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第2章 友人

「お前告白したのかよ!!んで失敗!!傑作じゃん!!」

その後。すっかり冷えてきた札幌の山奥の高校。この時期になるとカメムシが暖を取るためなのか教室に大量に発生する。ある年にはカーテンのように窓にびっしり敷き詰められたことがあるらしい。教師陣はカメムシが多い年は進学率が高いとか言って喜ぶが、生徒たちにとっては臭く気持ちが悪い存在でしかない。しかし坂野にとってカメムシなど他人の夢の話よりどうでも良い事だった。人生初でずっと一途に思い続けてきた春奈に告白し失敗した次の日の学校の昼休み。坂野は松野に、仲良くしていることだけ伝えていた春奈に告白したこと、そして呆気なく振られたことを伝えた。なんで朝のスクールバスで話さなかったかと言うと坂野はまだ心の整理がついていなかったからだ。授業を4時間受けているうちにだんだん落ち着いてきて、やっと話す気になったのである。

「いやまあw裕太にしてはww頑張ったと思うよwww」

「笑いすぎだろ!!」

話しているうちに笑い声が大きくなっていく松野に対して坂野はぴしゃりとつっこんだ。男子だけのむさっ苦しいクラスに2人のやり取りが響く。いつもは何かと騒々しいクラスなのに学食に行っている人数が多いのか妙に今日は静かであった。教室にいるクラスメイト全員の注目が集まってしまっている。クラスの人間全員に告白したことが知れ渡ってしまった。こっちだって振られたくて振られたわけじゃないのに……と内心思いつつも、確かに松野と立場が逆だったら同じことをしているだろう…と考え、それ以上責めることはしなかった。というより話したことで振られたことを本格的に実感してきた。

「あららいじけちゃった。」

「ふーんだ。俺は将来超有名大女優と結婚してひもになるからいいもーん。」

「ずいぶんわかりやすいいじけ方だね…」

少々大声で話しすぎたかと松野は少し反省しつつ、性格がよくアフターケアはしっかりする松野は

「まあ何事も挑戦だよ。頑張ったご褒美に今度飯奢るからさ」

と言った。クラスメイトたちもそれ以上は触れないようにしようにしたのか、はたまたもう興味を失ったのか、各々のグループで話し始めた。

「でもさぁ、なんか変なんだよなぁ……。」

松野にわざわざ話した理由はここにあった。別に「どちらが先に彼女できるか勝負」は告白が成功したかどうかなど報告しなくてもよいのだ。

「変って何?」

松野はきょとんとした顔をこちらに向けている。松野は坂野と背は同じくらいだが、体つきは一回り小さい。目はパチクリと大きく、女装させたら似合いそうな人ランキングNo.1である(坂野調べ)。

「告白して、失敗したらその人との関係どうなるかな?」

「どういうことさ?」

「昨日さ振られた後にめちゃくちゃLINE来てさ、デートの予定が3つ入ったんだよね」

「えぇ!?」

実は昨日振られてとぼとぼと家に帰り、もう全て忘れて寝てしまおうとしたら、春奈からいつも通りにLINEが来たのだ。告白したらいままで通りの関係には戻れないとどのネットのサイトにも書いてあったので、拍子抜けし、どういうことか坂野の中で整理がつかなくなっていた。それどころが、今までは実際に会うのは2ヶ月に1回程度だったのだが、急にデートに誘われるようになった。

「え?デートはいつ??」

心底驚いた様子の松野は坂野に聞いた。

「次の日曜日とその次の日曜日とそのまた来週。」

「毎週!!??」

松野はまた驚いた。

「な?なにがどうなってんのかわからんだろ?」

「ほんとにわからん……その春奈って娘ほんとに大丈夫なの?」

「さぁ……」

「裕太はどんな顔して春奈ちゃんに会うの?」

「さあ……」

「まったく……」

ここで煩わしい鐘が鳴り響き午後の授業の開始を告げた。

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