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柴田とサッコ  作者: 名雲屋良内
7/27

ミキ


⑦ミキ


 サッコの足取りは軽く、エントランスの階段を下りて、歩道に出た。

 地下鉄駅から、女が歩いて来た。女は顔を上げ、サッコと目があった。女の顔を見たサッコは、フランス語で話しかけた。

「今日は楽しい事に、出会わなかったのかい」

「ええ、残念ながら」

 女から流暢なフランス語が返ってきた。

 そのまま、通り過ぎるつもりだったサッコは、足を止めて振り返った。

「それでは、明日が来る前に食事でも」

 日本語に戻った。

 女が微笑んだ。

 フランス料理店に入った。ワインを頼む。

「俺はサッコ。これは本当。あなたは?」

「じゃ、わたしはミキ。これは偽名」

「オーケー。ミキ」

「今日は良い事があったのね。あなたはステップを踏んでいたわ」

「そう、一つだけだったのが三つに増えた。幼なじみに会えて久しぶりにフランス料理を口にできる。そして、目の前に綺麗な女性がいる」

 ミキが笑った。

 サッコは料理が出てくると、ミキを気にせずに食べ始めた。夜はチーズを二切れしか口にしていない。

「幼なじみはどんな方」

 ミキの薄い化粧は、ワインの酔いを隠そうとしなかった。

「今は故国のエリート将校。祖母さんのエスコートで日本に来た。観光でね」

 サッコはミキを精一杯笑わせた。ジョークが通じるのは有り難い。それに応えて、ミキは笑い続けた。

「そろそろ、今日が終わる。どう、楽しかった」

「ええ」

「じゃ、カボチャの馬車に乗って帰るんだ」

「来週も会ってみるかい」

 ミキは頷いた。

「じゃ、来週の土曜の夜」

 ミキはサッコが地下鉄の駅にのまれて行くのを見ていた。


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