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柴田とサッコ  作者: 名雲屋良内
18/27

オフィス


③オフィス


 迎えは九時に来た。四人はルノーに乗り、追従する。オフィスのあるビルまでは、十分ほどで着いた。

 広い敷地に五階建てのビルが三棟とバラックが並んで建っていた。ビルの前に車が止まり、エントランスにはギョーマンが待っていた。

 最上階に上がり、奥まった部屋に入った。中にはソファーと大きな机が置かれ、窓を背に軍服を着た大男がいた。

 男は立ち上がり、サッコたちに歩みよった。

「フーリエ将軍です」

 ギョーマンが紹介した。

 将軍は手を差し延べた。

 サッコとミキは、自ら挨拶をし、サッコが柴田と金澤を紹介した。

 サッコが名乗った時、将軍はギョーマンの顔を見た。ギョーマンが黙って頷いた。

「よく、遠い日本から来てくれました。ギョーマン少佐から話は聞いています。協力に感謝します。要望は少佐に言えば、全て対応してくれるでしょう。遠慮は無用です」

 それで退室したのだが、サッコの後ろ姿を将軍は見ていた。

 それから、三階のオペレーションルームに顔を出して挨拶を済ました。オフィスは隣の部屋になる。

 デスクが四つにテーブルとソファが置かれ、パーソナルコンピュータが用意されていた。うち、二台は日本語に対応していた。

 ギョーマンが入って来た。

「これが認識カードです。入れる部屋は限られている。隣のオペレーションルームにも入れません。それでは、ランチにしましょうか」

 一階から、バラック側に平屋の建屋が延びて、手前がラウンジ、次に食堂となっていた。

「ここは将校専用です。あなた方が入っても良いようになっている」

 扉を開け、中に入ると軍服を着た将校たちが並んでいた。

 将校のほとんどはフランス人だった。

 平服の四人に、一斉に目が向けられた。

「やあ、ギョーマン。どこからのゲストだい」

 すれ違った将校から声がかかる。

「失礼な、賓客だ」

 ギョーマンが、笑って答えると、相手は「これは、失礼」と言って挙手を返した。

「カードを吊す紐があるだろう。色は赤だ。特別なゲストの色だから、必ず首から下げていてくれ。単なる入館カードとは違う」

 四人はあらためて、紐を見直した。

「コーヒーは、いつでも大丈夫だ。隣のラウンジにも、オフィスに持って行っても構わない」

 ランチが終わかると、ラウンジに席を移した。窓から、迷彩柄の車輌が並んでいるのが見えた。

「戦車はないのかい」

 金澤が聞いた。サッコが笑いながらギョーマンに伝える。

「カナザワは戦車に乗りたがっている。日本では建設機械のオペレーターをしていた」

 ギョーマンは金澤に顔を向けた。

「もちろん、有ります。ここにも数輌が常にいます。いずれ、ご案内しましょう」

 金澤の顔がほころんだ。

「この国の、装備はどの程度なのですか」

 代わって柴田が聞いた。

「艦艇には、フリゲート艦も有ります。マンダブ海峡に出没するソマリアの海賊船はご存知かと思います。攻撃機は新しいものでは、一世代前のミラージュを保有していますよ。いずれもフランスからの供与、と言うより運用しているのはフランス人ですがね。いずれ、ソマリ人に変わるように思っていますが、今は教育から始めなければなりません」

 コーヒーカップを手にオフィスに戻った。

「シバタ、私は概要として通信網を破壊すると言ったが、残念ながら、それに関するソマリアの情報は持ち合わせていないのです」

 ギョーマンが済まなさそうに言った。

 サッコの通訳に柴田は黙って頷いた。

「鉄道なら見える。電気は発、変電所を叩けばいい。街から離れていれば、死人は少ない。通信は一本ずつ線を切って回るわけにはいかないし、ソマリアの国土は広い。あくまでも効率的な手段が知りたい」

 柴田が顔を上げた。

「通信も集約された設備を持っている。たいてい、どこかのビルに集約されている。セキュリティは厳戒のはずで、簡単には入れないし、確実と言うならばビルごと破壊することだ」

「それは分かる。次に効率的な方法だ」

「鉄道をみればいい。ターミナルとなる駅のほかに、支線の集まる乗換駅がある。これは市街地方に点在する。そしてセキュリティは俺とサッコが基地局に楽々と入れたのと同程度、日本の話ですがね」

 柴田が、通訳するサッコの顔を見ると笑っていた。

「それはどうして見つける?」

「系統を記した図面があれば簡単だが?」

「だが、入手は困難で、彼の国をうろつき回れば、銃口で背中を突かれる事になる」

「空撮は?」

「偵察機を飛ばせば、ソ連製のミサイルが飛んでくるし、それだけの理由で飛ばすわけにもいかない。首都だけは、フランスから入手した偵察衛星の写真がある」

「わかった。写真から目星をつけたら、現地で確認が取れるかい」

「それは可能だ。内通者に検分させる」

「ちょっと、プランを考えてみるよ。明日までに衛星写真を頼む。それと国境から見通しの効く場所に行ってみたい。関係設備が見られるかも知れない」

「用意する」

 その日は、それでホテルに戻った。

「シバタ、いけそうかい」

 リビングでサッコが柴田に聞いた。

「大丈夫だろ」

 サッコが微笑んだ。柴田が勝算のない返事はしない事を知っていた。


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