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柴田とサッコ  作者: 名雲屋良内
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ゴールデンウイーク


⑤ゴールデンウイーク


 二人は、あれこれと筋書きを考えてみたが、エンディングには辿り着けずにいた。次第に熱は冷めて二人は、二十代を終えた。

 春、ゴールデンウイークになった。

 土方は出づらの日給だから、休みが多いのも困りものだ。連休の谷間は、現場も休みになり倉庫の片付けや道具の手入れで一日、二日の出づらを稼いだ。

 とにかく長い休みは、収入減を確実にする。宿舎の住人は静かに過ごしていた。

 サッコは柴田の部屋にいた。そして『小人閑居して不善をなす』とはよく言ったもので、二人とも大人ではない。

 エンディングが見つからず、思考停止していたゲームの続きを再び考え始めた。

 事件では、犯人がそれをマスコミに公表してメーカーと警察を嘲笑いながら、姿を消した。柴田の計画は、人知れずメーカーと裏取引をする事だった。

 柴田はキャリアが警察に通報しないか、通報してもメディアには載らないと踏んでいた。

 模倣犯が簡単に出る恐れがあるし、ブランドのイメージダウンへの影響は少なくない。

 基地局のシステムダウンは、落雷や地震など天災や、設備の改修での一時的なものがある。長時間、広範囲に渡れば、監督官庁に報告しなければならないし、ニュースにも載る。

 キャリアは、バックアップを構成してシステムダウンが短時間で済むよう、また補完できるようにしてきた。

 ただ、外部から意図されたシステムダウンは、想定していない。

 柴田は、それをしようとしていた。

 テーブルの上に料理が並んでいる。

「シバタ、外国からのコンタクトはどうだい。ちょうど、知り合いが来日しているんだ」

 競馬新聞から目を上げたサッコが言った。

「いい手段な気がする」

 柴田が答えた。

「軍にいる奴だが、頭は切れるし、何事にも動揺しない」

「何故、日本に?」

「単に祖母さん孝行さ。今頃は京都にいるはずだ」

「一人者かい」

「ああ、まだ家庭を持つ気はないそうだ」

「口は?」

「堅い」

「指令が国外からと見えるのはいい。サッコから聞いてみてくれるかい。それだと第二ステージが考えられる。ただ捕まらない事が大事だ。その男は、すぐに気配を消せるのかい?」

「そうだね。でも、奴は情報将校なんだ。いい案があるかも知れない」

「面白い。俺たち素人が口を出したら、失礼だな」

 二人は顔を見合わせて笑った。

 翌日、柴田はロードバイクに乗って河川敷を走っていた。整備された自転車道だった。脇を高価なロードレーサーが次々と追い抜いていった。

 空は晴れ渡り、昼には暑いほどになった。

 柴田はジーンズにスニーカー、頭にはキャップの軽装だった。おまけにナップサックにウイスキーの小瓶が入っていた。

 時々、川辺に下りて小ビンを取り出した。昼飯はコンビニのおにぎりで済ました。

 三十キロメートル近くを走り帰りに区の図書館で、本を五冊借りた。

 サッコは、今日にでも、知り合いに会うと言っていた。


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