表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
柴田とサッコ  作者: 名雲屋良内
20/27

国境


⑤国境


 翌日、国境に向かった。

 ギョーマンは装甲車を用意した。国境までは百キロちょっとしかない。

 サバンナの中を走る。 

 国境にはバラックが一棟建っていて、左右に鉄条網が延々と続いていた。

 道から外れ、鉄条網沿いに山手に向かって走った。小高い丘に上がり、車は止まった。

 柴田は車を下りると双眼鏡をゆっくり半周動かした。鉄塔が二基、視野に入った。

 塔頂に白い固まりが見えた。マイクロ無線のパラボラアンテナだ。塔間は約十キロメートル、携帯電話用のアンテナも乗っていた。地上には小屋が置かれフェンスが設置されていた。鉄塔も小屋も、日本とさほど変わりなかった。

 全て、日本から持って来たのだろう。

 笑いながら、双眼鏡をサッコに渡した。

「変わらないね」

 サッコも笑っていた。

 翌日から、虫眼鏡による探索が始まった。実際はパソコンの写真をぼやける寸前まで拡大して見る。

 柴田は、インターネットで取り込んだ日本の基地局写真を、ミキと金澤に見せた。

 グーグルアースを開き、鉄塔を拾い出す。日本と違い、送電鉄塔と兼用しているのも多かった。

 鉄塔は真四角に見えるはずだ。幾分、傾いて見える事もある。長い影があれば、見つけ易い。ほとんどが砂漠とサバンナを下地としていたから、日本より楽だった。

 電波塔は十キロメートル毎、送電鉄塔なら概ね、直線上に並ぶ。

 試しに国境から見えた鉄塔を探すとすぐに見つかった。それを地図にプロットしていく。慣れれば、大体の配置が推定出来るようになる。

 ソマリアの回線が整備されているのは、都市周辺と幹線道路周辺に限られていると考えていいが、国土自体は日本の二倍近くになる。

 その中の五つの主要都市周辺を調べてゆく。

 それをミキと金澤が調べるのだが、金澤にはパソコンの使い方から教えなければならない。まして、金澤は老眼である。

 これについては、柴田は金澤に期待していなかった。パソコンが使えるようになれば、それでいい。

 金澤は、ミキに教えてもらうのが嬉しくて、素直に聞いていた。

 柴田とサッコは首都モガディシュの衛星写真から、中継局の建物を探し出す。軍用の衛星写真の解像度はすこぶる良かった。

 フェンスで囲まれた、飾り気のない平屋を探した。翌日までには、候補を三ヶ所選び出し、経緯度とともにギョーマンに伝えた。

 回答は三日後、写真付きで送られて来た。全体と入口に掲げられた看板の写真の二枚だった。

 看板には、国営通信会社の名が書かれていた。三ヶ所、全てが該当したと聞いてギョーマンは喜んだ。

 形状が分かると、探索は早くなった。首都から都市と移るのだが、衛星写真は首都だけだ。あとはグーグルアースに頼るが解像度は落ちた。

 ミキも金澤の相手をしながら、探索は進んだ。

 金澤はパソコンに四苦八苦していたが何とか、ニュースを開けるようになり日本のニュースを読んでいた。

 時々、ミキを誘ってラウンジに下りて行き、ミキも笑いながら付き合っていた。

 三週間が経ち、ソマリアの大統領選が近づいてきた。

 ギョーマンが入って来て、みんなをラウンジに誘った。

 サッコに耳打ちをした。

 サッコが三人の所にやって来て言う。

「カナザワさん、国境で手伝って欲しい事あるそうなんだが」

 三人が一斉に顔を上げた。

 遅れて、ギョーマンも来た。

「アリクイが我が国に侵攻するのは避けられないようだ。そこで国境線を強化したい」

「戦車に乗れるのかい」

 ギョーマンが苦笑する。

「いや、あなた方が実戦に出る事はない。カナザワは建設機械を動かせると聞いた。国境沿いに塹壕を掘る。手伝って貰えるとありがたい。どうだろうか」

 金澤の目がかがやく。

「いいよ」

「安全なのか。それと言葉が」

 柴田が声を上げた。

「安全は問題ない。まだ国境付近に、軍は配備されていない。アリクイは電撃的にやるつもりだ。前に言ったように大統領選が終わってからだ、言葉は…。穴を掘る事だ。図と身振り手振りで通じると思う」

「おれは行くよ」

 金澤が即答する。

 サッコと柴田は頷いた。ミキは黙っていた。

「では行くと言う事で決定だ。あっちの責任者に伝える。申し訳ないが、バラックに寝泊まりして頂く事になる」

「通うよ」

 ギョーマンが声を上げた。

「ホテルからなら百二十キロメートル、大丈夫ですか」

「車はいくらでも大丈夫だ」

「分かりました。車と装備を用意します」

 ギョーマンは一時間程して、オフィスにやってきた。

 服と革手袋、半長靴とヘルメット、そして車のキーを金澤に渡した。

「車は、下にあります。明日は、九時頃に着くようにして下さい。もし、スピード違反で停止させられた時は、認識カードを見せて下さい。何事もなくなります。国境に着いたら、シモン大尉を尋ねて下さい。連絡はしてあります」

 金澤は「シモン、シモン大尉」と呟きながら、その名をメモした。

「悪いけど、英語で書いてけろ」

 メモ紙をミキに渡した。

 ミキはフランス語で、大尉の名を書いた。金澤は、外国語を全て英語だと思っている。

 金澤は張り切った。

 サッコたちが起きた時には、駐車場に金澤の車はなかった。

「金澤さんは、本当に行ったのね」

 レストランでミキが言った。

「元に戻っただけだよ。俺達はもっと朝早く、出かけていたんだ。心配はいらない」

 サッコが笑って言った。

「こちらも、早くしないとね」

 プロットは進み、経路とパターンが分かるようになった。

 破壊点を検討をした。警備を強化されぬ前に一時に破壊するから、数を絞った。首都を取り囲むように六ヶ所、他の都市も三、四ヶ所ずつ計二十ヶ所を破壊する。

 小屋はアルミパネルでできており、密閉性が高く窓はない。

 破壊は時限式のプラスチック爆薬を使う。小屋の内部で爆破させたいため写真を入手した。

 側壁に大きくフードが張り出していた。換気扇の換気孔だ。下向きの孔の先には防塵の不織布フィルターとステンレスの網があるはずだ。

 網は爪に嵌め込まれて、置かれているはずだから、横にずらせば下から押し上げられる。その先に換気扇が直にある。換気扇は手動と火災時の自動排煙のためにあるから、通常は止まっている。

 ここから、爆薬を入れられるだろう。

 ギョーマンは、これらの条件を内通者に送り、数ヶ所でのシミュレートを要請した。

 回答は五日後に来た。

 構造はその通りで、換気扇の羽根の間から投入は可能、単純に紐で中に下ろせる。

 撤収まで、五分以内で完了できる。

 二十ヶ所中、二ヶ所は近くに街灯、住居があり、確実性が望めない。

 柴田らが話し合い、ギョーマンが内通者に伝えたのは次のようだった。

 爆破は、アリクイが侵攻後の新月前後。二箇所は削除する。

 爆破時間は安全圏外に出るまでを考慮して設定、開始時間と爆破の設定時間を当日、知らせて欲しい。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ