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柴田とサッコ  作者: 名雲屋良内
10/27

土曜日


⑩土曜日


 土曜日、サッコは現場から帰ると、急いで出かける支度をした。シャワーを浴び、髭を剃った。ジーンズにシャツ、ジャケットを羽織った。まだ、夜は冷える。

 八時までは、一時間とちょっと、ちょうどいい。電車に乗り途中で地下鉄に乗り換える。ホームに降りたのが、五分前だった。

 階段を上がり、地上に出た。

 ミキは正面のガードパイプに座っていた。

 ミキはサッコを見つけると微笑んだ。薄い化粧にジーンズとローヒール、丈の短いジャケットを羽織っていた。

「お似合いだ」

 二人はフランス料理店に足を向けた。二人に、すれ違う男女が、手を繋いだ男女が目を向ける。

「先週は俺の楽しかった事を話した。今週はミキの番だね」

 ミキは困った顔をしたが頷いた。

「楽しかった事。言うほどの事はなかったわ。でも、今日はどきどきしてた」

 ミキは微笑んだ。

「とにかく、楽しそうな顔をしている。いい事だ」

 ミキはサッコに聞いた。何をしているのか。どこから来たのか。

「僕は労務者だよ。日本では、一番下の階級らしい。工事現場で働いて仲間がいる宿舎に住んでいるんだ。今日も現場で働いて来た」

「どこから?」

 サッコはアフリカの東にある小さな国の名を言った。

「どうしてと」とミキに聞かれて「国を離れたかったから」と答えた。

 十時過ぎに、店を出た。近く散歩した。東京タワーが近くに見えた。

「さて、もうすぐ、今日も終わる。帰ろう」

「帰るのですか?」

「そう、いつも朝が早いから、もう眠たくなってくる」

 サッコは笑って見せた。

「連絡はできないの?」

「構わないよ。人には、めったに教えていないだけ」

 サッコはポケットから携帯電話を出すとミキに渡した。ミキはサッコの電話に登録をして返した。

「今度は?」

「貴女の心が沈んだ時だ。僕はミキを笑顔にさせよう。それだけだ。時間をメールで送れば良い。僕の休みは日曜日だけだから土曜の夜だと有り難いね」

 サッコはミキの肩に手を置いて、軽く頬にキスをすると駅に向かって歩きだした。


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