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柴田とサッコ  作者: 名雲屋良内
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晩餐会


⑮晩餐会


 翌日、ギョーマンから連絡が来た。

「晩餐会は土曜日の八時からだ。ブーケでも用意してくれ」

 明後日だった。現場で受けたサッコは柴田に、そして、ミキには「晩餐のお誘い」と題して時間と駅をメールで伝えた。サッコから出す初めての連絡だった。

 現場から帰ると二人は金澤を一番近いデパートに連れ出した。

 デパートに着くまでに、食事の招きを話した。

「俺、ナイフとか使えないから行かね」

 金澤はごねたが、もう員数に入っている。ナイフとフォークが使えなくても大丈夫となだめると大人しくなった。

 紳士服売場に連れて行き、靴からジャケットまで一揃いと、ついでに坊主頭を隠す鳥打ち帽を買った。終始、金澤は照れ隠しに怒っていたが、内心うれしいのを隠せない。

 土曜日は慌ただしかった。現場から帰ると急いで支度をした。金澤は服装に満更でもないようで、頻りに帽子の角度を気にしていた。

 大使館までは、途中で地下鉄に乗り換える。途中の開いていた花屋で買った花束を手にしていたから、電車内では乗客の耳目を集めた。

 落ち着かない金澤は二十年以上、電車に乗っていないと言った。路線も分からないから、サッコたちの後を必死に追いかけた。

 地下鉄の階段を地上に上がった。

 ミキは駅の上がり口を見ていた。

 花束を抱えたサッコが出て来て手を上げた。ミキの顔がほころび、手を上げ歩み寄ろうとして足を止めた。隣に一段低く男が立ち、また一段低く帽子を被った男が並んだ。

 ミキが近づくと、サッコが並びの二人を指した。

「同僚」とサッコが言うと、並びの二人はミキに頭を下げた。

「どこに行くの」

「晩餐会。さあ、行こう」

 大使館まで、かなり人目を引きながら二列縦隊は進んだ。大使館では、大使一家が迎えてくれた。

 ハイスクールを筆頭に二男一女と夫妻、そしてギョーマンが並んでいた。

 握手にハグとサッコ、ミキがあいさつをして行った。落ち着かないのは金澤で、柴田が「真似ればいい」と言うと、皆にしっかり両手で握手をしていた。

 サッコとミキがフランス語を話せるから、上手く話を盛り上げてくれた。子供たちも物怖じせず、いろいろと聞いていた。

 子供たちは、金澤が使う箸に興味津々だった。ミキが使い方を教える。

 晩餐会が終わり、大使たちがいなくなった部屋で柴田とギョーマンは、改めて握手を交わした。

 翌日、サッコは柴田の部屋にいた。

「どこかに事務所を借りなきゃね」

「当然、シバタも役員になる。シバタが社長で構わないぜ」

「それは無理だ。サッコは貿易の実務を知っている。手伝える事は全くない。まだ、ここで暮らすよ」

「いずれにしろ役員には、なって貰うよ」

 サッコは会社を辞める事にしたが、宿舎には住み続けて食事、部屋代を払う事にした。

 社長は、「部屋は空いているし、飯は一人二人増えても変わらん」と言って、下宿屋を始めようかと笑っていた。

 近くの小さなビルのフロアを借りる事にした。窓が大きく、近くの大きな公園が望めた。

 書士に会社登記を頼み、口座を開いた。資本金は二百万円の合同会社だ。

 ついでにドル建て口座も作った。

 そこに、二百万ドルが入金された。

「金の扱いは苦手だ。サッコが持ってくれていいよ」と、柴田は言った。

 サッコとギョーマンの故国、ソマリはちょうどアフリカの角の北側にある旧フランス領の小さな國だった。

 日本からは、幾分ながら食料品が送られていた。ギョーマンは会社をソマリの日本窓口としてくれた。

 それだけでソマリと取引を持つ日本の商社から、幾許かのマージンが入って来た。帳簿に数字が入り、会社らしく見える。


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