膨らむみたい
頭から水を被った
ように滴っていた。
あごからの水滴が、
命を濡らしていた。
タマネギに肥料を
与えた帰り道、
止んでいたはずの
雨に降られた。
雨の合間なら、
土の中に肥料が
染み込み易い。
今だ、と慌てた。
少しくらいなら
大丈夫だろうと、
傘を持たずに行った。
雨にも都合があった。
哀れな思考回路。
このまま錆びて
しまいそうだった。
途中の神社によった。
社の軒先で、
神様の作った雨粒を
しばらく観ていた。
幸いタオルがあった。
あごからの水滴は
止まってくれた。
濡れた服は
どうしょうもない。
風邪ひきまっせ。
社から声が聞こえた。
えっと、振り返ると、
奥に神主さんがいた。
それから、庫裏に
入れてもらった。
ドライヤーと
バスタオルまで。
親切に触れて、
恐れ多かった。
この昨今、とくに
神様にも感じた。
神主さんは朗らかに、
よう降りますですと。
こちらからは、
タマネギの話をした。
よう降りますね。
春の雨を吸い込んで、
今から膨らみます。
命が膨らむみたいと。