から一分もしないうちに皆も目を開き始めた。
「皆様もうよろしいようですね。ではこちらに。」
皆は自分がどんなイメージを感じたかを楽しそうに話していた。皆どこか気持ちが浮ついているだろう。修学旅行のような感覚で。
「到着しました。」
そこは、さっきとは打って変わり教会のような場所で真ん中にサッカーボール位の白色の水晶があった。だが、明らかに違うのは雰囲気だった。『ここから先は後戻りができない』と言われているようだった。
「どうぞ、水晶に触れてください。」
誰も動かなかった。それもそうだ、皆この異様な雰囲気に恐怖していた。そんな中一人勇気を出したのが...
「私、行きます!」
瓜原 卯希だ。彼女は、とても緊張した表情で水晶へと足を運んで行った。
そんな彼女の様子を皆が固唾を飲んで見守っていた。僕もそんな中の一人だった。
彼女が水晶に触れると、水晶の色が白色から青色へと変化していった。
そこから少し彼女は固まり僕たちの方を振り向いてこう告げた。
「私の天授魔法は水だって。」
その言葉を聞き何人かは前へと進み始めた。
皆がひとしきり水晶に触れ、自分の天授魔法が何かを理解した後に僕も水晶に触れようと前に進んだ。そして水晶に触れた時、
水晶が轟音を鳴らしながら弾け飛んだ。
皆がこっち向き、そしてセレスさんがこう告げる。
「異端者です。」
こうして僕の物語が始まった。
お読みいただきありがとうございました。これからも頑張ります!