プロローグ 「今日も冒険者はダンジョンを走り回る」
プロローグ 「今日も冒険者はダンジョンを走り回る」
ダンジョン。それは数多の階層に分かれる無限の迷宮の事を指す。そんなダンジョンは凶悪なモンスター達の住処にもなっている。ダンジョンには富と名声を求め命知らずの冒険者達が毎日のように潜り続ける。
そんなダンジョンには毎日のように凶悪なモンスター達の雄叫びや冒険者達の悲鳴が響き渡る。そんなダンジョンの生還率は100%のうち半分の50%だ。
100%のうち生還できる確率は50%。これは見る限り決して少ない数字では無いがよく考えて欲しい。10人の冒険者達がダンジョンに潜り生還できる人数はたったの5人だけなのだ。
パーセントにすれば決して少ない数字では無いが数字に表せれば少ない数字になってしまう。だから俺はダンジョンから生還するために今日もダンジョンを走り回る。
「グモォォォォォォォォォォ!!」
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
大きな期待を胸に冒険者になった俺だったが。たった1週間の冒険者生活で俺の大きな期待は大きな不安に変わったてしまった。
この1週間で分かったことは1つある。それは俺がダンジョンを舐めていたことだ。
Lv1の俺でもゴブリンぐらいなら楽勝で勝てるだろうと思っていた。しかしその認識は間違っていた。ダンジョン最弱のモンスターゴブリンにやっとの思いで勝ったのが冒険者となって2日後の出来事だった。
そんな俺は偶然3階層に行ける階段を見つけ好奇心で3階層に降りて行ってしまった。その結果俺はLv1では絶対にかなわないモンスターウロタロスと遭遇し今の状況に居る。
「ヴゥムゥン!!」
「うおっ!!危なぁ!!」
ウロタロスの斧。何とか背後からの一撃を避けることが出来たがそれはただ俺が運がよかっただけだ。現に俺はウロタロスの斧で砕かれた岩に足をとられ転んでしまった。
「フゥフゥフゥー!!」
「・・・・・・・・・マジかよ」
転んだ俺を追い詰めるようにウロタロスは俺を壁際まで追い込んで行った。俺の顔にはウロタロスの鼻息が当たった。恐怖で言葉が出ない俺がやっと捻り出した言葉は「マジかよ」だった。
(俺・・・・・・こんな所で死ぬのか?こんな馬鹿な行動で死ぬのか?そんなのは絶対に嫌だ!!)
「ヴモォ?」
俺がウロタロスの拳が迫るのを見て恐怖で目をつぶった。俺の耳に聞こえてきたのは自分の顔が潰れた音でなくウロタロスの間抜けな声だった。
「ヴモォ・・・・・・ヴモォォォォォォォ!!」
「えっ?」
目を開けるとウロタロスの腹部に一線が走った。線はそのまま腹部を切り裂きウロタロスは地面に倒れ込んだ。
「君、大丈夫だった?」
「えっ・・・はい、大丈夫で・・す」
俺に話しかけてきた少女に俺は目を奪われた。少女の容姿は女神と間違うほどの美しい容姿をし、腰まで届く銀の髪はとても綺麗なものだった。青色の軽装に包まれた細い体。そんな上から銀色の鎧を身につけていた。そして手には銀のサーベルが握られていた。
俺は少女の事を知っていた。少女の名前はカレン・リーラ。「ランド」ギルドに所属するLv5の冒険者だ。種族は俺と同じヒューマンで異名は闘う女神だ。
「その、ごめんなさい、ウロタロスを逃がしたの私達ランドギルドのせいなの・・・・・・本当に怪我はなかった?」
「はい・・・この通り一切怪我はしていません!!」
カレンさんは申し訳なさそうな表情をし俺に謝罪した。俺はカレンを元気づけるために立ち上がりぴょんぴょんと跳ね怪我をしていないことをアピールした。
「それじゃ、俺はこれで行くんで、引き続き探索を頑張ってください!!」
「えっ・・・ちょっと・・・・・・」
俺はカレンさんの言葉を背中に受けながらそのままダンジョンの1階層に続く階段に向かって行った。